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第三章 少女期 女神編
第三百六十七話 神界へ行く前に1
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きっと、私がこの世界に戻されたのは、理由がある。
そう思ったのは、ユレイラとしての記憶が戻ってすぐのことだった。
「ユミリア、準備は良い?」
「うん、大丈夫。イルト様が側に居る限り、私は無敵だから」
「はぁ……ミーシャが居れば、殿下の呪いも解けたんだけどなぁ」
「言っても仕方ない。ぼく達は、できるだけのことをしてきたっ」
「……マリ姉……早く、助けなきゃ」
「…………」
現在、この場に居るのは、私、イルト様、セイ、鋼、ネシス、ローラン、メリー、ミルラスというメンバーだ。ただし、神界へ行くのは、ローランとメリー、ミルラスを除いたメンバーであり、そのことに納得がいかないローランは少しいじけているようだった。
「ローラン」
「……俺だって、戦力になれるはずだ」
ローランを弾いた理由はただ一つ。神を知らないローランが向かったところで、そこに待つのは死のみだからだ。
「ローラン、敵は、本物の邪神だ。お前が一緒に向かったところで、足手まといにしかならない」
「っ、けどっ、俺だって、勇者だっ!!」
イルト様の言葉に食ってかかるローラン。もちろん、ローランが勇者なのは分かっている。しかし、それでもなお、この先に行くには足りないのだ。
じっとイルト様を睨むローラン。本来であれば、不敬だと言われるその行いは……ゴツンという重々しい音で遮られる。
「いっ……」
「いつまで駄々をこねるつもりですか? ローラン?」
ローランの頭に拳を振り下ろしたメリーは、それはそれは素敵な笑顔で、ローランへと問いかける。
「っ、メリーは悔しくねぇのかよっ!!」
そう反論するローランを前に、メリーはニコニコ微笑みながら……ガツンと頭突きを返す。
「うふふふふ、悔しくないか、ですか? そうですねぇ、それよりも、私はユミリアお嬢様の安全が何よりも大切なのです。ですから、お嬢様がローランを連れて行くのは危険だと仰るのであれば、私は、全力でローランのお相手をいたしますよ?」
「……妾、なぜ、ここに呼ばれたのじゃ?」
『勇者』バーサス『狂乱のメリー』という世にも恐ろしい戦いが幕を開けそうになる中、それにビクビクと恐怖するミルラスが一人、涙目で告げる。
「うん、ミルラスには、もし、予定時間になっても私達が帰らない場合、これを、魔王に渡してほしいと思って、呼んだの」
ミルラスは、普通の人間よりは強いといえど、その本分はあくまで夢魔である。そのため、人間も居るはずのこの場で、最弱の存在としてそこに居た。
「これは?」
「魔王に渡せば分かるけど、できれば、渡す前に終わらせてしまいたいところではあるから、それまでは、魔王には黙っていてくれる?」
私が渡したのは、光り輝くビー玉サイズの球体。
魔王とミルラスは、同時期に私の仲間となったおかげか、わりと仲が良い。ミルラスは小さなネズミ姿の魔王が可愛くて仕方ないといった様子だし、魔王は、人の形をとって、私の仲間でありながら、自分よりも弱いミルラスを守らなければという強い意思を持っている。
まぁ、日本語で彼らの関係性を端的に表現するなら……『爆発しろ、リア充め』くらいの感覚だろうか? あ、いや、違う。『友達以上恋人未満』か。
とにかく、ミルラスならば、魔王に怪しまれることなく、それを渡すことができるし、危険を匂わせれば、魔王のためにギリギリまで待つだろうと予想できた。
「……分かったのじゃ。妾は、主様のために、ちゃんと動くのじゃ」
とうとう向こうでドンパチを始めてしまったメリー達を横目に、ミルラスはうなずいてくれる。その様子に安堵した私は、今度は、メリーとローランへ顔を向けた。
そう思ったのは、ユレイラとしての記憶が戻ってすぐのことだった。
「ユミリア、準備は良い?」
「うん、大丈夫。イルト様が側に居る限り、私は無敵だから」
「はぁ……ミーシャが居れば、殿下の呪いも解けたんだけどなぁ」
「言っても仕方ない。ぼく達は、できるだけのことをしてきたっ」
「……マリ姉……早く、助けなきゃ」
「…………」
現在、この場に居るのは、私、イルト様、セイ、鋼、ネシス、ローラン、メリー、ミルラスというメンバーだ。ただし、神界へ行くのは、ローランとメリー、ミルラスを除いたメンバーであり、そのことに納得がいかないローランは少しいじけているようだった。
「ローラン」
「……俺だって、戦力になれるはずだ」
ローランを弾いた理由はただ一つ。神を知らないローランが向かったところで、そこに待つのは死のみだからだ。
「ローラン、敵は、本物の邪神だ。お前が一緒に向かったところで、足手まといにしかならない」
「っ、けどっ、俺だって、勇者だっ!!」
イルト様の言葉に食ってかかるローラン。もちろん、ローランが勇者なのは分かっている。しかし、それでもなお、この先に行くには足りないのだ。
じっとイルト様を睨むローラン。本来であれば、不敬だと言われるその行いは……ゴツンという重々しい音で遮られる。
「いっ……」
「いつまで駄々をこねるつもりですか? ローラン?」
ローランの頭に拳を振り下ろしたメリーは、それはそれは素敵な笑顔で、ローランへと問いかける。
「っ、メリーは悔しくねぇのかよっ!!」
そう反論するローランを前に、メリーはニコニコ微笑みながら……ガツンと頭突きを返す。
「うふふふふ、悔しくないか、ですか? そうですねぇ、それよりも、私はユミリアお嬢様の安全が何よりも大切なのです。ですから、お嬢様がローランを連れて行くのは危険だと仰るのであれば、私は、全力でローランのお相手をいたしますよ?」
「……妾、なぜ、ここに呼ばれたのじゃ?」
『勇者』バーサス『狂乱のメリー』という世にも恐ろしい戦いが幕を開けそうになる中、それにビクビクと恐怖するミルラスが一人、涙目で告げる。
「うん、ミルラスには、もし、予定時間になっても私達が帰らない場合、これを、魔王に渡してほしいと思って、呼んだの」
ミルラスは、普通の人間よりは強いといえど、その本分はあくまで夢魔である。そのため、人間も居るはずのこの場で、最弱の存在としてそこに居た。
「これは?」
「魔王に渡せば分かるけど、できれば、渡す前に終わらせてしまいたいところではあるから、それまでは、魔王には黙っていてくれる?」
私が渡したのは、光り輝くビー玉サイズの球体。
魔王とミルラスは、同時期に私の仲間となったおかげか、わりと仲が良い。ミルラスは小さなネズミ姿の魔王が可愛くて仕方ないといった様子だし、魔王は、人の形をとって、私の仲間でありながら、自分よりも弱いミルラスを守らなければという強い意思を持っている。
まぁ、日本語で彼らの関係性を端的に表現するなら……『爆発しろ、リア充め』くらいの感覚だろうか? あ、いや、違う。『友達以上恋人未満』か。
とにかく、ミルラスならば、魔王に怪しまれることなく、それを渡すことができるし、危険を匂わせれば、魔王のためにギリギリまで待つだろうと予想できた。
「……分かったのじゃ。妾は、主様のために、ちゃんと動くのじゃ」
とうとう向こうでドンパチを始めてしまったメリー達を横目に、ミルラスはうなずいてくれる。その様子に安堵した私は、今度は、メリーとローランへ顔を向けた。
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