悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
上 下
322 / 412
第三章 少女期 女神編

第三百二十一話 殺気返し(セイ視点)

しおりを挟む
 こちらに殺意を向けた妖精王達。それに対して、僕はもちろんのこと、ローランもセイもメリーもユミリアも、全員がそれを遥かに上回る殺意で対応してみせる。


(ユミリアに殺気を向けるなんて、一億年早いっ!)


 途端に、青ざめて、ガタガタブルブル震え出す妖精王達。しかし、謝罪する様子がないため、僕は、当然殺気をまた一段強くする。
 ガチガチガチと歯を鳴らし、震え続ける妖精王達。僕以外も、少しずつ殺気の濃度を深めているため、そこそこの負担ではあるはずなのに、やはり、彼らに反省の色はない。そこで、僕はまた殺気の濃度を上げようとして……。


「待て待て待てっ! そやつらは、すでに虫の息だぞっ!?」

「それ以上だと、消滅してしまいますっ!!」


 僕達を止めたのは、事の成り行きを見守っていたマルディックとスーちゃん。その瞬間、僕達は一気に殺気を収めたのだが……そうすると、妖精王達は二人とも、白目を向いて泉に落ちた。


「「「「あっ」」」」


 その時になって、ようやく、僕達は理解した。どうやら、最初に殺気をぶつけた時点で、彼らは声も出せない状態になっていたのだと。


「っ、早く引き上げねばっ!」

「ミーシャ様を助けるための踏み台ぃぃいっ!!」


 マルディックとスーちゃんの悲鳴で、僕達も、とりあえず彼らを助けなければならないことに思い至る。何気に、スーちゃんの言葉が酷いように思えなくもないが、それに突っ込む者は誰も居なかった。


「げほぉっ、ごほっ」

「ごほっ、ごほっ……い、生きて、る……?」


 僕が、金髪の妖精王の片足を掴んで引き上げる間に、コウが緑の髪の妖精王を泉を凍らせて作り上げた巨大な手で持ち上げる。


「ねぇ」

「ひっ」

「僕は、混ざりものだけど、お前よりは強いよ?」


 逆さで未だに咳き込む妖精王に、僕は、静かにその事実を告げる。


「あ、あ、あ……」

「そこのコウだって、僕に匹敵する強さはある。なのに……ねぇ? そんな僕らの主人に喧嘩を売って、無事でいられると、本気で思ってる??」


 魔法で、妖精王の足だけを空中に固定した僕は、奴の耳元でそっと告げてやる。
 もう、殺気は漏れていないはずなのに、面白いくらいにガタガタ震える妖精王。ただ、僕も、手加減してやるつもりなどない。


「妖精王に認められるにはどうすれば良いのか知らないけど……手足落としたら、いけるかなぁ?」

「ご、ごめんなさーいっ!!」


 妖精王ともなれば、手足を落とされても生やすことは可能だ。しかし、だからといって、痛い思いをして落したいものではない。必死に謝罪を始めた妖精王に、僕は、ニッコリと微笑むのだった。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

転生したら乙ゲーのモブでした

おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。 登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。 主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です 本作はなろう様でも公開しています

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...