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第二章 少女期 瘴気編
第二百九十六話 竜神の事情1
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お城に戻ってみれば、なぜか、セイ達もそこに居て、私の姿を見て、あからさまなくらいに安心してるいた。そして……。
「あぁぁぁあっ!! あなたっ、邪神っ!?」
記憶を正常に戻すと言ったロード様……いや、邪神によって、私は、この世界がゲームではないという事実を、ロード様なる人物が存在しないということを理解する。
つまりは、目の前のモノは、危険な存在。そう思って警戒するも、それを止めたのは、ローランだった。
「待ってくれっ、ユミリア様! この方は、俺の、とても大切な人なんだっ! 今回のこと、許されるはずはないが、せめて、話を聞いてあげることはできねぇかっ?」
そう言われ、改めて見てみると、邪神は、すっかり落ち込んだ様子を見せていた。
「……そう、ですね。ちゃんと、話は聞かなきゃいけませんね。ローランは、私達の側から離れないでください」
女神の話でも、少し、邪神はわけありなのではないかと思わせる言い回しがあったはずだ。だから……。
「話を聞いて、それでも納得できなければ、何をされても構わない、という内容の宣誓書にサインを願えますか?」
「う、ぁ……はぃ……」
チラッとあの場所から持ってきた箱に視線を移しつつ、そんな冗談半分の嫌がらせを行えば、邪神は、真っ白になりながら、ブルブル震える手で、サインをしてくれる。
「……確かに。それじゃあ、お聞きしましょうか? なぜ、あなたはこんなことをしでかしたのか。私達に、何の恨みがあったのか」
そう、問えば、彼は、ポツリ、ポツリと話を始める。それは、彼がローランを愛し、慈しんできたところから始まり、ローランを取り巻く最悪な環境、その原因が自身にあることを知ってからの苦悩といったことに及んでいく。
ローランの昔が、そこまで酷いものだったとは知らなかった私達は、一斉にローランを見て、ローランから視線を逸らされたりもしたものの、特に問題なく、話は進んでいく。
「私は、あの土地に、古くからの約束で縛られていました。私が、竜人達に加護を与え、あの厳しい環境でも生き抜けるようにする代わりに、いずれ生まれてくる、私の最愛の魂を、守ること。それが守られている間は、私は、あの土地を離れられず、また、大きな力も使えない状態でした」
「それって……俺の、せいで?」
「っ、違います! あれはっ、約束を違えた竜人達が悪いのです! ローランは、何一つ、悪いことなどありませんっ!!」
この男が動けなかった理由が自分にあると思ったローランは、ショックを受けているようだったが、私は、疑問に思うこともあった。
「そんな約束なら、とっくに、破られたと判断されても良い気がしますけど?」
「……約束の内容は、私の愛し子には、衣食住を与えるべしということと、愛し子が望まない国外への移動は禁じるということ。そして、その約束は、一応、守られてはいました。ボロボロではあれど、服を。最低ラインではあるものの、食を。冷たく、針のむしろのようではあれど、住を。国外へは、愛し子をわざとそこまで連れていくような者が居なかったため、一応、罪人として捕らえられるまでは、全て、守られていたのです」
どうやら、その約束は、随分と穴だらけだったらしい。うなだれる男に、私は、しっかりと確認しろと言いたくなったものの、とりあえずは、続きを聞くことにした。
「あぁぁぁあっ!! あなたっ、邪神っ!?」
記憶を正常に戻すと言ったロード様……いや、邪神によって、私は、この世界がゲームではないという事実を、ロード様なる人物が存在しないということを理解する。
つまりは、目の前のモノは、危険な存在。そう思って警戒するも、それを止めたのは、ローランだった。
「待ってくれっ、ユミリア様! この方は、俺の、とても大切な人なんだっ! 今回のこと、許されるはずはないが、せめて、話を聞いてあげることはできねぇかっ?」
そう言われ、改めて見てみると、邪神は、すっかり落ち込んだ様子を見せていた。
「……そう、ですね。ちゃんと、話は聞かなきゃいけませんね。ローランは、私達の側から離れないでください」
女神の話でも、少し、邪神はわけありなのではないかと思わせる言い回しがあったはずだ。だから……。
「話を聞いて、それでも納得できなければ、何をされても構わない、という内容の宣誓書にサインを願えますか?」
「う、ぁ……はぃ……」
チラッとあの場所から持ってきた箱に視線を移しつつ、そんな冗談半分の嫌がらせを行えば、邪神は、真っ白になりながら、ブルブル震える手で、サインをしてくれる。
「……確かに。それじゃあ、お聞きしましょうか? なぜ、あなたはこんなことをしでかしたのか。私達に、何の恨みがあったのか」
そう、問えば、彼は、ポツリ、ポツリと話を始める。それは、彼がローランを愛し、慈しんできたところから始まり、ローランを取り巻く最悪な環境、その原因が自身にあることを知ってからの苦悩といったことに及んでいく。
ローランの昔が、そこまで酷いものだったとは知らなかった私達は、一斉にローランを見て、ローランから視線を逸らされたりもしたものの、特に問題なく、話は進んでいく。
「私は、あの土地に、古くからの約束で縛られていました。私が、竜人達に加護を与え、あの厳しい環境でも生き抜けるようにする代わりに、いずれ生まれてくる、私の最愛の魂を、守ること。それが守られている間は、私は、あの土地を離れられず、また、大きな力も使えない状態でした」
「それって……俺の、せいで?」
「っ、違います! あれはっ、約束を違えた竜人達が悪いのです! ローランは、何一つ、悪いことなどありませんっ!!」
この男が動けなかった理由が自分にあると思ったローランは、ショックを受けているようだったが、私は、疑問に思うこともあった。
「そんな約束なら、とっくに、破られたと判断されても良い気がしますけど?」
「……約束の内容は、私の愛し子には、衣食住を与えるべしということと、愛し子が望まない国外への移動は禁じるということ。そして、その約束は、一応、守られてはいました。ボロボロではあれど、服を。最低ラインではあるものの、食を。冷たく、針のむしろのようではあれど、住を。国外へは、愛し子をわざとそこまで連れていくような者が居なかったため、一応、罪人として捕らえられるまでは、全て、守られていたのです」
どうやら、その約束は、随分と穴だらけだったらしい。うなだれる男に、私は、しっかりと確認しろと言いたくなったものの、とりあえずは、続きを聞くことにした。
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