悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第三章 少女期 女神編

第三百五十九話 邪神と女神

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「……邪神、勢力、増した。詳しくは分からない……けど、いくらかの神が、取り込まれたかも……」


 そこで繋がるのは、竜神様達に聞いた女神の様子と、私達が知る女神の様子が違っていたこと。


「なるほど、女神は、手駒にされたか……」


 イルト様も同じ結論に至ったらしく、眉間にシワを寄せる。ただ……。


「きっと、あの女神は完全には支配されていないはずだよ」


 神としての記憶が戻った私は、かつての女神の姿を覚えていた。厳しくて、冷酷に思われがちな彼女は、実は、誰よりも情が深くて、本当に滅さなければならない相手でない限りは、必ず、何らかの手心を加えていた。ただ、表情を動かすことが極端に苦手で、そのせいで誤解を受けることが多いというのも知っている。私の先輩に当たる女神であり、神として新米だった私を何かと気にかけてくれたのは彼女だったのだから。


「彼女は、中位の神の中でも、上の方に位置する女神だから、きっと、完全に支配されてはいないんだと思う。そうでなければ、私は今頃、邪神達の手に渡っているはずだし」

「それは、確かに……」


 それに、女神はユミリアを救うために私の魂を呼んだと言った。しかし、それはきっと、本来の目的の半分でしかない。地球という、神へ抵抗する手段が全くない場所から、私を連れ出すこと。そして、イリアスの魂と引き合わせること。そうすれば、何か、打開策が見つかるかもしれない。そう考えてくれていたとしても、おかしくはないと言えるのが、私の知る女神だ。


(そうなると、何度もこの世界を繰り返したのは、イリアスの魂を見失わないようにするため? それとも、邪神達から、イリアスを隠すため?)


 もちろん、世界の崩壊を防ぐという意味はあるに違いない。堕ちた竜神様よりも高位の女神である彼女が動いたのであれば、竜神様にすら気づかせることなく、世界を繰り返すことは可能だろう。少なくとも、そうすることで、イリアスを守ることにはなる。


「僕は、あの女神に守られた、か……」

「うん、私の先輩なの。多分、私を一番可愛がってくれた先輩」


 彼女が、どこまで邪神の影響を受けているのかは分からない。そして、なぜ、ミーシャの魂を奪ったのかも。もちろん、ミーシャがどこの神の差し金でこの世界に来たのかだって、全く分からない。


「ユレイラを一番可愛がっていたのは僕だ」

「みゅっ!?」


 ふいに、抱き寄せられた私は、体勢を整えることもできずに、すっぽりと、イルト様の腕の中に収まる。


「これまでも、これからも、ユレイラの、ユミリアの側に居るのは、僕だから。永遠に愛してるのは、ユミリアだけだから」

「ひぅっ」


 耳元で囁かれる甘い言葉に、私は先程まで考えていたことが完全に頭から吹き飛び、腰砕けになる。


「愛してるよ。ユミリア」

「みっ」


 そして、首元に口づけを落とされた私は……完全に、思考停止に陥った。
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