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第二章 少女期 瘴気編
第三百三話 竜神様救出作戦!4(ローラン視点)
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洞窟の奥、そこは、やたらと魔力の濃度が濃くて、とても、嫌な予感はしていた。そして、それを目撃した瞬間、俺は少しの間、それが何か、理解できなかった。
赤く、キラキラと輝く結晶。形は水晶によく似たもので、地面から、壁から無数に生えて、幻想的な光景を生み出している。何も知らなければ、それは、ただ美しい光景でしかない。しかし……俺は、知っていた。これが、どんな名前で呼ばれる結晶で、どんな経緯で生まれる存在なのか……。
『う、そ……だろ?』
自分がまだ生まれてもいない時代の出来事だと知っていても、あまりに惨い光景に、思わずそう呟く。
『死赤結晶』と呼ばれるこの結晶達は、自然には発生しない結晶だ。これは、ありとあらゆる残虐な方法で殺した存在を、淀んだ空気が満ちた場所へと埋め込み、さらに、その死者の魂を大地に封じることで出来るという、禁断の結晶だ。殺される存在は、知恵を持ち、感情を持つものであればあるほど、そして、より残酷な殺し方であればあるほど良いとされ、その方が、大きく、良質な死赤結晶が作られるとされている。
そして、今、目の前には、無数の、巨大な死赤結晶ができている。
「竜神様、竜神様」
ブツブツと、もはや、狂信者の目をしたそいつらが運んできたのは、先ほどの幼い竜人の少女。最初に見た時には気づかなかったが、彼女の体には無数の傷口が存在し、爪も全て剥がされている。
『ま、さか……』
相当に凄絶な最期だったのか、苦悶に満ちた顔は、今にも叫び出しそうだ。
「さぁ、この娘の魂を封じて、死赤結晶を作らねば。竜神様をお喚びするには、この方法しかないっ」
新たに埋められていく少女。洞窟の、淀んだ空気の中、彼女はどんどん埋められて、最後には見えなくなる。それから、少女を埋めた竜人の一人が、その少女が埋められた地面に手を当てて、彼女の魂を封じるための封印魔法を施す。すると、みるみるうちに、そこには、立派な死赤結晶が生えてきた。
『こいつ、ら……』
あまりの怒りで、俺は腕を振り上げるものの、やはり、彼らは過去の竜人。俺の攻撃は、全く届かない。
「あと、いくつだ? あといくつで、竜神様をお喚びできるっ?」
「計算上、あと、三つだ。できれば、人間を調達したいところではあるが……」
「無理なら構わん。子供であれば、多少いなくなったとて、人間に殺されたということになろう」
あまりにも残酷な光景。しかし、彼らの言葉で、俺は、彼らが何を目的としているのか、理解できてしまった。
(こいつら、無理やり竜神様を喚ぼうとしてんのかっ!)
死赤結晶は、あまりにも残酷な方法で精製されるがゆえに、大昔に、その精製を禁じられ、精製法すら失伝した。ただ、ローランがこの存在を知っていたのは、勇者時代、死赤結晶と関わることがあったからにほかならない。
死赤結晶は、どんな鉱物よりも優秀な、魔力貯蔵装置だ。ユミリア様が使用する魔石よりも、その魔力貯蔵量は数百倍の差がある。そして、それさえ用いれば……神の召喚だって、可能なのだ。
(こん、なの……)
許されるわけがない。そう思っても、これは、すでに起こってしまった出来事で、俺には、何もできなかった。
赤く、キラキラと輝く結晶。形は水晶によく似たもので、地面から、壁から無数に生えて、幻想的な光景を生み出している。何も知らなければ、それは、ただ美しい光景でしかない。しかし……俺は、知っていた。これが、どんな名前で呼ばれる結晶で、どんな経緯で生まれる存在なのか……。
『う、そ……だろ?』
自分がまだ生まれてもいない時代の出来事だと知っていても、あまりに惨い光景に、思わずそう呟く。
『死赤結晶』と呼ばれるこの結晶達は、自然には発生しない結晶だ。これは、ありとあらゆる残虐な方法で殺した存在を、淀んだ空気が満ちた場所へと埋め込み、さらに、その死者の魂を大地に封じることで出来るという、禁断の結晶だ。殺される存在は、知恵を持ち、感情を持つものであればあるほど、そして、より残酷な殺し方であればあるほど良いとされ、その方が、大きく、良質な死赤結晶が作られるとされている。
そして、今、目の前には、無数の、巨大な死赤結晶ができている。
「竜神様、竜神様」
ブツブツと、もはや、狂信者の目をしたそいつらが運んできたのは、先ほどの幼い竜人の少女。最初に見た時には気づかなかったが、彼女の体には無数の傷口が存在し、爪も全て剥がされている。
『ま、さか……』
相当に凄絶な最期だったのか、苦悶に満ちた顔は、今にも叫び出しそうだ。
「さぁ、この娘の魂を封じて、死赤結晶を作らねば。竜神様をお喚びするには、この方法しかないっ」
新たに埋められていく少女。洞窟の、淀んだ空気の中、彼女はどんどん埋められて、最後には見えなくなる。それから、少女を埋めた竜人の一人が、その少女が埋められた地面に手を当てて、彼女の魂を封じるための封印魔法を施す。すると、みるみるうちに、そこには、立派な死赤結晶が生えてきた。
『こいつ、ら……』
あまりの怒りで、俺は腕を振り上げるものの、やはり、彼らは過去の竜人。俺の攻撃は、全く届かない。
「あと、いくつだ? あといくつで、竜神様をお喚びできるっ?」
「計算上、あと、三つだ。できれば、人間を調達したいところではあるが……」
「無理なら構わん。子供であれば、多少いなくなったとて、人間に殺されたということになろう」
あまりにも残酷な光景。しかし、彼らの言葉で、俺は、彼らが何を目的としているのか、理解できてしまった。
(こいつら、無理やり竜神様を喚ぼうとしてんのかっ!)
死赤結晶は、あまりにも残酷な方法で精製されるがゆえに、大昔に、その精製を禁じられ、精製法すら失伝した。ただ、ローランがこの存在を知っていたのは、勇者時代、死赤結晶と関わることがあったからにほかならない。
死赤結晶は、どんな鉱物よりも優秀な、魔力貯蔵装置だ。ユミリア様が使用する魔石よりも、その魔力貯蔵量は数百倍の差がある。そして、それさえ用いれば……神の召喚だって、可能なのだ。
(こん、なの……)
許されるわけがない。そう思っても、これは、すでに起こってしまった出来事で、俺には、何もできなかった。
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