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第三章 少女期 女神編
第三百九十五話 堕ちかけて
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イルト様を殺さなければ、世界が滅びる。そんな馬鹿げた話は、どうやら事実らしく、創世神様は申し訳なさそうに私を見る。
「そ、んな……そんなの、嘘、です……」
もしかしたら、創世神様が思い違いをしているのかもしれない。もしかしたら、創世神様自身が私達を陥れようとしているのかもしれない。
創世神様の言葉を否定するために出てくるのは、そんな酷い考えばかり。
(もしかしたら、創世神様こそが、破壊装置かもしれない)
そうであるのなら、創世神様はとんだ悪神だ。早く、倒さなければならない。
昏く淀んだ感情が、次第に私の中で膨れ上がる。
(イルト様を殺そうとする者は、イラナイ)
イルト様を害するのであれば、私は、どんな敵とでも戦う。それがたとえ創「お姉様っ! きっと、何か方法はありますっ。ですから、ちゃんと考えましょう! ねっ! ほらっ、落ち着いてっ!!」
私の堕ちかけた心は、抱きついてきたミーシャによって、現実へと引き戻される。
「ミーシャ……」
「お姉様、まだ、私達は少ない情報しか持っていませんっ! それなのに、大きな決断を下すのは危ないですよ?」
ミーシャではあるが、その姿は、昔のマリフィーの姿のまま。ふわふわの金髪に、青い瞳を持つマリフィーは、昔と同じ姿のはずなのに、少しだけ、大人びて見える。
「ユミリア、僕達は、たとえ創世神様に無理だと言われても、諦めるつもりはないよ? ねぇ、ユミリアもそうじゃないの?」
「セイ……」
セイとセルティスは、ほとんど同じ姿。変わったのは、背中にある羽が鳥類から昆虫類のものになったことくらい。そんなセイは、昔よりもずっと近い距離で、私の意思を確認してくる。
「ユミリア、試せることは試すべきっ! ユミリア、色んな道具、作れるっ!」
「鋼……」
鋼は、コルトの時と違って、完全に獣の姿しかとれない。コルトであれば、多少の獣の部分は残れど、一応人型で行動していたのだが、今の方が、昔よりも私のことをよく理解してくれている。獣の姿だからこそ、気兼ねなく私の側で、私の物作りを観察してきたのだから。
「ぼく……ユミリアが、イルト様……諦めるの、ダメ……と思う……」
「ネシス……」
今も昔も姿の変わらないネシス。今は、まだ再会して間もないが、それでも、昔以上に必死に自分の意思を伝えようとするネシスの姿は、とても、嬉しい。
「全く、ヒヤヒヤしたぞ? 創世神様の言葉がショックだったのは分かるけどなぁ? ユレイラは、妙な薬やら道具やらを作るのが得意だろ? 今度も、それで何とかしてみせろよっ。ユレイラなら、最愛を諦めるんじゃないよっ」
「リリアナ様……」
マリフィーの姉である彼女は、ユレイラにとって先輩でもある。もちろん、この世界の女神であるアリアナ様だって大切な先輩だったが、リリアナ様のあけすけな言葉には、ずっと、助けられてきた。
「うむ……ワシとしては、自分が動けん以上、お主らに世界の命運を託すことしかできん。じゃからの? いくらでも、必要なことは教えよう。そして、全ての責任はワシにあるから、思う存分動くがよいぞ」
「創世神様……」
きっと、創世神様だって、イルト様を見捨てたくはないはずだ。ユレイラであった頃、創世神様はイリアスを可愛がっていたのだから。
道筋は、全く見えない。世界を守るために消滅させなければならないのは、イルト様の魂なのだから、簡単な解決策なんてあり得ない。しかし、ここに居るメンバーは、誰一人として、イルト様を助けることに否を唱えることはなかった。
周りで見守っていたレインボードラゴン達も、全面的に私に協力すると宣言してくれる。
「……私、何がなんでもイルト様を助けるから、力を貸して」
「うむうむ」
「はいっ!」
「もちろん」
「うんっ」
「んっ」
「当然だ」
「我らにも、何なりと!」
諦めるなんて、冗談じゃない。何がなんでも、イルト様を救って、世界を守ってみせる。そう決断した私は、早速、創世神様から情報を引き出していくのだった。
「そ、んな……そんなの、嘘、です……」
もしかしたら、創世神様が思い違いをしているのかもしれない。もしかしたら、創世神様自身が私達を陥れようとしているのかもしれない。
創世神様の言葉を否定するために出てくるのは、そんな酷い考えばかり。
(もしかしたら、創世神様こそが、破壊装置かもしれない)
そうであるのなら、創世神様はとんだ悪神だ。早く、倒さなければならない。
昏く淀んだ感情が、次第に私の中で膨れ上がる。
(イルト様を殺そうとする者は、イラナイ)
イルト様を害するのであれば、私は、どんな敵とでも戦う。それがたとえ創「お姉様っ! きっと、何か方法はありますっ。ですから、ちゃんと考えましょう! ねっ! ほらっ、落ち着いてっ!!」
私の堕ちかけた心は、抱きついてきたミーシャによって、現実へと引き戻される。
「ミーシャ……」
「お姉様、まだ、私達は少ない情報しか持っていませんっ! それなのに、大きな決断を下すのは危ないですよ?」
ミーシャではあるが、その姿は、昔のマリフィーの姿のまま。ふわふわの金髪に、青い瞳を持つマリフィーは、昔と同じ姿のはずなのに、少しだけ、大人びて見える。
「ユミリア、僕達は、たとえ創世神様に無理だと言われても、諦めるつもりはないよ? ねぇ、ユミリアもそうじゃないの?」
「セイ……」
セイとセルティスは、ほとんど同じ姿。変わったのは、背中にある羽が鳥類から昆虫類のものになったことくらい。そんなセイは、昔よりもずっと近い距離で、私の意思を確認してくる。
「ユミリア、試せることは試すべきっ! ユミリア、色んな道具、作れるっ!」
「鋼……」
鋼は、コルトの時と違って、完全に獣の姿しかとれない。コルトであれば、多少の獣の部分は残れど、一応人型で行動していたのだが、今の方が、昔よりも私のことをよく理解してくれている。獣の姿だからこそ、気兼ねなく私の側で、私の物作りを観察してきたのだから。
「ぼく……ユミリアが、イルト様……諦めるの、ダメ……と思う……」
「ネシス……」
今も昔も姿の変わらないネシス。今は、まだ再会して間もないが、それでも、昔以上に必死に自分の意思を伝えようとするネシスの姿は、とても、嬉しい。
「全く、ヒヤヒヤしたぞ? 創世神様の言葉がショックだったのは分かるけどなぁ? ユレイラは、妙な薬やら道具やらを作るのが得意だろ? 今度も、それで何とかしてみせろよっ。ユレイラなら、最愛を諦めるんじゃないよっ」
「リリアナ様……」
マリフィーの姉である彼女は、ユレイラにとって先輩でもある。もちろん、この世界の女神であるアリアナ様だって大切な先輩だったが、リリアナ様のあけすけな言葉には、ずっと、助けられてきた。
「うむ……ワシとしては、自分が動けん以上、お主らに世界の命運を託すことしかできん。じゃからの? いくらでも、必要なことは教えよう。そして、全ての責任はワシにあるから、思う存分動くがよいぞ」
「創世神様……」
きっと、創世神様だって、イルト様を見捨てたくはないはずだ。ユレイラであった頃、創世神様はイリアスを可愛がっていたのだから。
道筋は、全く見えない。世界を守るために消滅させなければならないのは、イルト様の魂なのだから、簡単な解決策なんてあり得ない。しかし、ここに居るメンバーは、誰一人として、イルト様を助けることに否を唱えることはなかった。
周りで見守っていたレインボードラゴン達も、全面的に私に協力すると宣言してくれる。
「……私、何がなんでもイルト様を助けるから、力を貸して」
「うむうむ」
「はいっ!」
「もちろん」
「うんっ」
「んっ」
「当然だ」
「我らにも、何なりと!」
諦めるなんて、冗談じゃない。何がなんでも、イルト様を救って、世界を守ってみせる。そう決断した私は、早速、創世神様から情報を引き出していくのだった。
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