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第三章 セイクリア教国の歪み

第二百五十九話 報酬(二)

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 褒美を受け取った俺は、あとは、タロの欠片の回収だけかと考えてグラハムへと視線を移す。すると、何か言いたいことでもあるのか、グラハムは教皇に発言の許可をもらっていた。


 何だろうな?


 そうのんびり構えていた数秒前の俺を、今は殴りたい気分だ。


「ラーミア殿、私はあなたの力強さに惚れました。どうか、結婚を前提に私とお付き合い願えませんかっ?」


 ほんのり頬を赤くして言い切ったグラハムを、俺は言葉もなく見つめる。


 コイツ、今、何て言った?


 ラーミアに、あろうことか、あの、鮮血のラーミアに、プロポーズをしていなかったか?

 あまりにもあり得ない事態に、俺は一言も発することができない。ディアムの方をチラリと見れば、どうやらディアムは放心状態らしい。いつも通りの顔をしているものの、さすがに長い付き合いだからよく分かる。


「あら、力強さに惚れた、だなんて、女の口説き方がなっていませんわね」

「あぁ、申し訳ない。しかし、私はあなたの拳に心を射抜かれたのです。どうか、どうか、お付き合いいただけませんか?」


 ……不味い、誠実な聖騎士長だと思っていたコイツが、今はドMの変態にしか見えなくなってきた。


「お断りいたしますわ」

「っ、なぜですか? 私はセイクリア教国の聖騎士長です、稼ぎも良いし、自分で言うのも何だが、それなりに顔も整っているはずですっ」

「理由は簡単です。私には、長年の想い人がいますので、あなたはお呼びじゃありませんわ」

「なっ!?」


 ……ラーミアに想い人? …………そいつは、ご愁傷さまだな。


 誰か分からない想い人とやらに、俺は静かに冥福を祈ってやる。きっと、ラーミアは何年かかろうとも諦めたりしない。その想い人は、いずれ、ラーミアの手中に否が応でも落ちることとなる。


「そん、な……」


 すっかりうなだれるグラハムに、タロは無言で近づき、テシテシと足を叩いている。


 それは、慰めてやってるのか?


 タロは忠実に俺の言うことを守って沈黙を貫いているため、推測するしかない。と、そうやって見守っていると、グラハムを淡い光が包み込み、その背中からガラスの欠片のようなものが飛び出し、タロに吸い込まれていく。


 欠片の回収も終わったか。


 今までに何度か見てきた欠片の回収作業。それが終わったことを確認した俺は、そろそろ引き上げることにする。


「それでは、我々はこれにて失礼させていただきます」

「あ、あぁ……褒美に関しては、そなたらの家に届けさせよう」

「いえ、それは不要です。タロ、『収納』してくれるか?」

「にゃ(分かったのだ)」


 タロに『収納』魔法の行使を求めれば、目の前にあった金銀財宝は全て消え去る。


「なんとっ」

「それでは、今度こそ失礼します」


 そうして、俺達は教皇庁をあとにするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


よしっ、後はこの国から撤退するのみ!

その後のプロットはまだ作っていませんので、完全に詰まったらまた、更新をしばらく休ませてもらいますね。

それでは、また!
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