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第八章 告白まで

第百十九話 告白

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 ライナードに振り回されてばかりの本日。俺は、どうにかライナードの腕から解放されて、ジュースを飲み干し、街へと繰り出していた。手袋もマフラーもしっかりと装備して、準備万端……だったのだが……やはり、ライナードはどこか甘い。


「カイト、次はどこに行きたい?」

「え、えっと……雑貨店、とか?」

「む。分かった。……カイト、抱き上げてみても良いか?」

「ダ、ダメッ」

「……そうか……」


 ライナードは先程から、なぜか俺に触れたがる。手を繋ぐのはもちろんのこと、ことあるごとに抱き締めてくるし、頭も撫でてくる。街を歩けば、少しはマシになるなんて、あり得なかったのだと思い知ることになる。


「ライナード……あの……」

「む? どうした? カイト?」


 さすがに様子がおかしい。俺は、それを指摘しようとライナードを見上げるのだが、甘く甘く蕩けるような笑みを直視してしまうはめになり……心臓がドクリと跳ねる。全身の血流が速くなり、顔がどんどん赤くなり、頭がボゥッとする。だから……。


「……好き……」


 その言葉を告げたのは、無自覚だった。


「っ、カイト、今っ」

「……はっ、ち、違う! そうじゃ、なくて、だな」


 思わず本音がポロリと漏れた俺は、目を大きく見開くライナードを前に必死に誤魔化そうとして……しゅんと悲しそうな顔になったライナードに、言葉を詰まらせる。


「あ、その……」

(もう、良いんじゃないか?)


 酷く残念そうな様子のライナードを見ていると、そんな考えが頭の中に浮かぶ。


「えっと……」

(もう、否定なんて、できないだろう?)


 そう、否定はできない。俺は、もう、どうしようもなくライナードに惹かれている。


「ライ、ナード……」

(迷う意味なんてあるのか?)


 頼もしくて、優しくて、暖かいライナード。きっと、好きだと伝えたら、そういう関係になる。しかし、それは本当に恐れることなのか、今はよく分からない。


「お、れは……」

(いつまで、ライナードを待たせるつもりだ?)


 そう、このまま何も言わなければ、きっといつまでもライナードを待たせてしまう。そして、その間にまたライナードが言い寄られたりでもすれば……。


(ライナードを、とられたくない)


 幼稚な独占欲。しかし、胸に重くのしかかるそれは、決して無視できない。
 ライナードに嫌われたくない。ライナードに愛想を尽かされたくない。でも、ライナードが他の女性と一緒に居るところなんて見たくない。


「ライナード、好き」


 グチャグチャな心が、一つの答えを導き出して、それを告げさせる。


「カイ、ト……」

「……は、ははっ……俺、ライナードのこと、いつの間にか好きになってたみたいだ」


 呆然とするライナードに、俺は、少しだけ軽くなった口を動かして、冗談めかして告げてみる。


(どうしよう。想いが、溢れて止まらない……)


 自分の意思で、言葉に出した瞬間、その想いはどんどん溢れてくる。ライナードが好き。ライナードを愛している。そんな甘く、激しく、強い感情が、全身を駆け抜ける。


「……カイト。俺も、カイトを愛している」

「う、ん……」

(あぁ……想いを返してもらえるって、こんなに幸せなんだ……)


 甘く甘く、何もかもが蕩けてしまいそうな感覚に、俺はしばし酔いしれる。
 返事をした途端、俺はライナードにギュウッと抱き締められる。そして……フワリと、唇に感じた温もりに、俺はハッと我に返る。


(い、い、今っ、キ、キ、キ、キ……キス!?)


 口づけを、いわゆる、ファーストキスを、今、現在進行形でしているという事実に、俺は大混乱に陥る。


「カイト……」


 長い、長い、キス。いや、恐らくは数秒くらいのものだったのだろうが、体感時間はその何倍も長く感じられたキスが終わると、ライナードは壮絶な色気を纏って妖艷に微笑む。


(あっ、これ、ダメなやつ)


 その直後、俺はあまりの色気に当てられて、意識を失うのだった。
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