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第四章 騒乱のカレッタ小王国

第二百六十六話 竜の森(二)

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「もう、嫌だ」


 そう言って泣き崩れるマギウスに、我輩、とりあえず癒されれば良いだろうと思ってスリスリと体を擦り付ける。しかし、マギウスのダメージは思った以上に深刻らしく、今はうんともすんとも言わない。


「にゃあ? (大丈夫であろうか?)」

「大丈夫だろう。ただ、精神的に疲れてるだけだろうからな」


 今居る場所は、まだ竜の森の中ではあるものの、結界を大きく張って安全にした場所だった。そこで、一旦休憩を取っているのだ。


「だらしないですね。ここの竜は、普通の竜とは違って、随分倒しやすい種類ですのに」

「ラーミア、マギウスは、無理。ここの暴竜、戦闘能力ない者、きつい」


 ラーミアの情け容赦ない言葉に、ディアムがマギウスを庇う。
 バルディスによれば、この竜の森に居る竜は暴竜と呼ばれる、高度な思考能力を持たない竜達だそうだ。そして、この暴竜達は、遥か昔の魔王がこの地に封じた結果、ここでしか生息しない状態になっているらしい。


「怖い。竜、怖い。ラーミアも、怖い」

「あらあら? 何か言いましたか?」

「ひっ!? ななななな、な、何でも、ないですっ。はいっ」


 ここを越えるために要するであろう日数は、少なくとも五日。にもかかわらず、今からこんな調子では、マギウスは大変そうだ。


「にゃーにゃっ(我輩のプリティーなボディで癒されるのだっ)」


 震えるマギウスのため、我輩、懸命にスリスリしながら鳴き声を上げる。


「タロ? そんな奴に構う必要はありませんわよ?」


 しかし、ニッコリと笑うラーミアにそう言われて、我輩ゾクッとする。ラーミアの目が、なぜか笑っていなかったのだ。


「に、にゃあ? (ラ、ラーミアは、マギウスに厳し過ぎではないか?)」

「言われてみれば……確かに」


 あまりの恐怖にプルプルと震えながらバルディスへそっと尋ねると、バルディス自身も同意見のようだった。

 と、そうやってこそこそ話していると、ふいに我輩の背後に影ができる。


「何、話してる?」

「ふしゃっ!? に、にゃあ(ほぅあっ!? な、何だ、ディアムであったか)」

「あぁ、いや、ラーミアが随分、マギウスに厳しいなと話してたんだ」


 我輩、いきなり声をかけられてとっても驚いた。バルディスはそんな我輩の姿を見て、軽く苦笑しながらディアムの問いかけに答える。


「……それ、ラーミア、操られたせい。根に持ってる」

「……なるほど」


 そして、思いがけずもたらされた、マギウスに厳しいその理由に、我輩達、庇うこともできないと瞬時に判断を下して、ただただラーミアの機嫌が良くなることを祈るのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


すみません。

ちょっと時間配分を間違えて、更新が遅くなりました。

そして、多分明日は更新できませんので、続きは明後日になります。

それでは、また!
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