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第七章 過去との決別
第百六話 混乱と怒り
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「えっ? 今、何て?」
「『明日のデートには仕事が入ったため、行けない』とのことです」
いつもなら、『デート』の一言に困惑するところだったが、今はそれどころではない。
(明日の、雪祭り……一緒に行くって約束したのに……)
それもこれも、もしかしたら俺がライナードを避けたせいかもしれない。
魅了事件の時は国家の大問題だったらしいから仕方なかったと言えるが、今、また立て続けにそんな大問題が起こるとは思えない。仕事、というのは本当かもしれないが、それが、片翼休暇中のライナードを駆り出さなければならないほどのものかどうかというのは、いささか疑問だ。
「そ、う……」
ライナードを避けたせいで、ライナードから避けられた。自業自得だというのに、そのショックは思った以上に大きい。呆然としてしまう俺に、ノーラは心配そうに声をかける。
「『仕事が終われば、埋め合わせは必ずする』とのことでしたので、今回は残念でしたが、きっと次は楽しいデートになりましょう」
そう言われても、今の俺には響かない。
「分かった」
それでも、一言返した俺は、そのまま一人にしてもらう。今は、ニナはお昼寝中だから、ニナに構って気を紛らわせることはできない。
(どう、しよう……)
ライナードに避けられたという事実に、俺はもう、泣きそうだ。正直、ライナードにちょっと避けられた程度で、自分の心がここまで揺れるとは予想もしていなかった。
ポスッと椅子に座り込んだ俺は、そのままボーッと虚空を眺める。
(俺が、避けたから……)
ただ、それにはしっかりとした理由がある。今は、ライナードと目を合わせるのも恥ずかしくて仕方ないのだ。避けたくなるのも当然というものだった。
(そもそも、ライナードがあんなことをしなければ)
ライナードを避ける発端となったおでこへのキスを思い出して、俺は、段々と自分の感情が別の方向に動いていくのを感じる。
(そう、だよ。そもそもは、ライナードが悪いんじゃないか)
ライナードがあんなことをしなければ、俺がライナードを避けることはなかったし、ライナードから避けられることもなかった。そう考えれば、何だか腹が立ってきた。
「明日は、雪祭り……」
今日の天気は、窓の外を見る限り、雪だ。激しく降っている、というわけではないものの、しんしんと降り続いているところを見るに、明日にはきっと積もっていることだろう。
「別に、ライナードとじゃなくても、行っても良いよな?」
それは、完全なるライナードへの当てつけ。もちろん、一人で行くつもりはないが、ノーラは厳しそうで無理でも、リュシリー辺りに着いてきてもらえば安全だろう。
「よしっ、明日は絶対に、楽しんでやるんだ!」
ニナを連れていけないのは残念だが、お土産はたっぷり買ってこよう。昨日は万年筆くらいにしかお金を使わなかったため、まだまだ金貨は余っている。
そうと決まれば、リュシリーとの話し合いが必要だ。
「ノーラ、リュシリーはそろそろ交代で来るのか?」
「はい、もうそろそろ、交代の時間です。何かありましたか?」
「いや、何でもない。ちょっと気になっただけだから」
リュシリーがもうそろそろここに来ることを確認した俺は、リュシリーを説得するために気合いを入れるのだった。
「『明日のデートには仕事が入ったため、行けない』とのことです」
いつもなら、『デート』の一言に困惑するところだったが、今はそれどころではない。
(明日の、雪祭り……一緒に行くって約束したのに……)
それもこれも、もしかしたら俺がライナードを避けたせいかもしれない。
魅了事件の時は国家の大問題だったらしいから仕方なかったと言えるが、今、また立て続けにそんな大問題が起こるとは思えない。仕事、というのは本当かもしれないが、それが、片翼休暇中のライナードを駆り出さなければならないほどのものかどうかというのは、いささか疑問だ。
「そ、う……」
ライナードを避けたせいで、ライナードから避けられた。自業自得だというのに、そのショックは思った以上に大きい。呆然としてしまう俺に、ノーラは心配そうに声をかける。
「『仕事が終われば、埋め合わせは必ずする』とのことでしたので、今回は残念でしたが、きっと次は楽しいデートになりましょう」
そう言われても、今の俺には響かない。
「分かった」
それでも、一言返した俺は、そのまま一人にしてもらう。今は、ニナはお昼寝中だから、ニナに構って気を紛らわせることはできない。
(どう、しよう……)
ライナードに避けられたという事実に、俺はもう、泣きそうだ。正直、ライナードにちょっと避けられた程度で、自分の心がここまで揺れるとは予想もしていなかった。
ポスッと椅子に座り込んだ俺は、そのままボーッと虚空を眺める。
(俺が、避けたから……)
ただ、それにはしっかりとした理由がある。今は、ライナードと目を合わせるのも恥ずかしくて仕方ないのだ。避けたくなるのも当然というものだった。
(そもそも、ライナードがあんなことをしなければ)
ライナードを避ける発端となったおでこへのキスを思い出して、俺は、段々と自分の感情が別の方向に動いていくのを感じる。
(そう、だよ。そもそもは、ライナードが悪いんじゃないか)
ライナードがあんなことをしなければ、俺がライナードを避けることはなかったし、ライナードから避けられることもなかった。そう考えれば、何だか腹が立ってきた。
「明日は、雪祭り……」
今日の天気は、窓の外を見る限り、雪だ。激しく降っている、というわけではないものの、しんしんと降り続いているところを見るに、明日にはきっと積もっていることだろう。
「別に、ライナードとじゃなくても、行っても良いよな?」
それは、完全なるライナードへの当てつけ。もちろん、一人で行くつもりはないが、ノーラは厳しそうで無理でも、リュシリー辺りに着いてきてもらえば安全だろう。
「よしっ、明日は絶対に、楽しんでやるんだ!」
ニナを連れていけないのは残念だが、お土産はたっぷり買ってこよう。昨日は万年筆くらいにしかお金を使わなかったため、まだまだ金貨は余っている。
そうと決まれば、リュシリーとの話し合いが必要だ。
「ノーラ、リュシリーはそろそろ交代で来るのか?」
「はい、もうそろそろ、交代の時間です。何かありましたか?」
「いや、何でもない。ちょっと気になっただけだから」
リュシリーがもうそろそろここに来ることを確認した俺は、リュシリーを説得するために気合いを入れるのだった。
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