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第六章 穏やかな日々
第九十三話 影響(ライナード視点)
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あの魅了騒動から一週間。さらに冷え込みが厳しくなってきた今日この頃。俺は、屋敷でカイトとニナの二人とまったりと過ごしていた。
「それにしても、あのカラクって人、すごかったんだな」
「む、そうだな」
カイトの視線は、ニナの胸元に光るそれに注がれており、ニナはそれを嬉しそうにいじっている。
「うゆっ、くびにかけるやつ、うれしーの」
「ネックレスな」
カイトが訂正した通り、ニナの首には可愛らしいハートのネックレスが飾られていた。
「これで、ニナの魅了は抑えられるし、ずっとニナの側にカイトが居る必要はなくなるな」
そう、実はこれ、ニナの魅了を抑える魔法が込められた魔法具なのだ。カイトとの実験の結果、カイトが無意識に発動していた魅了を抑える魔法を、魔法陣で再現し、ネックレスとして作り上げたのだった。そして、変化はもう一つあった。
「他の保護された人達、大丈夫かな?」
「む、今はまだ詳しくは分からないが、これがあるなら、いずれ普通の生活も送れるようになる」
カイトの言う『保護された人達』というのは、ニナと同じ境遇で育った子供達のことだった。ニナの存在が知れて、魅了された魔族達を元に戻した直後、魔王陛下はすぐにニナと同じように魅了を持って生まれ、家に監禁されている子供が居ないかの調査に乗り出した。結果、いくつかの犯罪が明るみになった他、三名ほどの魅了持ちが存在していたことが分かり、現在、彼ら彼女らの保護をしているところだった。闇魔法の耐性を持つ俺の部隊がフル稼働したのは言うまでもないだろう。
「しばらくは監視下に置かれるだろうが、そのうち、自由な行動も許される。心の傷は、時間が癒してくれるのを待つしかない」
「そう、だよな」
ニナと同じ境遇の者が居たという事実は、ヴァイラン魔国のみならず、リアン魔国やヘルジオン魔国にも伝わり、大々的な調査が行われている。これから生まれてくる魅了持ちのための仕組みも作っている途中であるため、きっと、今後は魅了持ちの悲劇は起こらなくなるはずだった。
「まま、ぱぱ、むずかしーおはなし、おわった?」
「うん、終わったぞ」
「む」
『遊ぶ? 遊ぶ?』と言いたげに目をキラキラさせているニナに、カイトと俺は返事をする。
……ちなみに、『まま』『ぱぱ』呼びは、特に強制したわけでもないのに、なぜかこうなった。
(カイトとの子供ができたら、こんな感じ何だろうか……?)
ニナの保護は、俺が担っているため、ニナ自身が独立するまでは、この屋敷で育てることになる。ただ、それはカイトとの子育てという面を見れば、俺達の子供のようで……とても、愛しく思えてくる。
(だが、子供を作ろうと思うなら、まずは、カイトに受け入れてもらう必要が……)
しかし、現在の俺とカイトの関係は、どう考えても恋人にすらなれていなかった。もしかしたら、カイトにとって、俺は親がわりではないかとさえ思えてしまう現状。少しは進展したいと思ってしまうのは、性急だろうかと頭を悩ませる。
(カイトは元々男で、恋愛対象は女かもしれない……そうなると、俺が性転換の秘術を使うしか……しかし、カイトがそれを望んでくれるかどうかも分からないし……)
性転換の秘術の詳細を知った時のカイトは、青ざめていたように思う。魔族でも苦しむ秘術の副作用は、カイトにとっては刺激の強いものだったのかもしれない。
(カイトのためならば、秘術を十回でも二十回でも使ってみせるんだがな)
それでも、使った後に嫌われるようなことになってはいけないと、今はまだ、手を出していない状態だった。
(恋愛小説……男同士のものの方が参考になるだろうか?)
ニナと一緒に手遊びを始めたカイトを眺めながら、俺は、俗に薔薇本と呼ばれるそれを買い求めることを決意するのだった。
「それにしても、あのカラクって人、すごかったんだな」
「む、そうだな」
カイトの視線は、ニナの胸元に光るそれに注がれており、ニナはそれを嬉しそうにいじっている。
「うゆっ、くびにかけるやつ、うれしーの」
「ネックレスな」
カイトが訂正した通り、ニナの首には可愛らしいハートのネックレスが飾られていた。
「これで、ニナの魅了は抑えられるし、ずっとニナの側にカイトが居る必要はなくなるな」
そう、実はこれ、ニナの魅了を抑える魔法が込められた魔法具なのだ。カイトとの実験の結果、カイトが無意識に発動していた魅了を抑える魔法を、魔法陣で再現し、ネックレスとして作り上げたのだった。そして、変化はもう一つあった。
「他の保護された人達、大丈夫かな?」
「む、今はまだ詳しくは分からないが、これがあるなら、いずれ普通の生活も送れるようになる」
カイトの言う『保護された人達』というのは、ニナと同じ境遇で育った子供達のことだった。ニナの存在が知れて、魅了された魔族達を元に戻した直後、魔王陛下はすぐにニナと同じように魅了を持って生まれ、家に監禁されている子供が居ないかの調査に乗り出した。結果、いくつかの犯罪が明るみになった他、三名ほどの魅了持ちが存在していたことが分かり、現在、彼ら彼女らの保護をしているところだった。闇魔法の耐性を持つ俺の部隊がフル稼働したのは言うまでもないだろう。
「しばらくは監視下に置かれるだろうが、そのうち、自由な行動も許される。心の傷は、時間が癒してくれるのを待つしかない」
「そう、だよな」
ニナと同じ境遇の者が居たという事実は、ヴァイラン魔国のみならず、リアン魔国やヘルジオン魔国にも伝わり、大々的な調査が行われている。これから生まれてくる魅了持ちのための仕組みも作っている途中であるため、きっと、今後は魅了持ちの悲劇は起こらなくなるはずだった。
「まま、ぱぱ、むずかしーおはなし、おわった?」
「うん、終わったぞ」
「む」
『遊ぶ? 遊ぶ?』と言いたげに目をキラキラさせているニナに、カイトと俺は返事をする。
……ちなみに、『まま』『ぱぱ』呼びは、特に強制したわけでもないのに、なぜかこうなった。
(カイトとの子供ができたら、こんな感じ何だろうか……?)
ニナの保護は、俺が担っているため、ニナ自身が独立するまでは、この屋敷で育てることになる。ただ、それはカイトとの子育てという面を見れば、俺達の子供のようで……とても、愛しく思えてくる。
(だが、子供を作ろうと思うなら、まずは、カイトに受け入れてもらう必要が……)
しかし、現在の俺とカイトの関係は、どう考えても恋人にすらなれていなかった。もしかしたら、カイトにとって、俺は親がわりではないかとさえ思えてしまう現状。少しは進展したいと思ってしまうのは、性急だろうかと頭を悩ませる。
(カイトは元々男で、恋愛対象は女かもしれない……そうなると、俺が性転換の秘術を使うしか……しかし、カイトがそれを望んでくれるかどうかも分からないし……)
性転換の秘術の詳細を知った時のカイトは、青ざめていたように思う。魔族でも苦しむ秘術の副作用は、カイトにとっては刺激の強いものだったのかもしれない。
(カイトのためならば、秘術を十回でも二十回でも使ってみせるんだがな)
それでも、使った後に嫌われるようなことになってはいけないと、今はまだ、手を出していない状態だった。
(恋愛小説……男同士のものの方が参考になるだろうか?)
ニナと一緒に手遊びを始めたカイトを眺めながら、俺は、俗に薔薇本と呼ばれるそれを買い求めることを決意するのだった。
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