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第五章 お姉様
第八十一話 占い(ライナード視点)
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思わぬところから魅了使いの情報がもたらされ、しかも、その魅了使いをすでにカイトが保護しているというとんでもない状況に、俺は頭痛を訴える頭を押さえながら、ローレル嬢とリリス嬢の二人と話し合う。
「私の記憶だと、保護した後に何か事件があったはずなんですよねぇ」
応接室で、ローレル嬢はウンウン唸りながらそう告げる。
その記憶とやらは、前世の物語の記憶らしいのだが、どうもそれは、この世界と酷似した話らしい。事実、ニナの存在を言い当てているということと、何より、カイトがそれを信じているということが、俺の中で強い根拠となっていた。
「どうにかして、その事件を思い出せませんの? こう、頭をぶつけるとか、水に沈んでみるとか試して……」
「痛いからっ! それに、死んじゃうっ! それっ、死んじゃいますからっ、リリス!」
大慌てで反論するローレル嬢だったが、リリス嬢はどうにも機嫌が悪そうだ。
「あんなに可愛い美少女に懐かれている海斗が、羨ましいですわ」
「まさかの八つ当たり!? あっ、でも、あれはあれでおいしいかも……」
(む、そろそろ止めるべき、か?)
テンポの良い応酬を前に、俺は口を出すべきかどうか考えて……とにかく一刻も早く対策を練るべきだと判断する。
「すまないが、話を進めたい」
「はっ、そうでした!」
「えぇ、そうですわね。とりあえず、今は海斗とニナちゃんの安全確保のために、どう行動すべきかが重要ですわね」
俺の一言で、何とか話が元の路線に戻る。それに安堵しながら、俺は海斗を守るために、ついでに、ニナも守るために必要なことを考えていく。
「この屋敷は、警備もしっかりしていて、安全だ」
「まぁ、それはそうですわね」
「いや、でも、それじゃあ、ゲームの中で何で事件が起こったのかが分からないんですけど……」
ローレル嬢は反論するものの、ここ以上に安全な場所と考えるなら、城くらいしか思い浮かばない。まさか、魔王陛下にカイト達を匿ってほしいと言うわけにはいかないだろう。
「む……」
「そもそも、ゲームではライナードさんがニナちゃんを捕縛していたのに、どうしてカイトちゃんが保護した形になってるのかも疑問だし……」
そう言ったローレル嬢に、俺は先程までの騒動を話してみる。俺自身もそこまで詳しく分かっているわけではないものの、カイトが俺のためを思って、危険な行動に出たらしいことまでは分かっている。
「それは……なんて、無謀な……」
「……いえ、ちょっと待ってくださいまし。もしかしたら、海斗なら……」
ただ、何やらリリス嬢は思い当たる節があるらしく、小さくブツブツと呟き出す。
「あの強運……海斗なら……だったら……」
そして、結論が出たのか、リリス嬢はスッと立ち上がり、おもむろに、口を開く。
「海斗に占ってもらいますわよ」
「はい?」
「む?」
何がどうして、カイトが占いをする話になったのか、全く持って意味不明だ。そもそも、俺はカイトに占いの趣味があるなんて話は聞いたことがない。
「大丈夫ですわ。方法さえしっかり考えれば、海斗の占いは確実に当たりますわ」
「えっと……リリス? 熱があったりは……」
「しませんわ。とにかく、行きましょう!」
そう言われて、俺達はまたもやカイトの居る部屋へと逆戻りする。
「あれ? 皆、話は終わったのか?」
すっかり熟睡したニナの側に座っていたカイトは、こちらを見て、不思議そうにする。
「えぇ、海斗、占ってもらえませんこと?」
「う、占い……」
そして、飛び出したリリス嬢の言葉に、カイトは盛大に頬を引きつらせるのだった。
「私の記憶だと、保護した後に何か事件があったはずなんですよねぇ」
応接室で、ローレル嬢はウンウン唸りながらそう告げる。
その記憶とやらは、前世の物語の記憶らしいのだが、どうもそれは、この世界と酷似した話らしい。事実、ニナの存在を言い当てているということと、何より、カイトがそれを信じているということが、俺の中で強い根拠となっていた。
「どうにかして、その事件を思い出せませんの? こう、頭をぶつけるとか、水に沈んでみるとか試して……」
「痛いからっ! それに、死んじゃうっ! それっ、死んじゃいますからっ、リリス!」
大慌てで反論するローレル嬢だったが、リリス嬢はどうにも機嫌が悪そうだ。
「あんなに可愛い美少女に懐かれている海斗が、羨ましいですわ」
「まさかの八つ当たり!? あっ、でも、あれはあれでおいしいかも……」
(む、そろそろ止めるべき、か?)
テンポの良い応酬を前に、俺は口を出すべきかどうか考えて……とにかく一刻も早く対策を練るべきだと判断する。
「すまないが、話を進めたい」
「はっ、そうでした!」
「えぇ、そうですわね。とりあえず、今は海斗とニナちゃんの安全確保のために、どう行動すべきかが重要ですわね」
俺の一言で、何とか話が元の路線に戻る。それに安堵しながら、俺は海斗を守るために、ついでに、ニナも守るために必要なことを考えていく。
「この屋敷は、警備もしっかりしていて、安全だ」
「まぁ、それはそうですわね」
「いや、でも、それじゃあ、ゲームの中で何で事件が起こったのかが分からないんですけど……」
ローレル嬢は反論するものの、ここ以上に安全な場所と考えるなら、城くらいしか思い浮かばない。まさか、魔王陛下にカイト達を匿ってほしいと言うわけにはいかないだろう。
「む……」
「そもそも、ゲームではライナードさんがニナちゃんを捕縛していたのに、どうしてカイトちゃんが保護した形になってるのかも疑問だし……」
そう言ったローレル嬢に、俺は先程までの騒動を話してみる。俺自身もそこまで詳しく分かっているわけではないものの、カイトが俺のためを思って、危険な行動に出たらしいことまでは分かっている。
「それは……なんて、無謀な……」
「……いえ、ちょっと待ってくださいまし。もしかしたら、海斗なら……」
ただ、何やらリリス嬢は思い当たる節があるらしく、小さくブツブツと呟き出す。
「あの強運……海斗なら……だったら……」
そして、結論が出たのか、リリス嬢はスッと立ち上がり、おもむろに、口を開く。
「海斗に占ってもらいますわよ」
「はい?」
「む?」
何がどうして、カイトが占いをする話になったのか、全く持って意味不明だ。そもそも、俺はカイトに占いの趣味があるなんて話は聞いたことがない。
「大丈夫ですわ。方法さえしっかり考えれば、海斗の占いは確実に当たりますわ」
「えっと……リリス? 熱があったりは……」
「しませんわ。とにかく、行きましょう!」
そう言われて、俺達はまたもやカイトの居る部屋へと逆戻りする。
「あれ? 皆、話は終わったのか?」
すっかり熟睡したニナの側に座っていたカイトは、こちらを見て、不思議そうにする。
「えぇ、海斗、占ってもらえませんこと?」
「う、占い……」
そして、飛び出したリリス嬢の言葉に、カイトは盛大に頬を引きつらせるのだった。
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