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第四章 騒乱のカレッタ小王国
第三百三十一話 封印の地(四)
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闇属性の魔法が効いたと分かった我輩は、一瞬の間を置いて、次々に『闇槍』を唱える。
「にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ(『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』っ)」
それらを発射すれば、木々は次々にバキバキ音を立てて折れていく。
これなら、いけるのだっ!
とりあえず、三本の木は戦闘不能になったと喜んだ我輩は、この調子で全ての木を倒してしまおうとした……のだが。
「ぐ、ぅ」
「にゃっ!? (飼い主っ!?)」
それまで何の反応もなく、泉の中心で魔力を注いでいた飼い主が呻き、我輩、思わず振り向く。すると、そこには、あまりの輝きに飼い主の姿も見えない状態になった泉があった。
《タロ様っ、この木々は、犬斗様の魔力で活動しておりますっ!》
「にゃっ!? (にゃんとっ!?)」
そんなっ、それでは、飼い主を敵に回しているようなものではないかっ!
輝きが増した泉の中心を目撃したことによって、嫌な予感を抱いた我輩が木々に目を向けると……どうやら、木々もその輝きを受けて変形を始めたらしい。ミシミシと音を立てながら、次々に近くの木々同士が合体をしていく。
「にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ(『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』ぅっ)」
大慌てで『闇槍』を大量生成して木々に向かわせるものの、今度は全く歯が立たない。
「ふにゃあぁぁっ(勝てる気がしないのだぁあっ)」
やっと、糸口を見つけたと思ったのに、何やら強化された木々には全て通じない状態になってしまう。
「にゃあっ、にゃあっ(『無槍』っ、『空槍』っ)」
ダメ元で残りの属性魔法を試すものの、それはやはり弾かれてしまう。そして、合体が完了したらしい先ほどの三倍ほどもある大きさの木々は、我輩への攻撃を開始した。
「ふにゃあぁぁっ(攻撃も速くなったのだぁぁあっ)」
開始された縦横無尽の攻撃に、我輩、徐々に吹き飛ばされることが多くなる。大したものではないものの、ダメージも蓄積していってしまう。この世界に来てから、痛みを感じることなどなかった我輩にダメージを与える木々。恐らくは、我輩のように強化されていない者が当たれば、一撃で死ぬようなものであるはずだ。
《撤退を提案します! タロ様、このままでは殺されてしまいますっ!》
「にゃっ(飼い主が居るのにっ、撤退などっ)」
そんなこと、できるわけがない。しかし、木々の猛攻は激しく、我輩、再び派手に飛ばされてしまう。泉には何やら結界が張ってあるらしく、我輩がぶつかってもビクともしないが、その分、木々達は容赦のない攻撃を加えていく。
《犬斗様は、恐らく魔力を引き出すために攻撃をされることはありませんっ。お願いします、タロ様、撤退の決断を!》
「に、にゃあ……(くぅっ、飼い主……)」
分かっている。このまま粘っても、何も好転しないということなど。
《バルディス様達を頼りましょうっ! そうすれば、この封印の地について、何か分かるかもしれませんっ》
「……にゃー(……分かったのだ)」
このまま、飼い主を置いていって、飼い主が無事でいられる保証はない。しかし、今の我輩に何もできないのも事実だった。
フラフラとしながら、何度も弾き飛ばされながら、必死に元来た道である、木の割れ目を目指した我輩は、どうにか、そこに辿り着くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
案外、タロが苦戦しました。
さぁ、置いていかれた飼い主はどうなるっ?
次回は、バルディスかディアム視点になりそうです。
それでは、また!
「にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ(『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』っ)」
それらを発射すれば、木々は次々にバキバキ音を立てて折れていく。
これなら、いけるのだっ!
とりあえず、三本の木は戦闘不能になったと喜んだ我輩は、この調子で全ての木を倒してしまおうとした……のだが。
「ぐ、ぅ」
「にゃっ!? (飼い主っ!?)」
それまで何の反応もなく、泉の中心で魔力を注いでいた飼い主が呻き、我輩、思わず振り向く。すると、そこには、あまりの輝きに飼い主の姿も見えない状態になった泉があった。
《タロ様っ、この木々は、犬斗様の魔力で活動しておりますっ!》
「にゃっ!? (にゃんとっ!?)」
そんなっ、それでは、飼い主を敵に回しているようなものではないかっ!
輝きが増した泉の中心を目撃したことによって、嫌な予感を抱いた我輩が木々に目を向けると……どうやら、木々もその輝きを受けて変形を始めたらしい。ミシミシと音を立てながら、次々に近くの木々同士が合体をしていく。
「にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ、にゃあっ(『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』、『闇槍』ぅっ)」
大慌てで『闇槍』を大量生成して木々に向かわせるものの、今度は全く歯が立たない。
「ふにゃあぁぁっ(勝てる気がしないのだぁあっ)」
やっと、糸口を見つけたと思ったのに、何やら強化された木々には全て通じない状態になってしまう。
「にゃあっ、にゃあっ(『無槍』っ、『空槍』っ)」
ダメ元で残りの属性魔法を試すものの、それはやはり弾かれてしまう。そして、合体が完了したらしい先ほどの三倍ほどもある大きさの木々は、我輩への攻撃を開始した。
「ふにゃあぁぁっ(攻撃も速くなったのだぁぁあっ)」
開始された縦横無尽の攻撃に、我輩、徐々に吹き飛ばされることが多くなる。大したものではないものの、ダメージも蓄積していってしまう。この世界に来てから、痛みを感じることなどなかった我輩にダメージを与える木々。恐らくは、我輩のように強化されていない者が当たれば、一撃で死ぬようなものであるはずだ。
《撤退を提案します! タロ様、このままでは殺されてしまいますっ!》
「にゃっ(飼い主が居るのにっ、撤退などっ)」
そんなこと、できるわけがない。しかし、木々の猛攻は激しく、我輩、再び派手に飛ばされてしまう。泉には何やら結界が張ってあるらしく、我輩がぶつかってもビクともしないが、その分、木々達は容赦のない攻撃を加えていく。
《犬斗様は、恐らく魔力を引き出すために攻撃をされることはありませんっ。お願いします、タロ様、撤退の決断を!》
「に、にゃあ……(くぅっ、飼い主……)」
分かっている。このまま粘っても、何も好転しないということなど。
《バルディス様達を頼りましょうっ! そうすれば、この封印の地について、何か分かるかもしれませんっ》
「……にゃー(……分かったのだ)」
このまま、飼い主を置いていって、飼い主が無事でいられる保証はない。しかし、今の我輩に何もできないのも事実だった。
フラフラとしながら、何度も弾き飛ばされながら、必死に元来た道である、木の割れ目を目指した我輩は、どうにか、そこに辿り着くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
案外、タロが苦戦しました。
さぁ、置いていかれた飼い主はどうなるっ?
次回は、バルディスかディアム視点になりそうです。
それでは、また!
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