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第三章 少女期 女神編
第三百三十九話 死者達(イルト視点)
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(来たか……)
クリスタルロードの入り口は、本来、僕達が入った天井でも、ユミリアが見せた仕掛けによる転移でもない。クリスタルロードの真の入り口は、この地面の下。ちゃんと掘削しなければ見つからない場所であり、ユミリアが知る情報では、魔王の襲撃によってこの場所の地面がひび割れ、入り口が顔を覗かせるという設定だったらしい。この入り口からならば、バラバラに転移させられることもなく、一階から順に下りることとなる。
ただ、その入り口は穴であって、階段などはない。ユミリアから情報をもたらされた直後、僕達は、その穴になるであろう場所を見つけておいたが、その場所は、現在、下からの攻撃によって、ひび割れ、もうすぐ壊れるところだ。
「あれは……死者、ですな」
「死者の魔物? だが、あれは……」
「えぇ、もちろん、リッチやらスケルトンが有名どころではありますが、過去には、肉を持ったまま、生前の姿に限りなく近い形で残る魔物も存在していたとのことです」
バリバリと地面が割れ、そこから覗いた手を見て、アグニスはそう判断する。
ゆっくり、ゆっくりと下から這い上がってくる魔物は、どす黒い髪色をして、狂気を滲ませた赤い瞳をしている。土気色で皮がボロボロと剥けた肌のそいつは、僕達の姿を認めると、醜い顔でニィッと口角を吊り上げる。
「臭いものには蓋を。沈め」
しかし、その瞬間に漂ってきた臭気に、僕はとりあえずちょうど穴スレスレの大きさになるくらいに魔力を凝縮して、音もなく、死者を巻き込んで入り口の中まで落とす。
「……」
「……」
「……殿下、私、必要でしたか?」
静かに、無音のまま、魔物を死滅させたらしい僕の姿に、アグニスはどこか疲れたような言葉を投げかける。
「まだ、来るかもしれない。活躍ができず、消化不良なのは分かるが、さっさと片付けるに越したことはない」
それに、ユミリアが警戒するということは、この程度で終わるわけがない。きっと今のは、ただの斥候部隊だろう。
そんな僕の予想は、やはり、当たっていた。しばらく待てば、凄まじい悪寒が背筋を駆け抜け、咄嗟に、アグニスとともにその場から退避する。
「っ!」
「チィッ!」
直後、先程まで立っていた場所が、轟音を立てて、入り口など関係ないとばかりに崩れ去る。ついでに、その下に待ち構えるのは、百を超える死者の軍勢。
「は、ははっ、こりゃあ、腕が鳴るってものですなぁっ!」
死者達は、おそらく、どれも強敵だ。その様子に、アグニスが凄絶な笑みを浮かべる。
「僕は……ユミリアの頼みは、何が何でも果たしたいから、ね?」
僕は、先制攻撃として、魔法を落としながら、剣を構えた。
クリスタルロードの入り口は、本来、僕達が入った天井でも、ユミリアが見せた仕掛けによる転移でもない。クリスタルロードの真の入り口は、この地面の下。ちゃんと掘削しなければ見つからない場所であり、ユミリアが知る情報では、魔王の襲撃によってこの場所の地面がひび割れ、入り口が顔を覗かせるという設定だったらしい。この入り口からならば、バラバラに転移させられることもなく、一階から順に下りることとなる。
ただ、その入り口は穴であって、階段などはない。ユミリアから情報をもたらされた直後、僕達は、その穴になるであろう場所を見つけておいたが、その場所は、現在、下からの攻撃によって、ひび割れ、もうすぐ壊れるところだ。
「あれは……死者、ですな」
「死者の魔物? だが、あれは……」
「えぇ、もちろん、リッチやらスケルトンが有名どころではありますが、過去には、肉を持ったまま、生前の姿に限りなく近い形で残る魔物も存在していたとのことです」
バリバリと地面が割れ、そこから覗いた手を見て、アグニスはそう判断する。
ゆっくり、ゆっくりと下から這い上がってくる魔物は、どす黒い髪色をして、狂気を滲ませた赤い瞳をしている。土気色で皮がボロボロと剥けた肌のそいつは、僕達の姿を認めると、醜い顔でニィッと口角を吊り上げる。
「臭いものには蓋を。沈め」
しかし、その瞬間に漂ってきた臭気に、僕はとりあえずちょうど穴スレスレの大きさになるくらいに魔力を凝縮して、音もなく、死者を巻き込んで入り口の中まで落とす。
「……」
「……」
「……殿下、私、必要でしたか?」
静かに、無音のまま、魔物を死滅させたらしい僕の姿に、アグニスはどこか疲れたような言葉を投げかける。
「まだ、来るかもしれない。活躍ができず、消化不良なのは分かるが、さっさと片付けるに越したことはない」
それに、ユミリアが警戒するということは、この程度で終わるわけがない。きっと今のは、ただの斥候部隊だろう。
そんな僕の予想は、やはり、当たっていた。しばらく待てば、凄まじい悪寒が背筋を駆け抜け、咄嗟に、アグニスとともにその場から退避する。
「っ!」
「チィッ!」
直後、先程まで立っていた場所が、轟音を立てて、入り口など関係ないとばかりに崩れ去る。ついでに、その下に待ち構えるのは、百を超える死者の軍勢。
「は、ははっ、こりゃあ、腕が鳴るってものですなぁっ!」
死者達は、おそらく、どれも強敵だ。その様子に、アグニスが凄絶な笑みを浮かべる。
「僕は……ユミリアの頼みは、何が何でも果たしたいから、ね?」
僕は、先制攻撃として、魔法を落としながら、剣を構えた。
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