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プロローグ
扉
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扉の前に立った僕は、そこでしばらく思い悩む。部屋中を探していた時にも見てはいたが、この扉には、どう見ても大きな問題があると言わざるを得ない。それは……。
「ドアノブって、どこだ?」
その扉は、蔦が絡まりあった壁のような存在だった。いや、そもそも扉かどうかすら怪しいものだが、これ以外に、外に出る場所らしいものは見当たらない。
「ふぬぬぬっ、ぐぬーっ」
普通に押しても開かない。押してもダメなら引いてみろの原理で引いても同じ。もしや、スライドするタイプなのだろうかと思って左右に引っ張っても、びくともしない。どこを触っても、ドアノブらしきものはなく、全く開いてくれる様子はない。
「……これ、鍵がかかってるとか?」
そうだとするなら、説明がつく。こんなに必死になっても動かないというなら、そういうことだろう。もしくは……。
「これがフェイクで、扉は別にあるとか?」
考えられるのはきっとそのくらい。ただ、扉が別にあるという可能性は、できることならあってほしくない。壁から床まで叩いて探し回るのは、さすがに勘弁してほしいところだ。
「うーん、あっ、そういえば、さっきあの本に『ベッドを調べた』とか書いてあったよな」
そうすると、もしかしたら、『扉を調べた』という言葉が更新されているかもしれない。もし、更新されていたら、あれは扉で間違いないということになる。
善は急げとばかりに、僕は早速引き返し、『冒険の書』を見てみる。
『扉を調べた』
そこには、確かにその文言があった。
「よっし、これで、あれが扉なのは間違いないってことになるな。となると、鍵がかかってるのかぁ」
あの蔦が絡まった壁のような存在が扉であるならば、真っ当に考えて、鍵がかかっているということになるだろう。せっかく外に出られるかと思ったのに、監禁されているとなると辛い。
「はぁ……どうなるのかな、僕」
いきなり僕が消えて、きっと両親も琴音も心配していることだろう。
やることがなくなった途端に心を占めるのは、簡単に誘拐されてしまった自分自身への不甲斐なさだった。そうして、一から状況整理を始めることにする。
「まず、僕は誘拐された。そして、本物の甲冑と剣を装備させられ、変な機械みたいな本と一緒に閉じ込められてる。……うわっ、整理しても何が何だか分からないぞ、これ」
犯人の目的も、この場所の手がかりも、何一つ分かることがない。
「あぁ、後は、もしかしたら、彰の失踪にこの事件が関係してるかもしれないって……こと…………もしかして、僕も居なかったことになってたりして?」
彰の存在は、そもそもなかったこととして世界が動いていたことを思い出し、僕は焦る。もしそうなら、助けなんて期待できない。それだけではなく、僕を誘拐した犯人は、何か超常的な能力を持っている可能性が高い。
「……思った以上に、不味い状況かも?」
そう思ったら、じっとなんてしていられなかった。
扉らしきものに駆け寄り、僕はそこをドンドンと叩いて声を出す。
「おいっ、誰かっ! 誰か、ここを開けてくれっ! 誰かっ!」
しかし、どんなに叫んでも、返ってくるのは無音のみ。
「くそっ!」
あまりにも反応がないことに苛立った僕は、扉を蹴りつける。ただ、その瞬間、思っても見なかったことが起こる。
「え?」
蹴りつけ、少し扉を押し上げるような形になった瞬間、扉の下に、小さな隙間が空いたように見えたのだ。
「……もしかして……?」
僕は、腰を屈めてしゃがみこむと、扉の下の方の蔦を掴む。そして……。
「あっ……」
案外軽い手応えで、扉は上へとスライドしていく。そう、つまりは、この扉はシャッターのように上に持ち上げて開ける仕組みのものだったのだ。
「……普通、分かるわけないだろ」
簡単に開き、そして手を離すとその場で止まる扉を見て、僕は大いに脱力する。しかし、扉が開いたことは喜ばしいことだ。僕は、ゴクリと唾を飲み込むと、扉の先へ、一歩、踏み出したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
押してもダメなら引いてみろ。
引いてもダメならスライドだ。
左右でダメなら上下を試せっ。
って、どんなに分かりづらい扉なんだって話ですよね。
設定を作ったのは私ですが……。
そして、更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
昨日更新するはずが、どうにも話を進められず、延期してしまいました。
次はまた三日か四日後に更新しますので、よろしくお願いします。
それでは、また!
「ドアノブって、どこだ?」
その扉は、蔦が絡まりあった壁のような存在だった。いや、そもそも扉かどうかすら怪しいものだが、これ以外に、外に出る場所らしいものは見当たらない。
「ふぬぬぬっ、ぐぬーっ」
普通に押しても開かない。押してもダメなら引いてみろの原理で引いても同じ。もしや、スライドするタイプなのだろうかと思って左右に引っ張っても、びくともしない。どこを触っても、ドアノブらしきものはなく、全く開いてくれる様子はない。
「……これ、鍵がかかってるとか?」
そうだとするなら、説明がつく。こんなに必死になっても動かないというなら、そういうことだろう。もしくは……。
「これがフェイクで、扉は別にあるとか?」
考えられるのはきっとそのくらい。ただ、扉が別にあるという可能性は、できることならあってほしくない。壁から床まで叩いて探し回るのは、さすがに勘弁してほしいところだ。
「うーん、あっ、そういえば、さっきあの本に『ベッドを調べた』とか書いてあったよな」
そうすると、もしかしたら、『扉を調べた』という言葉が更新されているかもしれない。もし、更新されていたら、あれは扉で間違いないということになる。
善は急げとばかりに、僕は早速引き返し、『冒険の書』を見てみる。
『扉を調べた』
そこには、確かにその文言があった。
「よっし、これで、あれが扉なのは間違いないってことになるな。となると、鍵がかかってるのかぁ」
あの蔦が絡まった壁のような存在が扉であるならば、真っ当に考えて、鍵がかかっているということになるだろう。せっかく外に出られるかと思ったのに、監禁されているとなると辛い。
「はぁ……どうなるのかな、僕」
いきなり僕が消えて、きっと両親も琴音も心配していることだろう。
やることがなくなった途端に心を占めるのは、簡単に誘拐されてしまった自分自身への不甲斐なさだった。そうして、一から状況整理を始めることにする。
「まず、僕は誘拐された。そして、本物の甲冑と剣を装備させられ、変な機械みたいな本と一緒に閉じ込められてる。……うわっ、整理しても何が何だか分からないぞ、これ」
犯人の目的も、この場所の手がかりも、何一つ分かることがない。
「あぁ、後は、もしかしたら、彰の失踪にこの事件が関係してるかもしれないって……こと…………もしかして、僕も居なかったことになってたりして?」
彰の存在は、そもそもなかったこととして世界が動いていたことを思い出し、僕は焦る。もしそうなら、助けなんて期待できない。それだけではなく、僕を誘拐した犯人は、何か超常的な能力を持っている可能性が高い。
「……思った以上に、不味い状況かも?」
そう思ったら、じっとなんてしていられなかった。
扉らしきものに駆け寄り、僕はそこをドンドンと叩いて声を出す。
「おいっ、誰かっ! 誰か、ここを開けてくれっ! 誰かっ!」
しかし、どんなに叫んでも、返ってくるのは無音のみ。
「くそっ!」
あまりにも反応がないことに苛立った僕は、扉を蹴りつける。ただ、その瞬間、思っても見なかったことが起こる。
「え?」
蹴りつけ、少し扉を押し上げるような形になった瞬間、扉の下に、小さな隙間が空いたように見えたのだ。
「……もしかして……?」
僕は、腰を屈めてしゃがみこむと、扉の下の方の蔦を掴む。そして……。
「あっ……」
案外軽い手応えで、扉は上へとスライドしていく。そう、つまりは、この扉はシャッターのように上に持ち上げて開ける仕組みのものだったのだ。
「……普通、分かるわけないだろ」
簡単に開き、そして手を離すとその場で止まる扉を見て、僕は大いに脱力する。しかし、扉が開いたことは喜ばしいことだ。僕は、ゴクリと唾を飲み込むと、扉の先へ、一歩、踏み出したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
押してもダメなら引いてみろ。
引いてもダメならスライドだ。
左右でダメなら上下を試せっ。
って、どんなに分かりづらい扉なんだって話ですよね。
設定を作ったのは私ですが……。
そして、更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
昨日更新するはずが、どうにも話を進められず、延期してしまいました。
次はまた三日か四日後に更新しますので、よろしくお願いします。
それでは、また!
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