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第三章 少女期 女神編
第三百八十一話 不愉快な策
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笑顔を浮かべるイルト様。しかし、それはどこか辛そうで……私は、本当かどうかも分からないと言われている、断罪の神の噂を思い出していた。
断罪の神は、常に冷静でなければならない。常に平等でなければならない。故に、感情を持ってはならない。初めて力を行使する時をきっかけに、感情の封印が施される。
嘘か本当かは分からない。ただ、そこそこ有名なその噂を思い出し、イルト様を見つめると、それがあながち嘘ではないような気がしてならない。
「イルト様が、無理に力を使う必要はありません。ここには、イルト様以外に四人も神が居るんですよ? 三人寄れば文殊の知恵と言いますが、レインボードラゴン達を含めれば十一の知恵が集まるんです。それなら、きっと何とでもなりますよ」
噂のことを知らないレインボードラゴン達は、不思議そうな顔をしていたものの、基本的に私を信頼してくれているため、何も言わない。セイ達は、恐らく、噂を知っているのだろう。じっと黙ったまま、イルト様の様子を見つめていた。
「ユミリア、でも、時間が「そうとなれば、考えますよっ! ほら、イルト様も考えてっ」う、うん……」
時間がないのは百も承知だ。しかし、それで焦るよりは、さっさと意見を出し合った方が良いに決まっている。
「今の時点で、イルト殿下が問題なく使える力って何があるの?」
「そうだな……単純に闇と光の力を操ることは可能だ。一般的に、高位の闇の神、光の神ができることは、僕もできる。あとは、相手にどんな罪があるのかを見る魔眼と、罪の意識を増幅させる力までだね」
やはり、断罪の力は問題があるらしい。ただ、イルト様の力の内容を聞いても、私達には上手い解決策が見当たらない。時間だけが過ぎれば、当然、焦りの色も濃くなる。
「あーっもうっ! あの邪神を囮とかに使えないかっ! そのくらいしか浮かばないぞっ!!」
こうした場で、一番堪え性のないのは、レインボードラゴンのチビだった。ただ、その意見は、一度出たものの、囮にしたところで、この空間ではまとめて移動させられることもあるから意味がないとのことで落ち着いた。だから、私はチビを宥めようとして……その手を、止める。
「……イルト様、罪の意識の増幅って、どんな神にも有効ですか?」
「? もちろん。普通の神だろうが、邪神だろうが、罪の意識を増幅させて、頭を打ちつけるくらいに謝罪させることは可能だよ。もちろん、その素養がない者に関してはその方法は取れないが、基本的に、神には必ず罪悪感を抱く感情を植えつけられているから、何も問題はないけど……?」
「イルト様。とっても、とーっても不本意で、不愉快で、不快で、破壊衝動が込み上げてくるというデメリットはあるんですけど、もしかしたら、一つ、方法があるかもしれません」
「う、うん?」
思いついてしまった方法は、こんな時でなければ絶対に試そうとは思わないもの。しかし、安全面やら何やらを考慮するなら、わりと良さそうな一手。
戸惑った様子のイルト様達に、私は、覚悟を決めて、その案を告げるのだった。
断罪の神は、常に冷静でなければならない。常に平等でなければならない。故に、感情を持ってはならない。初めて力を行使する時をきっかけに、感情の封印が施される。
嘘か本当かは分からない。ただ、そこそこ有名なその噂を思い出し、イルト様を見つめると、それがあながち嘘ではないような気がしてならない。
「イルト様が、無理に力を使う必要はありません。ここには、イルト様以外に四人も神が居るんですよ? 三人寄れば文殊の知恵と言いますが、レインボードラゴン達を含めれば十一の知恵が集まるんです。それなら、きっと何とでもなりますよ」
噂のことを知らないレインボードラゴン達は、不思議そうな顔をしていたものの、基本的に私を信頼してくれているため、何も言わない。セイ達は、恐らく、噂を知っているのだろう。じっと黙ったまま、イルト様の様子を見つめていた。
「ユミリア、でも、時間が「そうとなれば、考えますよっ! ほら、イルト様も考えてっ」う、うん……」
時間がないのは百も承知だ。しかし、それで焦るよりは、さっさと意見を出し合った方が良いに決まっている。
「今の時点で、イルト殿下が問題なく使える力って何があるの?」
「そうだな……単純に闇と光の力を操ることは可能だ。一般的に、高位の闇の神、光の神ができることは、僕もできる。あとは、相手にどんな罪があるのかを見る魔眼と、罪の意識を増幅させる力までだね」
やはり、断罪の力は問題があるらしい。ただ、イルト様の力の内容を聞いても、私達には上手い解決策が見当たらない。時間だけが過ぎれば、当然、焦りの色も濃くなる。
「あーっもうっ! あの邪神を囮とかに使えないかっ! そのくらいしか浮かばないぞっ!!」
こうした場で、一番堪え性のないのは、レインボードラゴンのチビだった。ただ、その意見は、一度出たものの、囮にしたところで、この空間ではまとめて移動させられることもあるから意味がないとのことで落ち着いた。だから、私はチビを宥めようとして……その手を、止める。
「……イルト様、罪の意識の増幅って、どんな神にも有効ですか?」
「? もちろん。普通の神だろうが、邪神だろうが、罪の意識を増幅させて、頭を打ちつけるくらいに謝罪させることは可能だよ。もちろん、その素養がない者に関してはその方法は取れないが、基本的に、神には必ず罪悪感を抱く感情を植えつけられているから、何も問題はないけど……?」
「イルト様。とっても、とーっても不本意で、不愉快で、不快で、破壊衝動が込み上げてくるというデメリットはあるんですけど、もしかしたら、一つ、方法があるかもしれません」
「う、うん?」
思いついてしまった方法は、こんな時でなければ絶対に試そうとは思わないもの。しかし、安全面やら何やらを考慮するなら、わりと良さそうな一手。
戸惑った様子のイルト様達に、私は、覚悟を決めて、その案を告げるのだった。
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