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第二章 少女期 瘴気編
第三百八話 竜神様救出作戦!9(ローラン視点)
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じっくり、ジワジワと弱っていた竜人達に、竜神様は、こう尋ねた。『もう一度、加護を求めるか?』と。
当然のことながら、誰もが、それに賛同する。どんな対価を払ってでも、もう一度、元の暮らしをも、誰もが求めた。そして……竜神様は、確かに、加護を与えた。
長く、長く、どんなに飢えて、苦しくとも、頭を潰されない限りは生き続けられる加護を。彼らを襲う魔物が寄り付かなくなる加護を。強い子供が生まれる代わりに、母親が死んでしまう加護を。四肢のどこかを欠損した者のみ、小物が作れるだけの器用さを得られる加護を。寒ければ寒いほど、動きが鈍くなるものの、寒さを感じなくなる加護を。一定の範囲内は、暖かくするという加護を。
そう……それらは全て、加護という名の呪い。彼らは、容易に死ぬことも、獲物にありつくこともできない。どんなに強い子供が生まれても、母親が必ず死ぬとあっては、種族の繁栄など見込めない。四肢の欠損は、竜人にとって不名誉なことではあるが、その状態でなければ、服すら調達できない。それに……そもそも、極寒のこの地で、彼らが外で活動することはほぼ不可能だった。外に……耐えられない寒さに見舞われれば、彼らは途端に動きを止め、何もできないまま、意識はあるのに、徐々に、徐々に、死んでいく。
ただ、竜神様が指定した場所でのみ、活動が許されるも、それだって、救いになどならない。竜神様が指定したのは、あの洞窟。その場所で、竜神様は、封じられていた怨念を解放していた。だから、救われると思ってその場に踏み込んだ竜人達は、狂気に襲われ、泣き叫び、助けを乞うこととなる。
『…………』
きっと、先ほど聞こえた竜神様の声は、過去ではなく、今の竜神様の想いだったのだろう。俺にだけは、見られたくない光景だと言われれば、納得できるものだった。
簡単に死なせるものかと、たっぷり苦しませてやると、そんな、竜神様の狂気に満ちた、過去の感情を感じながら、俺は、それを向けられた竜人達を憐れむことなく、竜神様の方へと意識を向ける。
『ごめんなさい。竜神様……俺のせいで、こんな、ツラい思いをさせて……』
竜人達に関しては、もう、どうでも良い存在に成り果てていた。ただ、俺は、こんな奴らのせいで……何より、俺が弱かったせいで、竜神様を傷つけ続けていたのだということが悲しかった。
その後も、竜神様は暴走を続け、ユミリア様達を追い詰めていく様子も見ることとなる。
『見ないで、ください……』
そんな声が聞こえる度、俺は、竜神様に謝って、もう大丈夫だと、もう傷つく必要はないのだと、伝え続ける。すると、少しだけ、この苦しい世界が、穏やかなものに変わるのを自覚する。
竜神様の記憶が終わりを迎える頃になって……俺は、再び、竜神様の過去の記憶へ飛ぶことを意識して、実際に、もう一度……いや、何度も、何度も、過去を鑑賞し、言葉を尽くす。流れ込んでくる竜神様の苦しみを、痛みを引き受けて、何度も、何度も、何度も……。俺と竜神様の境が曖昧になれば、ユミリア様が起こしてくれる。だから、何一つ躊躇うことはなかった。ただただ、竜神様を救いたい想いだけで、長い記憶の中へと潜り続けて……。
『うげぇぇぇえっ!!!?』
突如として、恐ろしいまでの辛さによって、意識が強制的に引き上げられ、本当の意味で、目を覚ますのだった。
当然のことながら、誰もが、それに賛同する。どんな対価を払ってでも、もう一度、元の暮らしをも、誰もが求めた。そして……竜神様は、確かに、加護を与えた。
長く、長く、どんなに飢えて、苦しくとも、頭を潰されない限りは生き続けられる加護を。彼らを襲う魔物が寄り付かなくなる加護を。強い子供が生まれる代わりに、母親が死んでしまう加護を。四肢のどこかを欠損した者のみ、小物が作れるだけの器用さを得られる加護を。寒ければ寒いほど、動きが鈍くなるものの、寒さを感じなくなる加護を。一定の範囲内は、暖かくするという加護を。
そう……それらは全て、加護という名の呪い。彼らは、容易に死ぬことも、獲物にありつくこともできない。どんなに強い子供が生まれても、母親が必ず死ぬとあっては、種族の繁栄など見込めない。四肢の欠損は、竜人にとって不名誉なことではあるが、その状態でなければ、服すら調達できない。それに……そもそも、極寒のこの地で、彼らが外で活動することはほぼ不可能だった。外に……耐えられない寒さに見舞われれば、彼らは途端に動きを止め、何もできないまま、意識はあるのに、徐々に、徐々に、死んでいく。
ただ、竜神様が指定した場所でのみ、活動が許されるも、それだって、救いになどならない。竜神様が指定したのは、あの洞窟。その場所で、竜神様は、封じられていた怨念を解放していた。だから、救われると思ってその場に踏み込んだ竜人達は、狂気に襲われ、泣き叫び、助けを乞うこととなる。
『…………』
きっと、先ほど聞こえた竜神様の声は、過去ではなく、今の竜神様の想いだったのだろう。俺にだけは、見られたくない光景だと言われれば、納得できるものだった。
簡単に死なせるものかと、たっぷり苦しませてやると、そんな、竜神様の狂気に満ちた、過去の感情を感じながら、俺は、それを向けられた竜人達を憐れむことなく、竜神様の方へと意識を向ける。
『ごめんなさい。竜神様……俺のせいで、こんな、ツラい思いをさせて……』
竜人達に関しては、もう、どうでも良い存在に成り果てていた。ただ、俺は、こんな奴らのせいで……何より、俺が弱かったせいで、竜神様を傷つけ続けていたのだということが悲しかった。
その後も、竜神様は暴走を続け、ユミリア様達を追い詰めていく様子も見ることとなる。
『見ないで、ください……』
そんな声が聞こえる度、俺は、竜神様に謝って、もう大丈夫だと、もう傷つく必要はないのだと、伝え続ける。すると、少しだけ、この苦しい世界が、穏やかなものに変わるのを自覚する。
竜神様の記憶が終わりを迎える頃になって……俺は、再び、竜神様の過去の記憶へ飛ぶことを意識して、実際に、もう一度……いや、何度も、何度も、過去を鑑賞し、言葉を尽くす。流れ込んでくる竜神様の苦しみを、痛みを引き受けて、何度も、何度も、何度も……。俺と竜神様の境が曖昧になれば、ユミリア様が起こしてくれる。だから、何一つ躊躇うことはなかった。ただただ、竜神様を救いたい想いだけで、長い記憶の中へと潜り続けて……。
『うげぇぇぇえっ!!!?』
突如として、恐ろしいまでの辛さによって、意識が強制的に引き上げられ、本当の意味で、目を覚ますのだった。
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