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第五章 お姉様
第六十五話 地獄の一時
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俺は今、猛烈に後悔している。俺はなぜ、あの時全力でライナードに助けを請わなかったのかと。きっと、ライナードなら、俺が助けを求めれば何とかしてくれたはずなのに、あろうことか、俺はアメリアさんに同意したと捉えられる発言をしてしまった。そのせいで、ライナードに助けを求めるという道を塞いでしまったのだ。
「まぁっ、まぁっ、まぁっ! 可愛いわっ! もうっ、もうっ、あの堅物には勿体ないくらいの可愛さねっ!」
「アリガトウゴザイマス」
緑と白を基調としたフリッフリのドレスやら、赤いイヤリングやネックレスを装備させられた俺は、死んだ魚の目でお礼を告げる。体感でかれこれ三時間ほど、俺は着せ替え人形にされて、ずっと色々なドレスに着替えていた。演劇部でも似たような現象に見舞われることはあったが、多分今回で最長記録更新だ。
(いったいどこに、これだけのドレスがあったんだ……?)
なぜか、誂えたようにピッタリなドレスの数々は、アメリアさんが俺を引き込んだ見知らぬ部屋に置いてあったものらしく、緑とか赤を基調にしたものがとにかく多い。今だって、マーメイドラインの赤いドレスがアメリアさんの手にある。
(誰か、助けて……)
側に居るアメリアさんに着いてきたらしい侍女さん達へと視線を向けるものの、彼女達もアメリアさんと同類らしく、何やらキャイキャイ話している。
「ライナード……」
思わず、俺はここに居ないライナードへと助けを求める。すると、なぜかアメリアさんの動きが止まった。
「カイトちゃん、貴方は、ライナードのことをどう思ってるの?」
今までのほのぼのとした空気はどこへやら、一転して、真剣な表情になったアメリアさんに、俺は、困惑しながら一生懸命頭を働かせる。
(どう思ってるかって……そりゃあ)
「頼りになる、とか、優しい、とか? あっ、あと、一緒に居ると落ち着くし、色々可愛いところもあるな」
ウンウンとうなずきながら、俺は続ける。
「趣味が恋愛小説を読むこととか、ぬいぐるみを作ることとか、色々と可愛いかな?」
「あら、ライナード、そこまでバレているのね。それで、他は?」
そう言いながらも、まだ満足していないのか、アメリアさんは続きを促してくる。
「他って言われても……」
そう言い淀めば、アメリアさんは身を乗り出してくる。
「愛しいとか、愛してるとかはっ?」
「いとっ、あいっ!?」
思いがけない言葉に、俺は大混乱だ。
「まぁっ、あれだけ熱々のカップル状態だったのに、そこまでいっていないなんて……ライナードをヘタレに育てた覚えはないのだけど」
「い、いや、ライナードがヘタレとか、それ以前の問題というか、何というか……」
さすがに、初対面で俺が元々男だっただなんてことは明かせない。それでも、ライナードがヘタレと言われるのは嫌で、そう反論したものの、アメリアさんの反応は微妙だ。
「……そう、カイトちゃんがそう言うのなら、そういうことにしておくわ。……それに、くっつくのも時間の問題でしょうし」
「えっ?」
「いえ、何でもないわ」
最後に何と言ったのかは分からなかったものの、どうにか引いてもらえることが分かり、安心する。そして……。
「……ねぇ、カイトちゃん? 私の相談に乗ってくれない?」
どこか悲しそうな表情をしたアメリアさんに、俺はライナードを重ねて、深く考えることもなく、了承してしまうのだった。
「まぁっ、まぁっ、まぁっ! 可愛いわっ! もうっ、もうっ、あの堅物には勿体ないくらいの可愛さねっ!」
「アリガトウゴザイマス」
緑と白を基調としたフリッフリのドレスやら、赤いイヤリングやネックレスを装備させられた俺は、死んだ魚の目でお礼を告げる。体感でかれこれ三時間ほど、俺は着せ替え人形にされて、ずっと色々なドレスに着替えていた。演劇部でも似たような現象に見舞われることはあったが、多分今回で最長記録更新だ。
(いったいどこに、これだけのドレスがあったんだ……?)
なぜか、誂えたようにピッタリなドレスの数々は、アメリアさんが俺を引き込んだ見知らぬ部屋に置いてあったものらしく、緑とか赤を基調にしたものがとにかく多い。今だって、マーメイドラインの赤いドレスがアメリアさんの手にある。
(誰か、助けて……)
側に居るアメリアさんに着いてきたらしい侍女さん達へと視線を向けるものの、彼女達もアメリアさんと同類らしく、何やらキャイキャイ話している。
「ライナード……」
思わず、俺はここに居ないライナードへと助けを求める。すると、なぜかアメリアさんの動きが止まった。
「カイトちゃん、貴方は、ライナードのことをどう思ってるの?」
今までのほのぼのとした空気はどこへやら、一転して、真剣な表情になったアメリアさんに、俺は、困惑しながら一生懸命頭を働かせる。
(どう思ってるかって……そりゃあ)
「頼りになる、とか、優しい、とか? あっ、あと、一緒に居ると落ち着くし、色々可愛いところもあるな」
ウンウンとうなずきながら、俺は続ける。
「趣味が恋愛小説を読むこととか、ぬいぐるみを作ることとか、色々と可愛いかな?」
「あら、ライナード、そこまでバレているのね。それで、他は?」
そう言いながらも、まだ満足していないのか、アメリアさんは続きを促してくる。
「他って言われても……」
そう言い淀めば、アメリアさんは身を乗り出してくる。
「愛しいとか、愛してるとかはっ?」
「いとっ、あいっ!?」
思いがけない言葉に、俺は大混乱だ。
「まぁっ、あれだけ熱々のカップル状態だったのに、そこまでいっていないなんて……ライナードをヘタレに育てた覚えはないのだけど」
「い、いや、ライナードがヘタレとか、それ以前の問題というか、何というか……」
さすがに、初対面で俺が元々男だっただなんてことは明かせない。それでも、ライナードがヘタレと言われるのは嫌で、そう反論したものの、アメリアさんの反応は微妙だ。
「……そう、カイトちゃんがそう言うのなら、そういうことにしておくわ。……それに、くっつくのも時間の問題でしょうし」
「えっ?」
「いえ、何でもないわ」
最後に何と言ったのかは分からなかったものの、どうにか引いてもらえることが分かり、安心する。そして……。
「……ねぇ、カイトちゃん? 私の相談に乗ってくれない?」
どこか悲しそうな表情をしたアメリアさんに、俺はライナードを重ねて、深く考えることもなく、了承してしまうのだった。
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