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第三章 少女期 女神編
第三百五十四話 呪われた魂(イルト視点)
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「……使用人風情が、無礼なことを申し上げました。申し訳ありません」
「構わない」
そう謝罪するメリーに、僕は、他に何を言えただろうか。完全に僕を見放したであろう彼女の視線に、僕は、自身の無力とユミリアを失う恐怖で何も応えることができない。
(情けない……)
本来ならば、ユミリアを守ってみせる、くらいのことを言える自分でありたかった。しかし、僕は、そのユミリアに守られるほどに弱い。ユミリアが傷つくのを、目の前で見ていることしかできなかった男だ。
「その、少し、よろしいですか?」
嫌な沈黙が漂う中、声をあげたのは、竜神様だった。
「私は、あまりこういったことに詳しくはないのですが……恐らく、イルトは、何らかの呪いによって、大切な存在の危機を前に、力が出せなくなるような状態かと思われますが……」
「「えっ?」」
「ワタシが分からないってことは、それ、魂レベルの呪いってことかしら?」
「はい、随分と、様々な因果が絡み合っているのは分かります。ただ、さすがに専門ではないので、呪いの効果も、それくらいしか分かりませんが……」
「なら……ユミリアが瘴気に貫かれた時、動けなかったのは……?」
「……そうですね。私は、あくまでも今のイルトしか知りませんが、状況にも寄りますが、きっと、跳ね除けることはできたのではないでしょうか?」
「ユミリアが、魔王につけこまれて、大変な時に、その影響を受けてしまったのは」
「そもそも、イルトほどの魂の器があって、瘴気やら魔王やらに影響を受けるというのは考えにくいかと」
「……ユミリアと一緒に、記憶操作されてしまったのは……?」
「……その節は、本当に、申し訳ありません。ですが、今だから思うのは、よく、私はお二人に記憶操作をかけられたなということでしょうか。それだけ、お二人の魂は、強いものです」
そんな竜神様の言葉に、呆然としてしまったのは当然のことだろう。つまりは、この良く分からない呪いさえなければ、僕は、ユミリアを守れたし、そもそも、ユミリアが害されることもなかったということなのだから。
「待ってください。それなら、ユミリアお嬢様は、どうなのですか? ユミリアお嬢様の魂が強くて、記憶操作をかけられるとは思えないのであれば、お嬢様は……」
そんなメリーの言葉に、僕はハッとユミリアへ視線を落とす。
「……私では、その魂に、違和感がある、くらいのことしか分かりませんね。しかし、恐らくは、ユミリア様にも何らかの呪いがかけられているものと」
「っ、どうすれば、その呪いは解けるっ!?」
竜神様でダメならば、他の神を頼るしかない。それを、チラリと予感するものの、それでも、問わずにはいられない。
「……私では、この呪いがどれだけ強いものなのか、分かりません。ですから、断言はできませんが、それなりに力のある、呪い専門の神へ協力を仰ぐしかないかと」
やはり、それしかないのか、と思った直後、竜神様は、衝撃的な言葉を告げる。
「ただ、こんな呪いをかけられるのもまた、神でしかありえませんが……」
いつの間にか、神に呪われている。その事実に、どこか、薄ら寒いものを感じた。
「構わない」
そう謝罪するメリーに、僕は、他に何を言えただろうか。完全に僕を見放したであろう彼女の視線に、僕は、自身の無力とユミリアを失う恐怖で何も応えることができない。
(情けない……)
本来ならば、ユミリアを守ってみせる、くらいのことを言える自分でありたかった。しかし、僕は、そのユミリアに守られるほどに弱い。ユミリアが傷つくのを、目の前で見ていることしかできなかった男だ。
「その、少し、よろしいですか?」
嫌な沈黙が漂う中、声をあげたのは、竜神様だった。
「私は、あまりこういったことに詳しくはないのですが……恐らく、イルトは、何らかの呪いによって、大切な存在の危機を前に、力が出せなくなるような状態かと思われますが……」
「「えっ?」」
「ワタシが分からないってことは、それ、魂レベルの呪いってことかしら?」
「はい、随分と、様々な因果が絡み合っているのは分かります。ただ、さすがに専門ではないので、呪いの効果も、それくらいしか分かりませんが……」
「なら……ユミリアが瘴気に貫かれた時、動けなかったのは……?」
「……そうですね。私は、あくまでも今のイルトしか知りませんが、状況にも寄りますが、きっと、跳ね除けることはできたのではないでしょうか?」
「ユミリアが、魔王につけこまれて、大変な時に、その影響を受けてしまったのは」
「そもそも、イルトほどの魂の器があって、瘴気やら魔王やらに影響を受けるというのは考えにくいかと」
「……ユミリアと一緒に、記憶操作されてしまったのは……?」
「……その節は、本当に、申し訳ありません。ですが、今だから思うのは、よく、私はお二人に記憶操作をかけられたなということでしょうか。それだけ、お二人の魂は、強いものです」
そんな竜神様の言葉に、呆然としてしまったのは当然のことだろう。つまりは、この良く分からない呪いさえなければ、僕は、ユミリアを守れたし、そもそも、ユミリアが害されることもなかったということなのだから。
「待ってください。それなら、ユミリアお嬢様は、どうなのですか? ユミリアお嬢様の魂が強くて、記憶操作をかけられるとは思えないのであれば、お嬢様は……」
そんなメリーの言葉に、僕はハッとユミリアへ視線を落とす。
「……私では、その魂に、違和感がある、くらいのことしか分かりませんね。しかし、恐らくは、ユミリア様にも何らかの呪いがかけられているものと」
「っ、どうすれば、その呪いは解けるっ!?」
竜神様でダメならば、他の神を頼るしかない。それを、チラリと予感するものの、それでも、問わずにはいられない。
「……私では、この呪いがどれだけ強いものなのか、分かりません。ですから、断言はできませんが、それなりに力のある、呪い専門の神へ協力を仰ぐしかないかと」
やはり、それしかないのか、と思った直後、竜神様は、衝撃的な言葉を告げる。
「ただ、こんな呪いをかけられるのもまた、神でしかありえませんが……」
いつの間にか、神に呪われている。その事実に、どこか、薄ら寒いものを感じた。
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