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第五章 お姉様
第六十七話 狂いかける者
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俺は今、再び後悔している。何で、何でっ、ライナードをこの場に引っ張ってこなかったのかと。連れ去られるのが確定していたのだとしても、せめてライナードが一緒に居れば、ずっとずっと心強かったに違いないのに。
「カイトお嬢様。決して、私達から離れませんよう」
「う、ん」
ノーラが俺にそう声をかけ、リュシリーも同時に警戒する。その警戒した視線の先に居るのは、先程まで俺を着せ替え人形にして楽しんでいたアメリアさんだ。
「どうして、こんなことに……」
そう呟きながら、俺は少し前のことを思い出す。
「どんな相談ですか?」
悲しそうな表情のアメリアさんに、俺はつい相談に乗るという決断をして、話を聞いてみる。もちろん、着せ替え人形状態から解放されたかったのもあったが、ライナードに似たアメリアさんを放っておくことはできなかった。俺達は、机に移動して、使用人達にお茶を淹れてもらう。
「私の片翼のことなの」
おもむろに話し出したアメリアさん。
どうやら、アメリアさんには片翼が居るらしい。その人は、アメリアさんと同じ魔族で、街の警備隊隊長という職に就いているそうだ。
「毎日毎日、私はフィロと一緒に居られることが幸せで、私自身もその警備隊に入隊して、一緒に活動していたの」
その日は、特にトラブルもなく、平穏無事に見廻りを終えるところだったらしい。
「その時、一人の女がフィロと出会い頭にぶつかったの。優しいフィロは、転んだその女に手を差し伸べたのだけど……」
そこから、フィロさんはおかしくなったらしい。
「最初は、随分長く手を繋いだままだから、その女が怪我でもしていたのかと思ったの」
しかし、それは違ったという。
「フィロに声をかけようとして、私は、気づいてしまった。彼が、その女に見惚れていることに」
そう言いながら、アメリアさんは、手にしていたカップを割ってしまう。
「っ、カイトお嬢様っ、こちらへ!」
それを見た瞬間、リュシリーが硬い声音で俺にそんな指示を出してくる。何がなんだか分からなかったものの、アメリアさんの雰囲気があまりよろしくないことだけは理解できるため、とにかくリュシリーに言われた通り、彼女達の後ろへと回り込む。
アメリアさんに着いてきていた侍女達は、アメリアさんの様子に、一人が報告のためか、部屋を飛び出し、他は残って、俺を守る体勢に入ってくれている。
「見間違いだと思いたかった。でも、次の瞬間、フィロはその女にプロポーズしたの」
机が、いや、部屋全体が、ギシギシと軋み出す。アメリアさんから魔力が溢れて、それが部屋を圧迫している状態だった。
「どうして……どうしてっ! 私が、居るのに、どうして、フィロはっ……」
血を吐くようなその叫びに呼応して、部屋の軋みは大きくなる。
ノーラに離れないように言われたものの、離れるつもりなど毛頭ない。今が危険であることくらい、どんなバカでも理解できるだろう。
「どうしてっ、どうしてっ!」
もはや、理性が残っているのかも怪しい状態で叫び続けるアメリアさん。その姿はあまりにも悲痛で、俺はどう声をかけたら良いのか分からない。
「カイトお嬢様。ライナード様は現在、城の方におられます。帰ってくるまで、時間がかかることでしょう」
「っ、そう」
リュシリーの言葉に、俺は言葉を詰まらせる。ライナードが今、側に居ないことが、こんなにも心細くなるなんて、思いもしなかった。
「今から、アメリア様の気を鎮めるために、言葉を尽くします。言葉がある間は、アメリア様も危害を加えることはないでしょう。……このようなことを頼むのは申し訳ないのですが、カイトお嬢様も協力してくださいますか?」
「もちろん」
二人の説明によると、アメリアさんは、今、片翼を失った魔族のように、狂う寸前なのだという。何とか希望を持たせなければ、殺戮を繰り返す存在になってしまうという。
(ライナードのお姉さんを、そんな状態にさせるわけにはいかないっ)
「アメリア様っ、しっかりしてくださいっ」
「フィロ様には、きっと何か事情があったに違いありませんっ」
「フィロ様には、アメリア様だけなのですっ、どうか、正気に戻ってくださいっ!」
アメリアさんの侍女達の懸命な呼び掛けに、アメリアさんは唸り声を上げるのみだ。
(ダメだっ、これじゃあ、希望にならないっ)
事情が良く分からないのもそうだが、フィロさんが取った行動はあまりにも不可解過ぎる。出会い頭に求婚なんて、頭がおかしいとしか思えない。
ノーラとリュシリーも、フィロさんが弱味を握られたのかもしれないとか、色々と言っているものの、やはり、説得力に欠けるらしく、アメリアさんの反応はない。
(どうするっ、説得力があって、アメリアさんに希望を持たせる言葉って、何がある?)
ない知恵を絞って、俺は必死に考えて……ふと、ここが魔法の世界だということを思い出す。
(もしかして……)
「ねぇ、ここには、心に作用する魔法とかってあるのかな?」
そう言った直後、あわや崩壊かとも思えるほど軋んでいた部屋の中が、しん、と静まる。
ファンタジーの中に、洗脳だとか、魅了だとかいうものは、割りと多く存在する。だから、もしかして、と思ったのだが、この様子だと、心当たりがあるのかもしれない。
「禁忌……」
誰が呟いたのかも分からないその言葉。そして、その直後、アメリアさんはフラりと倒れ込むのだった。
「カイトお嬢様。決して、私達から離れませんよう」
「う、ん」
ノーラが俺にそう声をかけ、リュシリーも同時に警戒する。その警戒した視線の先に居るのは、先程まで俺を着せ替え人形にして楽しんでいたアメリアさんだ。
「どうして、こんなことに……」
そう呟きながら、俺は少し前のことを思い出す。
「どんな相談ですか?」
悲しそうな表情のアメリアさんに、俺はつい相談に乗るという決断をして、話を聞いてみる。もちろん、着せ替え人形状態から解放されたかったのもあったが、ライナードに似たアメリアさんを放っておくことはできなかった。俺達は、机に移動して、使用人達にお茶を淹れてもらう。
「私の片翼のことなの」
おもむろに話し出したアメリアさん。
どうやら、アメリアさんには片翼が居るらしい。その人は、アメリアさんと同じ魔族で、街の警備隊隊長という職に就いているそうだ。
「毎日毎日、私はフィロと一緒に居られることが幸せで、私自身もその警備隊に入隊して、一緒に活動していたの」
その日は、特にトラブルもなく、平穏無事に見廻りを終えるところだったらしい。
「その時、一人の女がフィロと出会い頭にぶつかったの。優しいフィロは、転んだその女に手を差し伸べたのだけど……」
そこから、フィロさんはおかしくなったらしい。
「最初は、随分長く手を繋いだままだから、その女が怪我でもしていたのかと思ったの」
しかし、それは違ったという。
「フィロに声をかけようとして、私は、気づいてしまった。彼が、その女に見惚れていることに」
そう言いながら、アメリアさんは、手にしていたカップを割ってしまう。
「っ、カイトお嬢様っ、こちらへ!」
それを見た瞬間、リュシリーが硬い声音で俺にそんな指示を出してくる。何がなんだか分からなかったものの、アメリアさんの雰囲気があまりよろしくないことだけは理解できるため、とにかくリュシリーに言われた通り、彼女達の後ろへと回り込む。
アメリアさんに着いてきていた侍女達は、アメリアさんの様子に、一人が報告のためか、部屋を飛び出し、他は残って、俺を守る体勢に入ってくれている。
「見間違いだと思いたかった。でも、次の瞬間、フィロはその女にプロポーズしたの」
机が、いや、部屋全体が、ギシギシと軋み出す。アメリアさんから魔力が溢れて、それが部屋を圧迫している状態だった。
「どうして……どうしてっ! 私が、居るのに、どうして、フィロはっ……」
血を吐くようなその叫びに呼応して、部屋の軋みは大きくなる。
ノーラに離れないように言われたものの、離れるつもりなど毛頭ない。今が危険であることくらい、どんなバカでも理解できるだろう。
「どうしてっ、どうしてっ!」
もはや、理性が残っているのかも怪しい状態で叫び続けるアメリアさん。その姿はあまりにも悲痛で、俺はどう声をかけたら良いのか分からない。
「カイトお嬢様。ライナード様は現在、城の方におられます。帰ってくるまで、時間がかかることでしょう」
「っ、そう」
リュシリーの言葉に、俺は言葉を詰まらせる。ライナードが今、側に居ないことが、こんなにも心細くなるなんて、思いもしなかった。
「今から、アメリア様の気を鎮めるために、言葉を尽くします。言葉がある間は、アメリア様も危害を加えることはないでしょう。……このようなことを頼むのは申し訳ないのですが、カイトお嬢様も協力してくださいますか?」
「もちろん」
二人の説明によると、アメリアさんは、今、片翼を失った魔族のように、狂う寸前なのだという。何とか希望を持たせなければ、殺戮を繰り返す存在になってしまうという。
(ライナードのお姉さんを、そんな状態にさせるわけにはいかないっ)
「アメリア様っ、しっかりしてくださいっ」
「フィロ様には、きっと何か事情があったに違いありませんっ」
「フィロ様には、アメリア様だけなのですっ、どうか、正気に戻ってくださいっ!」
アメリアさんの侍女達の懸命な呼び掛けに、アメリアさんは唸り声を上げるのみだ。
(ダメだっ、これじゃあ、希望にならないっ)
事情が良く分からないのもそうだが、フィロさんが取った行動はあまりにも不可解過ぎる。出会い頭に求婚なんて、頭がおかしいとしか思えない。
ノーラとリュシリーも、フィロさんが弱味を握られたのかもしれないとか、色々と言っているものの、やはり、説得力に欠けるらしく、アメリアさんの反応はない。
(どうするっ、説得力があって、アメリアさんに希望を持たせる言葉って、何がある?)
ない知恵を絞って、俺は必死に考えて……ふと、ここが魔法の世界だということを思い出す。
(もしかして……)
「ねぇ、ここには、心に作用する魔法とかってあるのかな?」
そう言った直後、あわや崩壊かとも思えるほど軋んでいた部屋の中が、しん、と静まる。
ファンタジーの中に、洗脳だとか、魅了だとかいうものは、割りと多く存在する。だから、もしかして、と思ったのだが、この様子だと、心当たりがあるのかもしれない。
「禁忌……」
誰が呟いたのかも分からないその言葉。そして、その直後、アメリアさんはフラりと倒れ込むのだった。
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