悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百七十二話 神界へ4

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「邪神、殺す」

「はっはっはーっ……なぁ、俺らで神界攻め滅ぼすくらいできるよなぁ?」

「ねねっ、邪神って、食べたら美味しいかな?」

「むー、お腹壊しそう」

「ちゃんと戦いに備えないとなっ」

「オレもっ、オレも参戦するぞっ!」


 沈黙の後に巻き起こったのは、邪神達に対する壮絶な殺意の嵐。もちろん、今の私達の立場を理解してくれているため、こちらでは殺気が感じられないものの、全員が全員、怒りの形相だ。


「ところで、一体足りないようだけど、あの子はどこに?」

「あぁ、あいつは、今、神界に行ってます、な……」


 話題を逸らそうと思って、残りの一体に関して質問すれば、長男は硬直する。


「……もしかして、私達が居なくなってから、初めての訪問、だったり?」


 基本的に、レインボードラゴン達は面倒事を嫌う。そして、神界への入門手続きは、その面倒事の頂点に当たるものだ。だから、彼らのうちの一体でも、神界へ向かったというのは驚くべきことで、私達が死んだ後、初めての訪問だったとしてもおかしくはない。
 案の定、長男は『そう、です』と硬い声で告げる。


「それって、かなり不味いよね。全員が揃って行ったならまだしも、一体だけなら、奴らに倒されかねないっ」


 セイが口にした懸念は、まさに今、私達が懸念していることだ。レインボードラゴンは、七体揃っていれば十全の力を発揮して、かつての私達以上の力を持つことができる。しかし、バラバラになってしまえば、その力は八割減となり、中級の神と対等に渡り合える程度の力しか発揮できないのだ。


「状況を教えてっ! そして、できるだけすぐに、神界へ乗り込むわよっ」


 そう言えば、一気に、神界の門を手続きをすっ飛ばして強引にこじ開ける組と、私達に状況説明をする組とに分かれて行動が始まる。


「あいつが神界へ向かったのは、三日前です」

「俺らは気づかなかったんだけど、どうも、どこかでマリフィー様の力を感知したらしくって、神界に行くんだと言って聞かなくてな」

「二人は、一番仲が良かったからだろうな。ちゃんと手続きするのも惜しいと言って、強引に神界に向かってたよ」


 長男、次男、五男の言葉に、罠の可能性は低いように思う。


「マリフィーの力、ね……あり得ると言えばあり得るけど、そうなると、かなり危険かもしれない」


 私が邪神側であるなら、レインボードラゴンを敵に回すのは、できるだけ避けたい。何せ、一体でもとんでもない力を発揮するドラゴンであり、私達に縁のある存在。とにかく厄介極まりない能力も有しているため、万が一潰す場合は、一体一体、個々に行うだろうが、それでも、マリフィーの力を仄めかすなんてことをして、何体が釣れるか分からないような手法を選ぶわけがなかった。ただし……その場合、六男が感じたマリフィーの力は本人のものであり、この世界に助けを求めるほどひっ迫している可能性が高い。


「どちらにしても、神界へ行くべきね」


 これからの行動が纏まったという頃になって、空間に、大きな亀裂が入る。


「行くよ」


 亀裂の向こうに見えるのは、懐かしの神界の門。それを確認して、私達は、レインボードラゴン達とともに、神界へと足を踏み入れた。
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