冒険の書 ~続の書~

星宮歌

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第一章 第一フロア

*食料調達

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 剣と『冒険の書』、そして、リュックを持って、僕達は今、扉の外を探索していた。目的は一つ。食料探しだ。


「モンスター、居ないな」

「う、うん」


 少し怯えつつも、琴音は僕に着いてきてくれている。本当は、安全地帯で待っていたいだろうに、僕が行くと言えばすぐに、琴音も着いていくと返してきた。言葉には出さないが、僕を心配してくれているのだろう。


「それにしても、琴音の『冒険の書』でも地図が使えたのは良かったな」

「そうだね」


 戦闘には極力参加したくないという琴音には、地図を見ながらの道案内をしてもらっている。まだ行ったことのない場所を探索すれば、新たなモンスターが出てくるかもしれないということで、そういった場所を調べてもらっているのだ。


「あっ、この道を右に行ったら、まだ行ったことのない場所に出るよ」

「了解」


 琴音の案内に従って、僕は右へと曲がる。すると……。


 ズル。


「っ!?」
「っ!?」


 音に気づいた僕達は、同時に体を強張らせる。
 今までに聞いたことのない何かを引きずるような音。つまりは、新たなモンスターの可能性に、僕は剣を抜き、琴音は『冒険の書』を調べる。


「ワームが現れた、だって!」


 すぐに琴音からのモンスター情報が来て、僕はワームらしき姿を必死に探す。


 ズルズル。


 また、音がした。その音は、どうやら前方から響いてきているらしい。目を凝らせば、そこには確かに何かが居た。
 僕は、剣を構える。


「琴音は下がってて」

「う、うん」


 『ワーム』という名前から、芋虫系のモンスターだろうということは分かる。ただ……今見えている何かは、明らかに芋虫のサイズではない。

 ゆっくりと、僕はそいつに近づく。すると……。


 ズルズル。


 ワームもこちらへと近づき、その全貌が露になる。全長二メートルほどの丸々とした体躯の芋虫。それが、ワームの正体だった。


「っ!」


 その姿に、僕は一瞬、息を詰め、すぐさま思考を切り替えて走り出す。気持ち悪いとかは言っていられない。ただ、モンスターを倒すことが優先だった。

 しかし、僕のその特攻は、どうやら命知らずな行為だったらしい。

 クパッと芋虫の頭というか、口というかが開き、何かが来るのを察知した僕は、咄嗟に急ブレーキをかけて飛び退く。


 ピシャアッ!!


「危ないっ!」

「っ!?」


 琴音の声が聞こえるものの、それよりも僕は、目の前の『内臓・・』に目を奪われる。ワームが吐き出したのは、どこからどうみても内臓だった。液体をともなった、気味の悪い内臓。ただし、その『液体・・』は浴びてはいけないものだった。

 ジュッと肉の焼けるような音がして、その直後、飛沫が当たった部分に激しい痛みが襲いかかる。


「う、ぐぁぁぁあぁあっ」

「お兄ちゃん!?」


 激痛に頭の中が真っ白になる。少し当たっただけなのに、強烈な効果を発した液体は、苔生した地面までもジュウジュウ焼いて、白い煙を上げる。


「お兄ちゃんっ、今、そっち行くからっ!」

「く、来るな!」


 震える声で叫ぶ琴音に、僕は咄嗟に制止の声を上げる。なぜなら……ワームが、ズルズルと内臓を吸い上げていたからだ。


「う、うおぉぉぉおぉおっ!!!」


 攻撃するなら、今しかない。そう思って、震えそうになる手で剣を持ち、今度こそワームへと肉薄する。そして……。

 ザンッとワームを切りつければ、一撃でワームは黒い光を放って霧散する。

 どうにか、どうにか僕は、ワームを倒すことができたのだった。


「はぁっ、う、ぐぅうっ」


 カランと剣を落とした僕は、そのままドロップアイテムの確認もせずにうずくまる。飛沫は、一番前に出ていた手に集中してかかっていた。他にも足にかかったものもあったが、それよりも大変なのは手だった。


「お兄ちゃんっ、大丈夫っ?」


 大丈夫じゃないのは見て分かりそうなものだったが、琴音はそう声をかけて僕を覗き見る。そして、手が酷い火傷のようになっているのを見て、『ひっ』と悲鳴を漏らす。


「お、お兄ちゃん! 手、手っ」

「う、ん……結構、痛い」


 もう、結構とかなんとか言う以上に、泣き叫びたいくらいに痛かったが、兄としての尊厳もある。無理矢理、笑顔を作って、僕は琴音に笑いかける。


「ごめんっ。お兄ちゃん、ごめんっ。私が、戦いたくないって言ったから、こんなっ」

「琴音の、せいじゃ、ないよ。はぁっ、はぁっ、あれは、初見じゃ、避けられなかっただろう、から、ね」

「と、とにかく、安全地帯に戻ろうっ! えぇっと、お水で冷やさないと!」


 そう言って、琴音は僕の剣とドロップしたアイテムを取って、『冒険の書』で道を確認しながら一緒に戻っていく。

 ドロップしたアイテムは、缶詰のように見えたが、今は琴音のリュックの中で詳細は分からない。そんなことより、手が痛くて痛くて堪らない。

 行きと比べて、随分長く感じる道を歩いて、安全地帯に辿り着いた頃には、熱でも出たのか、どこかフラフラしていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『~始の書~』ではスライムの役割だった火傷。

『~続の書~』では、ワームが活躍です。

……内臓が飛び出してくるのは、結構気持ち悪いかもと思って、書いてみました。

上手く書けてるでしょうか?

それでは、また!
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