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第六章 穏やかな日々
第百一話 街をぶらり(ライナード視点)
しおりを挟む 最初のデートに観劇を選んだのは、どうやら正解だったらしい。
(興奮しているカイト、可愛いな……)
劇が前後編のものだということは、あらかじめ知ってはいたが、そのおかげで、カイトからデートのお誘いをもらえたのは予想外だった。元々、気に入ってもらえたら、次も約束しようと思っていたものの、俺が言い出す前にカイトから約束してもらえたのは、とても、とても嬉しかった。
(カイトは、劇が好き、なんだろうな……いずれ、あちらの席に座れるようになりたい、な)
カイトに説明したカップル席。あれは、魔族のためにあるような席で別種族のカップルは、滅多に使うことがないらしい。劇場の二分一を占めるピンクの席に、いずれ、カイトと座りたいと考えながら、俺はカイトと喫茶店で、軽く食事も済ませてしまう。
「次は、どこに行くんだ?」
「む、次は、街を歩いて、色々な店を見てみようと思っている。興味のある場所があれば、今日でも、次回以降でも、寄れるだろう?」
「次回……そ、そうだな。うん」
明後日が雪祭りのデート。来週がまた観劇デート。その間くらいに、俺の鍛練を見せる機会があれば、それもデートとして数えられるだろうか?
幸せな数を数えながら、ライトアップされた街をカイトと手を繋いで歩く。手を繋ぐ瞬間の、カイトの戸惑ったような顔は……嫌われているのではないと願いたい。
「あっ、じゃあ、皆にお土産を買いたいから、ちょっとしたお菓子や小物が売られてるようなお店ってないかな?」
「む、ならば、チョコ通りを目指そう」
「チョコ、通り? 何か、甘そうな名前だけど……」
「あそこは、チョコ専門店が多く建ち並ぶ通りだ。もちろん、それ以外の菓子も売っているし、雑貨店も多い。ヴァイラン魔国はチョコや飴が名物だからな。寄ってみるのも悪くはないだろう」
「おぉっ、それは良いなっ! じゃあ、そこを目指そう!」
「む」
案外甘味が好きなカイトは、俺の言葉に目を輝かせて歩き出す。先程よりも進むスピードが速くなったのは、きっと、楽しみだからだろう。
「こっちの通りは、服飾関係の店が多い。リドルの店も、こっちにある」
「へぇ、リド姉の店が……」
「あちらは、鍛冶の専門店が多い。剣や槍、盾なんていう武具はもちろん、鍋やフライパンのような調理器具なんかも多く売られている」
「剣、槍……見てみたいかも。いや、でも、今日はチョコ通りに……むむむっ」
「なら、次回案内しよう。雪祭りの会場は、この通りに近いところにあるからな」
「っ、うんっ!」
カイトに街の通りを案内していると、どんどんカイトの興味がどこに向くのかが分かってくる。食事関係は軒並み興味を示すし、武器などは、憧れているような節がある。魔法具なども、珍しいもののようで、色々とどんなものがあるのかを聞かれた。
しかし、そんな中、無粋な視線がずっとこちらを着いてきていることにも気づいていた。
(劇場を出た後から、か……何が目的だ?)
今回は、俺が一緒ということで、護衛は連れていない。だから、視線の主をどうにかするには、俺が動くしかないのだが、今はまだ、動いても逃げられる可能性の方が高い。
(様子見、か)
その結果、俺は、様子見を選択する。
「ライナード、ライナードはどんなことに興味があるんだ?」
「む? 俺か? 俺は……新しい調理器具とか、裁縫用の布や糸とか、本とか、だな」
カイトに手を引かれて我に返った俺は、カイトに求められるがままに話す。きっと、出会ったばかりの頃であれば、隠したいこともあったのだが、今はもう、色々バレてしまっている。そう、色々……。
(……カイトは、あのぬいぐるみ部屋とか、恋愛小説の山を見て、引いたりしなかっただろうか?)
今更ながらに心配になっていると、カイトはウンウンとうなずいて、笑顔を向けてくる。
「俺、ライナードの料理は好きだし、裁縫できるのもすごいと思うぞ! あと、恋愛小説って結構面白いのも多いよなっ」
そう言うカイトの目に、嘘は見えず、俺は知らず知らず詰めていた息を吐く。
(……あぁ、カイトが、愛しくて仕方ない)
カイトの言葉に、愛しさがまた、一段と募る。カイトは意識していないのだろうが、その言葉は、俺にとっての救いだった。
「あっ、本屋がある。ライナード、寄ってみるか?」
「む、しかし、カイトはあまり興味がないのでは……?」
「うーん、この世界にどんな本があるのか、まだあまり知らないから見てみたいんだ。だから、な?」
「分かった。ぜひとも行こう」
同じ想いではないかもしれない。しかし、想いを返してもらえるのは嬉しくて、幸せだった。
俺達は、本屋で様々な本を物色し、カイトは魔物図鑑、俺は、新しい恋愛小説を一冊ずつ買って、店を出るのだった。
(興奮しているカイト、可愛いな……)
劇が前後編のものだということは、あらかじめ知ってはいたが、そのおかげで、カイトからデートのお誘いをもらえたのは予想外だった。元々、気に入ってもらえたら、次も約束しようと思っていたものの、俺が言い出す前にカイトから約束してもらえたのは、とても、とても嬉しかった。
(カイトは、劇が好き、なんだろうな……いずれ、あちらの席に座れるようになりたい、な)
カイトに説明したカップル席。あれは、魔族のためにあるような席で別種族のカップルは、滅多に使うことがないらしい。劇場の二分一を占めるピンクの席に、いずれ、カイトと座りたいと考えながら、俺はカイトと喫茶店で、軽く食事も済ませてしまう。
「次は、どこに行くんだ?」
「む、次は、街を歩いて、色々な店を見てみようと思っている。興味のある場所があれば、今日でも、次回以降でも、寄れるだろう?」
「次回……そ、そうだな。うん」
明後日が雪祭りのデート。来週がまた観劇デート。その間くらいに、俺の鍛練を見せる機会があれば、それもデートとして数えられるだろうか?
幸せな数を数えながら、ライトアップされた街をカイトと手を繋いで歩く。手を繋ぐ瞬間の、カイトの戸惑ったような顔は……嫌われているのではないと願いたい。
「あっ、じゃあ、皆にお土産を買いたいから、ちょっとしたお菓子や小物が売られてるようなお店ってないかな?」
「む、ならば、チョコ通りを目指そう」
「チョコ、通り? 何か、甘そうな名前だけど……」
「あそこは、チョコ専門店が多く建ち並ぶ通りだ。もちろん、それ以外の菓子も売っているし、雑貨店も多い。ヴァイラン魔国はチョコや飴が名物だからな。寄ってみるのも悪くはないだろう」
「おぉっ、それは良いなっ! じゃあ、そこを目指そう!」
「む」
案外甘味が好きなカイトは、俺の言葉に目を輝かせて歩き出す。先程よりも進むスピードが速くなったのは、きっと、楽しみだからだろう。
「こっちの通りは、服飾関係の店が多い。リドルの店も、こっちにある」
「へぇ、リド姉の店が……」
「あちらは、鍛冶の専門店が多い。剣や槍、盾なんていう武具はもちろん、鍋やフライパンのような調理器具なんかも多く売られている」
「剣、槍……見てみたいかも。いや、でも、今日はチョコ通りに……むむむっ」
「なら、次回案内しよう。雪祭りの会場は、この通りに近いところにあるからな」
「っ、うんっ!」
カイトに街の通りを案内していると、どんどんカイトの興味がどこに向くのかが分かってくる。食事関係は軒並み興味を示すし、武器などは、憧れているような節がある。魔法具なども、珍しいもののようで、色々とどんなものがあるのかを聞かれた。
しかし、そんな中、無粋な視線がずっとこちらを着いてきていることにも気づいていた。
(劇場を出た後から、か……何が目的だ?)
今回は、俺が一緒ということで、護衛は連れていない。だから、視線の主をどうにかするには、俺が動くしかないのだが、今はまだ、動いても逃げられる可能性の方が高い。
(様子見、か)
その結果、俺は、様子見を選択する。
「ライナード、ライナードはどんなことに興味があるんだ?」
「む? 俺か? 俺は……新しい調理器具とか、裁縫用の布や糸とか、本とか、だな」
カイトに手を引かれて我に返った俺は、カイトに求められるがままに話す。きっと、出会ったばかりの頃であれば、隠したいこともあったのだが、今はもう、色々バレてしまっている。そう、色々……。
(……カイトは、あのぬいぐるみ部屋とか、恋愛小説の山を見て、引いたりしなかっただろうか?)
今更ながらに心配になっていると、カイトはウンウンとうなずいて、笑顔を向けてくる。
「俺、ライナードの料理は好きだし、裁縫できるのもすごいと思うぞ! あと、恋愛小説って結構面白いのも多いよなっ」
そう言うカイトの目に、嘘は見えず、俺は知らず知らず詰めていた息を吐く。
(……あぁ、カイトが、愛しくて仕方ない)
カイトの言葉に、愛しさがまた、一段と募る。カイトは意識していないのだろうが、その言葉は、俺にとっての救いだった。
「あっ、本屋がある。ライナード、寄ってみるか?」
「む、しかし、カイトはあまり興味がないのでは……?」
「うーん、この世界にどんな本があるのか、まだあまり知らないから見てみたいんだ。だから、な?」
「分かった。ぜひとも行こう」
同じ想いではないかもしれない。しかし、想いを返してもらえるのは嬉しくて、幸せだった。
俺達は、本屋で様々な本を物色し、カイトは魔物図鑑、俺は、新しい恋愛小説を一冊ずつ買って、店を出るのだった。
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