悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百六十四話 取り乱した二人

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 一通りの説明を終えて、混乱が治まった今。セイと鋼を連れて、アルテナ家へ向かおうとしたところで、ネシスに止められる。


「二人、目覚める。……危険」

「え?」


 『目覚める』という言葉に問題はない。しかし、『危険』とはどういうことだろうかとセイと鋼へ視線を向ければ、ちょうど、二人とも目を開けるところだった。


「あ、あぁぁぁあっ!!」

「うぉぉぉぉおんっ!!」


 目が覚めて良かったと思う間もなく、二人が悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げ、私はひとまず……ガッチリ拘束することにする。


「自動追尾型の鎖、設定は、セイと鋼でっ!」


 ストレージから取り出した、『ストーカースネーク』と呼ばれる蛇皮の粉末を混ぜて作った緑色の鎖は、目覚めたばかりのセイと鋼をガッツリ拘束する。


「ががっ、ぁ」

「ぐるるるるぅ」


 口を開けていたおかげで、鎖を噛むこととなったセイと鋼は、簀巻き状態でゴロンと転がる。しかし……。


「今度は、強度を上げなきゃダメだね」


 星妖精と蒼月狼には通用しないらしい。次第に、パキパキと音を立て始めるものだから、完全に壊れる前に、全部を廃棄するつもりで、どんどん同じ鎖をセイと鋼へけしかける。


「それで、ネシス? 何で、セイと鋼はあの状態なの?」

「……二人には、セルティスと、コルトの魂、ある。…………反発して……嫌なこと、思い出して、暴走中?」


 何となく、ネシスの言葉を解読するならば、セイにはセルティスの、鋼にはコルトの魂があるも、本来のセイと鋼の魂も存在するために、その両者が反発。そして、その反動で、セイと鋼は、何か、トラウマになるような記憶を思い出して、感情が制御できずに暴れている、ということだろう。


「なら、水に沈める?」

「それが良いですねっ!」

「えっ? あんた達、仲間よね?」

「いつもながら、容赦ねぇなぁ」

「……ここは、手を合わせておくべきですか?」

「さすがはお嬢様ですっ!」


 イルト様の提案に同意すれば、様々な感想が送られてきたものの、きっと、頭を物理的に冷やせば何とかなるはずだ。着々と、鎖が壊れていく音を聞きながら、セイと鋼の周りにだけ結界を作ると、ストレージからただ水を溜めているだけの魔石を取り出して、二人が居る結界の中で発動させる。


「ごばっ、ごぼぼぼぼぼっ」

「ぐぶぼぼぼぼっ」


 一秒、二秒、三秒……とりあえず、三十秒ほど水を溜めて、結界を解除する。
 水が地面にばしゃりと落ちて、一応、まだ残っていた鎖で縛られたセイと鋼らしき塊がガチャンと落ちる。


「……大丈夫か? 二人とも?」


 そんなローランの問に、返事をする者は誰も居なかった。
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