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第三章 少女期 女神編
第三百八十七話 審判の神
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光が降り注ぐ中、必死に目を凝らせば、今、まさに殺されそうになっているマリフィーを見つける。
「キューちゃん!!」
このままでは間に合わないと判断した私は、罠に使えそうだと思って取っておいたソレを使う。
ブレスレットくらいの輪の大きさを持つ白を基調として、グルグルと緑の線が表と裏を巡るリング。それを、マリフィーに向けてかざせば、一瞬にして、マリフィーの姿はかき消える。……いや、マリフィーは、一瞬にして、翳したリングに囚われていた。ベットリとした白い餅のようなもので背中一面を覆われて、リングから鎖とともに発射されたクッション効果の高いマットに縫い付けられて。
「今のは何ぞっ!?」
私の肩に乗っていたチビの問いかけに、私はこの作品への思い入れを話そうとして……すぐに、凄まじい殺気を感じて、そちらへ集中する。
「リリアナ様。……なるほど、あの邪神は、何らかの方法で、神々を操れる、ということですか?」
殺気の主は、虚ろな目をして立つリリアナ様ではなく、その背後に居た邪神。その殺気が、なぜかイルト様に向いているのが気になるものの、とりあえず、六男の姿も見つけたので、予備の『キューちゃん』で一緒にこちらへ引き寄せておく。どちらも意識がないようなので、できることなら、早く安全な場所で休ませてあげたいところだ。
「ルク……」
苦しそうな声で、誰かの名前を呼ぶイルト様。
(アレは、敵。イルト様を、苦しめる敵)
その声を聞くだけで、私は、その判断を下した。しかし、それでも不用意に飛び出したりはしない。あの邪神が、ただの下っ端であるはずがないと理解できるくらいには、その強さを感知できていた。
「イリアス。憎い、憎い、断罪の神っ」
重厚な、それでいて、二重に聞こえる男の声。この世の全ての憎しみを持ったかのようなそれに、イルト様がかすかに動揺したのが感じ取れる。チラリとセイ達にも視線を向けたものの、どうやら、あの邪神のことは誰も知らないらしい。
「イルト様、アレは?」
単刀直入に、イルト様に聞く方が早いとばかりに尋ねれば、イルト様は、少しの沈黙の後に答えてくれる。『彼は、審判の神だ』と。
審判の神の役割は、断罪の神とは違い、世界が滅ぶ瞬間に、多くの魂をそれぞれのカテゴリーに振り分ける役目を持つ神で、人々が『天国』や『地獄』などと呼ぶ場所への振り分けも行っていたらしい。ただし、とあるきっかけで、かの神は心を闇に飲まれ、邪神となり、役目を放棄した。だからこそ……。
「僕は、アイツを止めなきゃならない」
悲壮な決意を浮かべたイルト様は、そのまま、戦いに身を投じた。
「キューちゃん!!」
このままでは間に合わないと判断した私は、罠に使えそうだと思って取っておいたソレを使う。
ブレスレットくらいの輪の大きさを持つ白を基調として、グルグルと緑の線が表と裏を巡るリング。それを、マリフィーに向けてかざせば、一瞬にして、マリフィーの姿はかき消える。……いや、マリフィーは、一瞬にして、翳したリングに囚われていた。ベットリとした白い餅のようなもので背中一面を覆われて、リングから鎖とともに発射されたクッション効果の高いマットに縫い付けられて。
「今のは何ぞっ!?」
私の肩に乗っていたチビの問いかけに、私はこの作品への思い入れを話そうとして……すぐに、凄まじい殺気を感じて、そちらへ集中する。
「リリアナ様。……なるほど、あの邪神は、何らかの方法で、神々を操れる、ということですか?」
殺気の主は、虚ろな目をして立つリリアナ様ではなく、その背後に居た邪神。その殺気が、なぜかイルト様に向いているのが気になるものの、とりあえず、六男の姿も見つけたので、予備の『キューちゃん』で一緒にこちらへ引き寄せておく。どちらも意識がないようなので、できることなら、早く安全な場所で休ませてあげたいところだ。
「ルク……」
苦しそうな声で、誰かの名前を呼ぶイルト様。
(アレは、敵。イルト様を、苦しめる敵)
その声を聞くだけで、私は、その判断を下した。しかし、それでも不用意に飛び出したりはしない。あの邪神が、ただの下っ端であるはずがないと理解できるくらいには、その強さを感知できていた。
「イリアス。憎い、憎い、断罪の神っ」
重厚な、それでいて、二重に聞こえる男の声。この世の全ての憎しみを持ったかのようなそれに、イルト様がかすかに動揺したのが感じ取れる。チラリとセイ達にも視線を向けたものの、どうやら、あの邪神のことは誰も知らないらしい。
「イルト様、アレは?」
単刀直入に、イルト様に聞く方が早いとばかりに尋ねれば、イルト様は、少しの沈黙の後に答えてくれる。『彼は、審判の神だ』と。
審判の神の役割は、断罪の神とは違い、世界が滅ぶ瞬間に、多くの魂をそれぞれのカテゴリーに振り分ける役目を持つ神で、人々が『天国』や『地獄』などと呼ぶ場所への振り分けも行っていたらしい。ただし、とあるきっかけで、かの神は心を闇に飲まれ、邪神となり、役目を放棄した。だからこそ……。
「僕は、アイツを止めなきゃならない」
悲壮な決意を浮かべたイルト様は、そのまま、戦いに身を投じた。
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