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第五章 お姉様
第七十七話 虐げられた少女
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(怒ってる、ライナードが怒ってるよ……)
今、目の前に居るライナードは、明らかに不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。ただ、怒られるようなことをしてしまった自覚があるために、俺は小さくなるしかない。
「ごめんなさい。ライナード……」
ひとまず、ライナードの部屋の椅子にお互い着席して、謝罪をする。
なぜか目の下に大きな隈を作っているライナードは、そんな俺の謝罪にますます険しい表情を浮かべる。
「ひっ」
そんなライナードの姿に、ニナは明らかに怯えていて……俺は慌てて経緯を話すことにする。
「その、ノーラに護衛や侍女を新たに用意するって言われて、少し離れるって言われた時、俺もライナードの役に立てないかと思って、それで、隠し通路がありそうな場所を探してて……」
少し文脈が乱れた言葉にはなっていたものの、俺はそのままニナと出会ったところまで説明する。
「ニナの様子は普通じゃないと思って、迷惑になるかもしれないとは考えたんだけど、放っておけなくて……」
「……そうか」
そこまで話すと、なぜか、ライナードの視線が柔らかなものに変わる。
(? えっと……ライナードは子供好き、とかか?)
これはもしかしたら、ニナに絆されてくれたのかもしれない。そう思っていると、それまで沈黙を保って、じっとこちらを穴が空くのではないかと思うくらい見つめ続けていたノーラが口を開く。
「カイトお嬢様の判断は正しかったと思われます。もし、彼女の年齢が嘘ではないのならば、彼女は身近な者に虐待されていた可能性が高いでしょう」
「っ!?」
ノーラの言っている内容はあまり分からなかったものの、虐待の可能性が高いという言葉だけで、俺は大きな衝撃を受ける。俺も、その可能性を考えないわけではなかったものの、やはり他の者に肯定されると衝撃が違うのだと改めて思う。
「うそじゃないもんっ。ニナ、ごさいなのっ」
そして、怯えながら反論するニナの様子に、ライナードが大きくうなずく。
「恐らく、嘘は言っていない」
「では、確実に虐待を受けていたということになりますね」
ニナの年齢と虐待がどう関係するのか、そろそろ誰かに説明してほしい。そう思っていると、その願いが通じたのか、ライナードが口を開く。
「カイト、魔族は確かに体の成長が早いものだが、ニナのこれは、異常だ」
「えっ……?」
そう言われて、改めてニナを見れば、その姿はやはり、十代後半、いや、日本人の感覚で言うなら、完全に大人の女性にしか見えないし、もしかしたら、この世界でも大人の女性に見えるかもしれないくらいの見た目だ。
「魔法の一つに、成長を促進させるための魔法がある。それは主に、生まれた時にあまりにも体重が少ない子供に使用される医療手段の魔法だが……稀に、性的虐待を目的に、幼い子供を無理矢理成長させる手段にも使われる」
「なっ! ちょっと待てよ! ニナは、五歳だって……」
「だからこそ、だろうな」
五歳の子供に対して、性的な虐待が行われていたというおぞましい事実に、俺は叫び出したい衝動に駆られる。
(そんなのっ、許されるはずがないっ!)
「そして、その成長を促進させる魔法を使うこと自体も虐待に含まれる。なぜなら、この魔法はかけられた者に負担がかかり、主に生殖機能に障害をもたらすことが多いからだ。赤子に少し使うくらいなら問題はないが、ここまで成長させたとなると、何らかの障害が発生しているかもしれない」
「っ……」
あまりにも惨い事実を知らされて、俺は絶句する。救いがあるとするなら、ニナは俺達の話の内容を理解できていないらしいということくらいしかない。
「カイトが保護したいのであれば、協力しよう。俺も、幼子の虐待を見てみぬふりなどできないからな」
「頼む。俺に手伝えることがあるなら、何だってするから」
「う?」
話の内容が分からないらしいニナは、俺達の視線が一斉に自分に向くと、ビクッと肩を揺らして、俺の服にギュウッとしがみつく。
「…………羨ましい」
「ん? 何て言ったんだ? ライナード?」
「む、いや、何でもない。とりあえず、その子の身柄はこの屋敷で預かれるように体制を整えよう。すまないが、カイトとは別の部屋に「やっ!」……むぅ」
俺と別の部屋になるというところだけはしっかりと理解できたらしいニナは、途端に涙目で抗議する。
「えっと……俺と一緒でも問題はないと思うんだが?」
「む……しかし、今は……」
「五歳児に危険なんてないって。だから、一緒に居させてくれないか?」
「……必ず、側に侍女や護衛をつけることを約束してくれ」
「あぁ、分かった」
そうして、俺は何とかライナードからニナの身柄を保障してもらえることになり、安堵して……。
「それと、カイトは説教だ」
「うっ」
やはり、お説教は免れなかったようで、俺はしばらく、ライナードとノーラから長々とお説教を受けるのだった。
今、目の前に居るライナードは、明らかに不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。ただ、怒られるようなことをしてしまった自覚があるために、俺は小さくなるしかない。
「ごめんなさい。ライナード……」
ひとまず、ライナードの部屋の椅子にお互い着席して、謝罪をする。
なぜか目の下に大きな隈を作っているライナードは、そんな俺の謝罪にますます険しい表情を浮かべる。
「ひっ」
そんなライナードの姿に、ニナは明らかに怯えていて……俺は慌てて経緯を話すことにする。
「その、ノーラに護衛や侍女を新たに用意するって言われて、少し離れるって言われた時、俺もライナードの役に立てないかと思って、それで、隠し通路がありそうな場所を探してて……」
少し文脈が乱れた言葉にはなっていたものの、俺はそのままニナと出会ったところまで説明する。
「ニナの様子は普通じゃないと思って、迷惑になるかもしれないとは考えたんだけど、放っておけなくて……」
「……そうか」
そこまで話すと、なぜか、ライナードの視線が柔らかなものに変わる。
(? えっと……ライナードは子供好き、とかか?)
これはもしかしたら、ニナに絆されてくれたのかもしれない。そう思っていると、それまで沈黙を保って、じっとこちらを穴が空くのではないかと思うくらい見つめ続けていたノーラが口を開く。
「カイトお嬢様の判断は正しかったと思われます。もし、彼女の年齢が嘘ではないのならば、彼女は身近な者に虐待されていた可能性が高いでしょう」
「っ!?」
ノーラの言っている内容はあまり分からなかったものの、虐待の可能性が高いという言葉だけで、俺は大きな衝撃を受ける。俺も、その可能性を考えないわけではなかったものの、やはり他の者に肯定されると衝撃が違うのだと改めて思う。
「うそじゃないもんっ。ニナ、ごさいなのっ」
そして、怯えながら反論するニナの様子に、ライナードが大きくうなずく。
「恐らく、嘘は言っていない」
「では、確実に虐待を受けていたということになりますね」
ニナの年齢と虐待がどう関係するのか、そろそろ誰かに説明してほしい。そう思っていると、その願いが通じたのか、ライナードが口を開く。
「カイト、魔族は確かに体の成長が早いものだが、ニナのこれは、異常だ」
「えっ……?」
そう言われて、改めてニナを見れば、その姿はやはり、十代後半、いや、日本人の感覚で言うなら、完全に大人の女性にしか見えないし、もしかしたら、この世界でも大人の女性に見えるかもしれないくらいの見た目だ。
「魔法の一つに、成長を促進させるための魔法がある。それは主に、生まれた時にあまりにも体重が少ない子供に使用される医療手段の魔法だが……稀に、性的虐待を目的に、幼い子供を無理矢理成長させる手段にも使われる」
「なっ! ちょっと待てよ! ニナは、五歳だって……」
「だからこそ、だろうな」
五歳の子供に対して、性的な虐待が行われていたというおぞましい事実に、俺は叫び出したい衝動に駆られる。
(そんなのっ、許されるはずがないっ!)
「そして、その成長を促進させる魔法を使うこと自体も虐待に含まれる。なぜなら、この魔法はかけられた者に負担がかかり、主に生殖機能に障害をもたらすことが多いからだ。赤子に少し使うくらいなら問題はないが、ここまで成長させたとなると、何らかの障害が発生しているかもしれない」
「っ……」
あまりにも惨い事実を知らされて、俺は絶句する。救いがあるとするなら、ニナは俺達の話の内容を理解できていないらしいということくらいしかない。
「カイトが保護したいのであれば、協力しよう。俺も、幼子の虐待を見てみぬふりなどできないからな」
「頼む。俺に手伝えることがあるなら、何だってするから」
「う?」
話の内容が分からないらしいニナは、俺達の視線が一斉に自分に向くと、ビクッと肩を揺らして、俺の服にギュウッとしがみつく。
「…………羨ましい」
「ん? 何て言ったんだ? ライナード?」
「む、いや、何でもない。とりあえず、その子の身柄はこの屋敷で預かれるように体制を整えよう。すまないが、カイトとは別の部屋に「やっ!」……むぅ」
俺と別の部屋になるというところだけはしっかりと理解できたらしいニナは、途端に涙目で抗議する。
「えっと……俺と一緒でも問題はないと思うんだが?」
「む……しかし、今は……」
「五歳児に危険なんてないって。だから、一緒に居させてくれないか?」
「……必ず、側に侍女や護衛をつけることを約束してくれ」
「あぁ、分かった」
そうして、俺は何とかライナードからニナの身柄を保障してもらえることになり、安堵して……。
「それと、カイトは説教だ」
「うっ」
やはり、お説教は免れなかったようで、俺はしばらく、ライナードとノーラから長々とお説教を受けるのだった。
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