悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第四百三話 手っ取り早い方法(鋼視点)

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 邪神をあらかた片付けたところで、ネシスと合流したぼくは、あの女神、ジュリエナが居ないことに気づいて、尋ねてみる。


「ネシス、さっきの女神は?」

「……ん……問題、ない…………と、思う……」


 女神のことを尋ねた途端、今思い出したとばかりに自分の影に片手を突っ込んで、ジュリエナを引きずり出す。


「……影、入れた?」

「ん……」


 闇人の影の中は、恐怖で満ちている、というのが通説であり、実際、闇人の影に引きずり込まれた者は、出てこれたとしても、ずっと怯え続けることとなる。その影の中で、何が起こったのかは誰にも分からないと言われてはいるものの、もちろん、神であるぼくは、ちゃんとユミリアに教えてもらったので、知っている。


(確か、闇人の影の中は真っ暗で、恐怖を一秒ごとに倍加させる効果があるって言ってたから……)

「影の中、お化け屋敷っ!」

「ん……んん?」


 きっと、そんな場所なのだろうと結論づけると、ネシスは少し首をかしげたものの、特に否定することもなかった。


「…………一応、生きてる。……神、だから……あまり、効かない……」

「そっか! なら、大丈夫っ!」


 ネシスが言いたいのは、神だから、闇人としての能力はそこまで発揮されていないということで、だからこそ、ジュリエナはそこまで恐怖を味わってはいないということだ。影から出されて、自分の体を両腕で抱きしめながらブルブルと震える彼女も、きっと、しばらくすれば復活するのだろう。


「コウ…………それ、生きて、る?」

「うん? えっと……どうしよう、カチカチなった……」


 ネシスに指摘されて、ぼくは、ロメロを背中に乗せていたことを思い出して、上手く氷を操って降ろしてみたのだが、下半身だけでなく、全身が凍りついたロメロの姿があった。きっと、戦っている間に、無意識に凍らせてしまったのだろう。


「溶かす……?」

「うーん、でも、このままの方が静かっ」


 ネシスによって影に落とされたジュリエナと、ぼくの背中で凍りついたロメロ。二人は、先程までの砂を吐きそうな言葉を一言たりとも発することなく沈黙している。そして、神であるがゆえに、この程度で死ぬことはない。
 ネシスと視線を交わすのは一瞬。それだけで、ぼく達の意見が同じだということを理解して、ぼくもネシスも、無言のまま、二人を元の位置に戻す。


「邪神討伐、急ごう!」

「ん……」


 何者にも煩わされることなく討伐に集中するためには必要な犠牲なのだ。もちろん、安全な場所が見つかれば、二人を託せる誰かが居れば、二人を解放することに迷いなどない。
 その後、変態の神やら、ピンクの神、花畑の神などなどの問題神もんだいしん達と遭遇しては同じ対応を繰り返して……最終的に、医療の神を救出して彼に託せるようになるまで、彼らは沈黙を続けるのだった。
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