悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百六十九話 神界へ1

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 神界へ向かうための手段。強い魔力を持つことと妖精王、精霊王達に認められること、そして、人間以外の種族であることが条件だとされていたそれは、神の記憶が戻った私達からすると、歪んだ情報だということが分かった。
 正しいのは唯一、強い魔力を持つことのみ。妖精王や精霊王達に認められることが条件だったのは、彼らが知らず知らずのうちに邪神の手駒として動かされ、強い力を持った存在にマーキングするという役割を得ていたからというのが大きい。そうでなければ、妖精王や精霊王達は、気に入った存在を多少の手続きはあれど、容易く神界に招くことができるのだから。
 また、人間以外という条件はもっと単純だ。そもそも、人間には神に匹敵するような力が身につくとは思われていない。寿命も、文明を築けるだけの知的生命体にしてはもっとも短く、弱い存在だとされていたために、(最弱の)人間以外であれば他の種族なら可能性があるかも、くらいのものだった。

 と、いうわけで、私は、最初、妖精王や精霊王達に神界行きを打診してみたのだが……やはりというか、何というか、彼らは、神界への行き方を覚えていなかった。きっと、邪神が、その記憶は邪魔なものだと判断して排除したのだろう。もちろん、私が彼らに神界へ向かう許可を出せる立場であったなら、彼らへ方法を教えて向かわせることもできたが、そんなことができるくらいなら、私達だけでさっさと神界へ向かっている。そうなると、方法は一つしかない。


「懐かしいね。僕達が作った世界、か……」

「でも、今は脅威でしかないよ」

「まさか、こんなに弱体化した状態で、ここに来ることになるとは思わなかったよ……」

「っ、が、頑張る!」

「……神権……ないの、キツイ……」


 ユレイラとイリアスが始めて作った世界。それは、実を言うと、この世界の双子的な存在であり、交わっても問題のない世界同士という、ちょっと変わった世界だった。ユレイラとイリアスという存在が降臨しても問題のない世界。それだけ強い世界を生み出して、大切な秘密基地として、頻繁に降りてきては、ここの住人と遊んでいた。もちろん、生き物を作った世界には生態系が必要であったため、そこそこに危険な力を持つ生き物も居たが、神である私達に敵うわけもなく、そもそも神権がある限り、敵対するものなどいなかった。


「神権さえあれば、ここの生き物に攻撃されることもない、んだけどね……」


 ここの生き物は、一体でもこちらの世界に紛れ込めば、いくつもの国が崩壊するであろうと思える強さを持っている。それが今や、全て敵に回っているも同然という状態。ただ、この世界のことをよく知っているからこそ、様々な状況で、ここの生き物を回避できるとは思っている。


「……この先は、命の保証なんてできない。けど、どうか、力を貸してほしい」


 イリアスの生まれ変わりのイルト様。セルティスの生まれ変わりのセイ。コルトの生まれ変わりの鋼。ネシスは、生まれ変わってもネシスだが、全員が、神であった存在だ。そして、今から助けようとしているミーシャだって、きっと……。


「ユミリアが行くなら、僕が行かないわけがない」

「当然、ついていくに決まってるでしょっ」

「行く!」

「ぼく、ちゃんと……力、貸すっ」


 この先が危険だと知りながら、それでも、力を貸してくれるという彼らに、私は涙腺が緩みそうになりながら、『ありがとう』と告げる。


「なら、行こう。ミーシャを助けて、邪神に対抗するためにっ」


 ……そうして、あちらの世界へ踏み出した一分後、私達の前には、桁違いのプレッシャーを放つドラゴンが影を落とすこととなっていた。
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