404 / 412
第三章 少女期 女神編
第四百三話 手っ取り早い方法(鋼視点)
しおりを挟む
邪神をあらかた片付けたところで、ネシスと合流したぼくは、あの女神、ジュリエナが居ないことに気づいて、尋ねてみる。
「ネシス、さっきの女神は?」
「……ん……問題、ない…………と、思う……」
女神のことを尋ねた途端、今思い出したとばかりに自分の影に片手を突っ込んで、ジュリエナを引きずり出す。
「……影、入れた?」
「ん……」
闇人の影の中は、恐怖で満ちている、というのが通説であり、実際、闇人の影に引きずり込まれた者は、出てこれたとしても、ずっと怯え続けることとなる。その影の中で、何が起こったのかは誰にも分からないと言われてはいるものの、もちろん、神であるぼくは、ちゃんとユミリアに教えてもらったので、知っている。
(確か、闇人の影の中は真っ暗で、恐怖を一秒ごとに倍加させる効果があるって言ってたから……)
「影の中、お化け屋敷っ!」
「ん……んん?」
きっと、そんな場所なのだろうと結論づけると、ネシスは少し首をかしげたものの、特に否定することもなかった。
「…………一応、生きてる。……神、だから……あまり、効かない……」
「そっか! なら、大丈夫っ!」
ネシスが言いたいのは、神だから、闇人としての能力はそこまで発揮されていないということで、だからこそ、ジュリエナはそこまで恐怖を味わってはいないということだ。影から出されて、自分の体を両腕で抱きしめながらブルブルと震える彼女も、きっと、しばらくすれば復活するのだろう。
「コウ…………それ、生きて、る?」
「うん? えっと……どうしよう、カチカチなった……」
ネシスに指摘されて、ぼくは、ロメロを背中に乗せていたことを思い出して、上手く氷を操って降ろしてみたのだが、下半身だけでなく、全身が凍りついたロメロの姿があった。きっと、戦っている間に、無意識に凍らせてしまったのだろう。
「溶かす……?」
「うーん、でも、このままの方が静かっ」
ネシスによって影に落とされたジュリエナと、ぼくの背中で凍りついたロメロ。二人は、先程までの砂を吐きそうな言葉を一言たりとも発することなく沈黙している。そして、神であるがゆえに、この程度で死ぬことはない。
ネシスと視線を交わすのは一瞬。それだけで、ぼく達の意見が同じだということを理解して、ぼくもネシスも、無言のまま、二人を元の位置に戻す。
「邪神討伐、急ごう!」
「ん……」
何者にも煩わされることなく討伐に集中するためには必要な犠牲なのだ。もちろん、安全な場所が見つかれば、二人を託せる誰かが居れば、二人を解放することに迷いなどない。
その後、変態の神やら、ピンクの神、花畑の神などなどの問題神達と遭遇しては同じ対応を繰り返して……最終的に、医療の神を救出して彼に託せるようになるまで、彼らは沈黙を続けるのだった。
「ネシス、さっきの女神は?」
「……ん……問題、ない…………と、思う……」
女神のことを尋ねた途端、今思い出したとばかりに自分の影に片手を突っ込んで、ジュリエナを引きずり出す。
「……影、入れた?」
「ん……」
闇人の影の中は、恐怖で満ちている、というのが通説であり、実際、闇人の影に引きずり込まれた者は、出てこれたとしても、ずっと怯え続けることとなる。その影の中で、何が起こったのかは誰にも分からないと言われてはいるものの、もちろん、神であるぼくは、ちゃんとユミリアに教えてもらったので、知っている。
(確か、闇人の影の中は真っ暗で、恐怖を一秒ごとに倍加させる効果があるって言ってたから……)
「影の中、お化け屋敷っ!」
「ん……んん?」
きっと、そんな場所なのだろうと結論づけると、ネシスは少し首をかしげたものの、特に否定することもなかった。
「…………一応、生きてる。……神、だから……あまり、効かない……」
「そっか! なら、大丈夫っ!」
ネシスが言いたいのは、神だから、闇人としての能力はそこまで発揮されていないということで、だからこそ、ジュリエナはそこまで恐怖を味わってはいないということだ。影から出されて、自分の体を両腕で抱きしめながらブルブルと震える彼女も、きっと、しばらくすれば復活するのだろう。
「コウ…………それ、生きて、る?」
「うん? えっと……どうしよう、カチカチなった……」
ネシスに指摘されて、ぼくは、ロメロを背中に乗せていたことを思い出して、上手く氷を操って降ろしてみたのだが、下半身だけでなく、全身が凍りついたロメロの姿があった。きっと、戦っている間に、無意識に凍らせてしまったのだろう。
「溶かす……?」
「うーん、でも、このままの方が静かっ」
ネシスによって影に落とされたジュリエナと、ぼくの背中で凍りついたロメロ。二人は、先程までの砂を吐きそうな言葉を一言たりとも発することなく沈黙している。そして、神であるがゆえに、この程度で死ぬことはない。
ネシスと視線を交わすのは一瞬。それだけで、ぼく達の意見が同じだということを理解して、ぼくもネシスも、無言のまま、二人を元の位置に戻す。
「邪神討伐、急ごう!」
「ん……」
何者にも煩わされることなく討伐に集中するためには必要な犠牲なのだ。もちろん、安全な場所が見つかれば、二人を託せる誰かが居れば、二人を解放することに迷いなどない。
その後、変態の神やら、ピンクの神、花畑の神などなどの問題神達と遭遇しては同じ対応を繰り返して……最終的に、医療の神を救出して彼に託せるようになるまで、彼らは沈黙を続けるのだった。
11
お気に入りに追加
5,677
あなたにおすすめの小説
異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜
くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。
いや、ちょっと待て。ここはどこ?
私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。
マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。
私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ!
だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの!
前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる