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第三章 少女期 女神編
第三百九十七話 イリアスとルクレチア2
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罪人は、イリアスに感情を植えつけることで、神界を思いのままにすることを夢想し、ルクレチアは、そんな罪人の役に立てることを喜んだ。ただし、相手は感情を持たないイリアス。罪人達の邪な感情や歪な感情に触れ続けてきたイリアス。それが起こったのは、きっと、必然だった。
「ルクレチアがイリアスに感情を与えた途端、イリアスは、罪人を断罪してしもうた。しかも、その魂を消滅させる形での」
イリアスは、何一つ間違ったことはしていない。ただただ、自分の片割れの側に、邪な感情を抱く罪人が居たことで、初めて危機感というものを覚えただけ。ただ、ルクレチアを守りたかっただけ。それだけのことだった。
「罪人の処罰は、妥当なものじゃった。何せ、そやつはルクレチアが様々なものを与えることができると知って、本来は持つはずのない神格を宿しておったからのぉ。じゃが、その時に、ルクレチアがそれを理解するほどの余裕があったかと問われれば、ない、としか答えられん。元々、その罪人は詐欺師で、少しばかり地獄に落ちて、魂を浄化すればまた生まれ変われるはずじゃったが、ルクレチアの行いによって、消滅したと言えよう」
「……今の、彼女は、それを理解しているんですか?」
ルクレチアが、罪人へ想いを寄せなければ。いや、ルクレチアが、罪人のためにと力を使わなければ、その悲劇は起きなかったはずだ。しかし、きっと、感情を持ち始めたばかりのルクレチアにそれを判断させるのは無理だったのだろう。
問題は、今、彼女がどういった状態にあるのか、ということだった。
「うむ……ワシも、詳しくは知らんが、恐らく、心のどこかで理解はしたんじゃろうのぉ」
罪人が消滅する瞬間を目撃したルクレチアは、あっさりと邪神に堕ちて、イリアスを攻撃したらしい。それにイリアスが戸惑っているうちに、イリアス自身、大怪我を負う。イリアスは、力を振り絞ってその場から逃れ、後には、怒りに我を忘れたルクレチアだけが残っていたらしい。
「その大怪我を負ったイリアスを見つけたのが、ユレイラじゃったんじゃよ」
「そう、ですか……」
双子の片割れに、わけも分からないまま攻撃され、傷ついたイリアスは、きっと、感情を得たばかりということもあって、その出来事があまりにもつらいものとして認識してしまったのだろう。だから、記憶を失い。自身がどんな神だったのかも忘れてしまった。
「ルクレチアは、素直な子じゃ。そして、頭も良い。冷静になれば、イリアスがどうしてあやつを消滅させたのか分かったのじゃろう」
それでも、理性と感情は別物だ。どんなに正当性のあるものでも、嫌だと拒絶することはある。
「ワシが知る二人は、そんな感じかのぉ」
そう締め括る創世神様に、私は、なぜか大切なことを言わないままの創世神様へ問いかける。
「創世神様、イリアスとルクレチアの家族は、どこに居るんですか?」
生まれてすぐに感情を奪われた二柱の神。それを是とした親は、いったい何を考えていたのか。そこら辺も、知りたいと思っての問いかけ。ただし、どうやら言いにくいことらしく、創世神様は珍しく口籠る。
「う、うむ」
「創世神様?」
その後、しぶとく聞いてみれば、創世神様は、ようやく答えを告げてくれた。
「ルクレチアがイリアスに感情を与えた途端、イリアスは、罪人を断罪してしもうた。しかも、その魂を消滅させる形での」
イリアスは、何一つ間違ったことはしていない。ただただ、自分の片割れの側に、邪な感情を抱く罪人が居たことで、初めて危機感というものを覚えただけ。ただ、ルクレチアを守りたかっただけ。それだけのことだった。
「罪人の処罰は、妥当なものじゃった。何せ、そやつはルクレチアが様々なものを与えることができると知って、本来は持つはずのない神格を宿しておったからのぉ。じゃが、その時に、ルクレチアがそれを理解するほどの余裕があったかと問われれば、ない、としか答えられん。元々、その罪人は詐欺師で、少しばかり地獄に落ちて、魂を浄化すればまた生まれ変われるはずじゃったが、ルクレチアの行いによって、消滅したと言えよう」
「……今の、彼女は、それを理解しているんですか?」
ルクレチアが、罪人へ想いを寄せなければ。いや、ルクレチアが、罪人のためにと力を使わなければ、その悲劇は起きなかったはずだ。しかし、きっと、感情を持ち始めたばかりのルクレチアにそれを判断させるのは無理だったのだろう。
問題は、今、彼女がどういった状態にあるのか、ということだった。
「うむ……ワシも、詳しくは知らんが、恐らく、心のどこかで理解はしたんじゃろうのぉ」
罪人が消滅する瞬間を目撃したルクレチアは、あっさりと邪神に堕ちて、イリアスを攻撃したらしい。それにイリアスが戸惑っているうちに、イリアス自身、大怪我を負う。イリアスは、力を振り絞ってその場から逃れ、後には、怒りに我を忘れたルクレチアだけが残っていたらしい。
「その大怪我を負ったイリアスを見つけたのが、ユレイラじゃったんじゃよ」
「そう、ですか……」
双子の片割れに、わけも分からないまま攻撃され、傷ついたイリアスは、きっと、感情を得たばかりということもあって、その出来事があまりにもつらいものとして認識してしまったのだろう。だから、記憶を失い。自身がどんな神だったのかも忘れてしまった。
「ルクレチアは、素直な子じゃ。そして、頭も良い。冷静になれば、イリアスがどうしてあやつを消滅させたのか分かったのじゃろう」
それでも、理性と感情は別物だ。どんなに正当性のあるものでも、嫌だと拒絶することはある。
「ワシが知る二人は、そんな感じかのぉ」
そう締め括る創世神様に、私は、なぜか大切なことを言わないままの創世神様へ問いかける。
「創世神様、イリアスとルクレチアの家族は、どこに居るんですか?」
生まれてすぐに感情を奪われた二柱の神。それを是とした親は、いったい何を考えていたのか。そこら辺も、知りたいと思っての問いかけ。ただし、どうやら言いにくいことらしく、創世神様は珍しく口籠る。
「う、うむ」
「創世神様?」
その後、しぶとく聞いてみれば、創世神様は、ようやく答えを告げてくれた。
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