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第一章 第一フロア
地帯区分D
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扉を開けた瞬間、僕達はその違和感に気付いた。
「暗いな」
「うん」
恐らくは、淡い光を発する苔が少なくなったのだろう。見えないというほどではないものの、あまり遠くを見通すことはできない。これは、モンスターと戦うに当たって大きな打撃だ。
「いつも以上に、慎重に進むぞ」
「うん」
モンスターを倒さなければ、食料は得られない。食料が得られなければ、体が弱る。体が弱れば、モンスターに対抗できない。そう考えれば、モンスターを倒さないということは考えられない。ただでさえ侘しい食料事情。毎日の食料調達は必須だった。
琴音が『冒険の書』を開き、道案内を始めようとしたのを見て、僕は今日向かおうと決めていた方向を見る。地図は大体が埋まってきていて、あともう少しで完成しそうだったのだ。しかし、地図の完成を目前としているという僕の認識は、すぐさま覆された。
「お兄ちゃん……」
「準備できた?」
呼び掛けられたので、準備ができたのかと確認してみると、なぜか首を横に振られる。
「琴音?」
嫌な予感がする。そう思いながらも尋ねてみると、琴音はゆっくりと口を開く。
「地図が、まっさらになってる」
「っ!」
そう言われ、すぐに原因は地帯区分が変更されたせいだろうと当たりをつける。しかし、ようやく終わりが見えてきたところで、これはキツい。
「そう、か」
「……これから、地図を作るしかなさそうだよ」
なってしまったものは仕方がない。表情は変わらないものの、どこか残念そうに見える琴音に、僕はどうにか頭を切り替える。
「分かった。二人でまた、頑張ろう」
「……うん」
そう、言い合っていると、話しながらも警戒を緩めていなかった僕達の耳に、その音が響いてくる。
ォォオッ。
どこかからのモンスターの鳴き声らしきそれに、僕達は一気に気を引き締める。
ここで、死ぬわけにはいかない。ここで、殺されるわけにはいかない。まだ何も分かっていない。まだ何も成し遂げていない。最初に『冒険の書』に書かれた言葉が本当ならば、彰がここに居るはずだ。何としても救い出して、一緒に帰る。それが、大きな目標だ。
「行こう、琴音」
コクリとうなずいた琴音を見て、僕は歩き出す。慎重に、ゆっくりと。
嫌になるくらいに暗い通路を、緊張を高めたまま歩き、どれくらいの時が経っただろう? きっと、実際の時間で言えばそんなには経っていないのだろうが、恐怖の時間は長く感じる。
いつ、モンスターが飛び出してくるか分からない。どんなモンスターが居るのかも不明。それは、大きな精神的ストレスとなってのし掛かってくる。
「……っ」
「っ」
小さな息遣いにさえ、体を震わせてしまう。モンスターが必ず音を発するとは限らない。そう思えばこそ、警戒は最大限に引き上げる必要があった。
カサッ。
と、ふいに、僕達以外が発した音が聞こえた。僕は即座に琴音へと視線を移し、『冒険の書』をチラリと見る。すると、琴音はすぐさまその意図を察して、慎重に、音を立てないように『冒険の書』を捲った。
『冒険の書
三日目
第一フロア 地帯区分A
これより、『嘆きの証』の影響により、地帯区分の変更開始
変更完了
第一フロア 地帯区分D
滝野琴音はD地帯へ進行
これより超危険地帯
クックドラゴンが現れた
滝野琴音は逃走した
ジャイアントスパイダーが現れた』
見慣れない記述を見て、僕はサァッと血の気が引くのを感じる。『超危険地帯』という言葉も引っ掛かったが、それ以上にクックドラゴンという名称のモンスターと気づかないうちに遭遇していたという事実が重い。
もしかしたら、安全地帯を出てすぐに聞いた声がそれだったのかもしれないが、この『冒険の書』に記載されているということは、戦いになっていてもおかしくない距離だった可能性がある。どんな基準でモンスターの出現が書かれるのかは知らないが、今までの経験からすると、『冒険の書』に書かれたら、そう離れていない場所にモンスターが居た。進む方向を間違えれば、すぐさま戦いになっていたのかもしれない。
ただ、そんな恐怖はあっても、今は優先すべき事がある。ジャイアントスパイダーという未知の敵。その出現が書かれているということは、近くにそれが居るということ。琴音は、僕が文章を読んだことを確認すると、すぐにもう一つのページを開ける。
『モンスター図鑑
3 ワーム
芋虫型のモンスター
強力な酸で相手を攻撃する
ドロップアイテム 何かの魚の缶詰
レアドロップアイテム 薬草(中)
4 クックドラゴン
鶏型のモンスター
鳥頭で猪突猛進な性質を持つ
バットと男の急所が好物
ドロップアイテム 黒卵
レアドロップアイテム 金卵
5 ジャイアントスパイダー
蜘蛛型のモンスター
糸によって絡め取り、獲物を捕食する
肉食モンスター
ドロップアイテム 丈夫な糸
レアドロップアイテム 白い液体』
ワームとクックドラゴンの部分は読み飛ばし、ひとまずはジャイアントスパイダーの記述を読む。情報は少ないものの、糸に注意して戦えば良いということだけは良く分かった。
カサカサッ。
そうして確認していると、徐々に音がこちらへ近づいていることに気づく。どうやら、そろそろこの地帯区分Dで初めての戦闘になりそうだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よっし、何とか書けました。
いや、あまりにも続きが出てこないので、スランプだろうかとも思ったんですが、どうにか書けそうです。
それでは、また!
「暗いな」
「うん」
恐らくは、淡い光を発する苔が少なくなったのだろう。見えないというほどではないものの、あまり遠くを見通すことはできない。これは、モンスターと戦うに当たって大きな打撃だ。
「いつも以上に、慎重に進むぞ」
「うん」
モンスターを倒さなければ、食料は得られない。食料が得られなければ、体が弱る。体が弱れば、モンスターに対抗できない。そう考えれば、モンスターを倒さないということは考えられない。ただでさえ侘しい食料事情。毎日の食料調達は必須だった。
琴音が『冒険の書』を開き、道案内を始めようとしたのを見て、僕は今日向かおうと決めていた方向を見る。地図は大体が埋まってきていて、あともう少しで完成しそうだったのだ。しかし、地図の完成を目前としているという僕の認識は、すぐさま覆された。
「お兄ちゃん……」
「準備できた?」
呼び掛けられたので、準備ができたのかと確認してみると、なぜか首を横に振られる。
「琴音?」
嫌な予感がする。そう思いながらも尋ねてみると、琴音はゆっくりと口を開く。
「地図が、まっさらになってる」
「っ!」
そう言われ、すぐに原因は地帯区分が変更されたせいだろうと当たりをつける。しかし、ようやく終わりが見えてきたところで、これはキツい。
「そう、か」
「……これから、地図を作るしかなさそうだよ」
なってしまったものは仕方がない。表情は変わらないものの、どこか残念そうに見える琴音に、僕はどうにか頭を切り替える。
「分かった。二人でまた、頑張ろう」
「……うん」
そう、言い合っていると、話しながらも警戒を緩めていなかった僕達の耳に、その音が響いてくる。
ォォオッ。
どこかからのモンスターの鳴き声らしきそれに、僕達は一気に気を引き締める。
ここで、死ぬわけにはいかない。ここで、殺されるわけにはいかない。まだ何も分かっていない。まだ何も成し遂げていない。最初に『冒険の書』に書かれた言葉が本当ならば、彰がここに居るはずだ。何としても救い出して、一緒に帰る。それが、大きな目標だ。
「行こう、琴音」
コクリとうなずいた琴音を見て、僕は歩き出す。慎重に、ゆっくりと。
嫌になるくらいに暗い通路を、緊張を高めたまま歩き、どれくらいの時が経っただろう? きっと、実際の時間で言えばそんなには経っていないのだろうが、恐怖の時間は長く感じる。
いつ、モンスターが飛び出してくるか分からない。どんなモンスターが居るのかも不明。それは、大きな精神的ストレスとなってのし掛かってくる。
「……っ」
「っ」
小さな息遣いにさえ、体を震わせてしまう。モンスターが必ず音を発するとは限らない。そう思えばこそ、警戒は最大限に引き上げる必要があった。
カサッ。
と、ふいに、僕達以外が発した音が聞こえた。僕は即座に琴音へと視線を移し、『冒険の書』をチラリと見る。すると、琴音はすぐさまその意図を察して、慎重に、音を立てないように『冒険の書』を捲った。
『冒険の書
三日目
第一フロア 地帯区分A
これより、『嘆きの証』の影響により、地帯区分の変更開始
変更完了
第一フロア 地帯区分D
滝野琴音はD地帯へ進行
これより超危険地帯
クックドラゴンが現れた
滝野琴音は逃走した
ジャイアントスパイダーが現れた』
見慣れない記述を見て、僕はサァッと血の気が引くのを感じる。『超危険地帯』という言葉も引っ掛かったが、それ以上にクックドラゴンという名称のモンスターと気づかないうちに遭遇していたという事実が重い。
もしかしたら、安全地帯を出てすぐに聞いた声がそれだったのかもしれないが、この『冒険の書』に記載されているということは、戦いになっていてもおかしくない距離だった可能性がある。どんな基準でモンスターの出現が書かれるのかは知らないが、今までの経験からすると、『冒険の書』に書かれたら、そう離れていない場所にモンスターが居た。進む方向を間違えれば、すぐさま戦いになっていたのかもしれない。
ただ、そんな恐怖はあっても、今は優先すべき事がある。ジャイアントスパイダーという未知の敵。その出現が書かれているということは、近くにそれが居るということ。琴音は、僕が文章を読んだことを確認すると、すぐにもう一つのページを開ける。
『モンスター図鑑
3 ワーム
芋虫型のモンスター
強力な酸で相手を攻撃する
ドロップアイテム 何かの魚の缶詰
レアドロップアイテム 薬草(中)
4 クックドラゴン
鶏型のモンスター
鳥頭で猪突猛進な性質を持つ
バットと男の急所が好物
ドロップアイテム 黒卵
レアドロップアイテム 金卵
5 ジャイアントスパイダー
蜘蛛型のモンスター
糸によって絡め取り、獲物を捕食する
肉食モンスター
ドロップアイテム 丈夫な糸
レアドロップアイテム 白い液体』
ワームとクックドラゴンの部分は読み飛ばし、ひとまずはジャイアントスパイダーの記述を読む。情報は少ないものの、糸に注意して戦えば良いということだけは良く分かった。
カサカサッ。
そうして確認していると、徐々に音がこちらへ近づいていることに気づく。どうやら、そろそろこの地帯区分Dで初めての戦闘になりそうだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
よっし、何とか書けました。
いや、あまりにも続きが出てこないので、スランプだろうかとも思ったんですが、どうにか書けそうです。
それでは、また!
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