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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第三百三十五話 飼い主を救うために(一)

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 飼い主、飼い主っ、行かないでほしいのだっ。居なくならないでほしいのだっ。一人に、しないでほしいのだっ。


 暗闇の中、我輩は遠ざかる飼い主の後ろ姿を必死に追いかける。しかし、その姿はどんどん遠ざかるばかりで、焦燥が募っていく。


 飼い主っ、飼い主っ、飼い主っ!


 声なき声で叫び続けて、どうにか振り向いてもらおうとしたその時、別の声が響いてくる。


「……ロ、タロっ、おいっ、大丈夫かっ? タロっ」


 そうして、目を開けると、そこには心配そうな顔をしたバルディスが居た。いや、そこにはラーミアも、ディアムも、マギウスも居る。時刻は夕方頃だろうか。四人は全員、我輩を心配そうに見つめていた。


「にゃ……にゃあ……? (バルディス……我輩は……?)」

「タロは、丸一日眠っていたんだ」

「にゃ……にゃっ、にゃあっ(丸一日……か、飼い主っ、飼い主はっ)」


 ぼんやりとした意識が覚醒して、我輩、すぐに飼い主のことを思い出す。飼い主が、あの封印の地で魔力を吸われ続けているという事実を思い出す。


「俺達も急いで移動してるが、まだ竜の森にも辿り着いてない。タロ達みたいな速度で移動はできないんだ」


 そう言うバルディス達は、どうやら食事中だったらしく、携帯食を側に置いていた。


「にゃあっ、にゃあっ(飼い主のところにっ、早く、早く行かなくてはっ)」

「タロ、とりあえず、食事。このまま、力、出ない」


 そう言って、ディアムは我輩にミルクとささみを用意してくれるものの、我輩、食事どころではない。早く、飼い主のところに行かなければという思いばかりが先行する。


「落ち着け、タロ。ケントはそう簡単に死ぬような奴じゃないだろ。まずは、食事をして、万全の態勢を整えるんだ」

「にゃっ…………にゃー(しかしっ…………分かったのだ)」


 バルディスに反論しかけた我輩だったものの、背中を撫でられるうちに、バルディスの言っていることが正しいのだと分かってしまう。このまま行っても、飼い主を助けることはできない。

 バルディスがディアムにうなずけば、我輩の食事が目の前にコトリと置かれる。今はとにかく、食べなければならない。そして、どうやらバルディス達は馬で移動しているようだが、どうにかしてそれ以上の速度で飼い主の元に行ける方法を探さなければならない。
 食事をガツガツと食らいながら、我輩、焦る気持ちを必死に制御するのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


飼い主を助けに向かうタロ達。

ただ、竜の森まではさすがに日数がかかり過ぎるので、次回、タロの力で短縮したいと思います。

それでは、また!
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