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第三章 少女期 女神編
第四百六話 残された方法
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イルト様とルクレチアを救うための方法は、中々見つからなかった。
魂にその魔法なりなんなりが仕込まれているせいで、肉体と魂を分離させたところで解決はしない。その仕込みそのものを分離させるのはあまりにも危険過ぎる。かといって、それを上書きできるほどの力を扱うことは誰にもできない、となると、残された方法はほとんどなかった。
「じゃあ、創世神様、実験の時間です」
「ほ、本当に、ワシじゃなければダメなのか? 他の神でも、問題はないと思うんじゃが……?」
「一番分かりやすいのが創世神様なんです。と、いうわけで、行ってきてください」
「う、うむ……?」
実験内容は至って簡単。ズバリ、異世界に転移する、ということだ。イルト様やルクレチアに埋め込まれた命令式は、あくまでもこの世界の理の範疇でしか発現しないもの。となれば、もしかしたら、全く理の違う場所に行けば、その命令式を無効化することができるかもしれない。そして、それを確認するのに、この世界の理を良く知る創世神様こそが適任と言えた。それに、創世神様がこの世界を離れることで何か影響が出るのであれば、それは、イルト様やルクレチアにも同じことが言えるかもしれない。危険がないとは言わないものの、それなりに大切な実験であることに間違いはなかった。
「ならば、早めに戻ってくるとしようぞ。でなければ、危険じゃろうからのぉ」
しっかりと創世神様でなければならない理由を説明すれば、納得した様子で、すんなりと協力してくれるという言質をいただく。
「では、これと、これ、あと、こっちも持っていってください。使い方はこちらにあるので、今、ささっと読んで、理解してください」
「う、うむ」
創世神様に渡したのは、異世界の観測のために必要な道具の数々。イルト様が生きて行くのに問題があるような場所には、さすがに連れていけない。神力の濃度だとか、別のエネルギー物質だとか、そういったものをある程度は観測できる装置の数々と、イルト様人形がたくさん入った袋を一つ、後は、創世神様が直接その世界に行って感じたことを全て、勝手に記録してくれる装置を持たせれば、恐らくは、何も問題ないはずだった。
「……随分と、精巧に作られておるな。……一つ、もらえ「ダメです」……うむ、分かったのじゃ」
イルト様人形は、イルト様の身体状態が、その環境においてどう変化するのかを擬似的に表してくれる人形だ。長期的な観測は不可能でも、すぐに影響が出る世界ならばそれを袋から取り出して、背中のボタンを押すだけで観測可能だ。もちろん、神として覚醒したイルト様に合わせているので、そうそう影響が出ることはないと思うものの、一応、念には念を、だ。
イルト様人形がほしかったらしい創世神様を一蹴してから、いくつか候補に上がっている世界へ旅立ってもらうこととする。
「では、お願いします」
「うむ」
次元の穴を容易く開けた創世神様は、私達が見送る中、その中へと入っていったのだった。
魂にその魔法なりなんなりが仕込まれているせいで、肉体と魂を分離させたところで解決はしない。その仕込みそのものを分離させるのはあまりにも危険過ぎる。かといって、それを上書きできるほどの力を扱うことは誰にもできない、となると、残された方法はほとんどなかった。
「じゃあ、創世神様、実験の時間です」
「ほ、本当に、ワシじゃなければダメなのか? 他の神でも、問題はないと思うんじゃが……?」
「一番分かりやすいのが創世神様なんです。と、いうわけで、行ってきてください」
「う、うむ……?」
実験内容は至って簡単。ズバリ、異世界に転移する、ということだ。イルト様やルクレチアに埋め込まれた命令式は、あくまでもこの世界の理の範疇でしか発現しないもの。となれば、もしかしたら、全く理の違う場所に行けば、その命令式を無効化することができるかもしれない。そして、それを確認するのに、この世界の理を良く知る創世神様こそが適任と言えた。それに、創世神様がこの世界を離れることで何か影響が出るのであれば、それは、イルト様やルクレチアにも同じことが言えるかもしれない。危険がないとは言わないものの、それなりに大切な実験であることに間違いはなかった。
「ならば、早めに戻ってくるとしようぞ。でなければ、危険じゃろうからのぉ」
しっかりと創世神様でなければならない理由を説明すれば、納得した様子で、すんなりと協力してくれるという言質をいただく。
「では、これと、これ、あと、こっちも持っていってください。使い方はこちらにあるので、今、ささっと読んで、理解してください」
「う、うむ」
創世神様に渡したのは、異世界の観測のために必要な道具の数々。イルト様が生きて行くのに問題があるような場所には、さすがに連れていけない。神力の濃度だとか、別のエネルギー物質だとか、そういったものをある程度は観測できる装置の数々と、イルト様人形がたくさん入った袋を一つ、後は、創世神様が直接その世界に行って感じたことを全て、勝手に記録してくれる装置を持たせれば、恐らくは、何も問題ないはずだった。
「……随分と、精巧に作られておるな。……一つ、もらえ「ダメです」……うむ、分かったのじゃ」
イルト様人形は、イルト様の身体状態が、その環境においてどう変化するのかを擬似的に表してくれる人形だ。長期的な観測は不可能でも、すぐに影響が出る世界ならばそれを袋から取り出して、背中のボタンを押すだけで観測可能だ。もちろん、神として覚醒したイルト様に合わせているので、そうそう影響が出ることはないと思うものの、一応、念には念を、だ。
イルト様人形がほしかったらしい創世神様を一蹴してから、いくつか候補に上がっている世界へ旅立ってもらうこととする。
「では、お願いします」
「うむ」
次元の穴を容易く開けた創世神様は、私達が見送る中、その中へと入っていったのだった。
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