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第二章 少女期 瘴気編
第二百七十四話 攻撃(ディラン視点)
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人通りのない廊下であったため、僕の異変に気づける人はどこにも居ない。ガンガンと、打ち付けるような痛みとともに、視界までグラグラとしてくる。
(ぐ、ぅ……)
助けを求めることもできないまま、いつの間にか壁に体重を預け、ズルズルと座り込む状態になる。
自慢ではないが、僕は、大きな病気にかかったことは一度もない。だから、こんな痛みの経験などなく、意識が遠退きそうになる。しかし……僕には、これが病などではないことを理解できていた。これは……僕を対象とした、明確な攻撃だ。
濁って淀んだ、不吉な魔力が、僕へ向けて放たれている。恐らくは、これに屈してしまえば、僕は、大切なものを失う。それが理解できたからこそ、必死に意識を保って抗う。
「うっ……」
(何か、何かっ、手はないかっ)
学園内でも身につけている魔導具など、ほとんどない。あるのは、ユミリア様からいただいた連絡用の腕輪と、不思議な模様が描かれたお守り、その他は、無闇に人の魔力を見てしまわないように、少しだけ抑制してくれる伊達眼鏡くらいだ。そして、その中で……使い道が全く分からないのは、お守りのみ。
ザラリとした布の袋に、紙を入れ、柔らかい紐で結ばれたそれは、ユミリア様の世界では当たり前の形状のお守りなのだそうだ。そして、ユミリア様が言うには、中身の紙は取り出してはならないとのこと。だから、僕はずっと、肌身離さず、ポケットに入れて持ち歩いていた。
(お守り……守って、もらえるだろうか……?)
また、あの時のように、ユミリア様がやってきて、助けてくれるのかもしれない。はたまた、イルト殿下のために作った魔導具のように、強力な結界が張られるのかもしれない。
(いずれにせよ、今、使えるのはこれだけっ)
魔導具であれば、魔力さえ込めれば、大抵発動するものだ。だから、僕は思いっきり、お守りに魔力を流し込んで……。
「のわっ!」
「っ、う……?」
なぜか、人の気配が全くなかったその場に、誰かの声が響く。
「って、お前、ユミリア様の友人じゃなかったか?」
聞き覚えのある声。その声に、僕は答えようとするものの、頭がくらくらして、まともに声も出せない。
「ねぇ、その子、弱ってるよ? ちょっと、どこかで休ませないと不味いんじゃない?」
「これ、ディランって名前だったと思うっ」
目を開けることさえままならない状態でも、彼らの声は、とても馴染み深いもので、すぐに、誰なのかが分かった。
(ローラン先生と、ユミリア様の、護衛の方々……)
彼らは、ユミリア様の次に強い存在だ。だから、僕はその事実に安心して、お守りを発動した瞬間にあの攻撃は消え失せていたにもかかわらず、意識を手放すのだった。
(ぐ、ぅ……)
助けを求めることもできないまま、いつの間にか壁に体重を預け、ズルズルと座り込む状態になる。
自慢ではないが、僕は、大きな病気にかかったことは一度もない。だから、こんな痛みの経験などなく、意識が遠退きそうになる。しかし……僕には、これが病などではないことを理解できていた。これは……僕を対象とした、明確な攻撃だ。
濁って淀んだ、不吉な魔力が、僕へ向けて放たれている。恐らくは、これに屈してしまえば、僕は、大切なものを失う。それが理解できたからこそ、必死に意識を保って抗う。
「うっ……」
(何か、何かっ、手はないかっ)
学園内でも身につけている魔導具など、ほとんどない。あるのは、ユミリア様からいただいた連絡用の腕輪と、不思議な模様が描かれたお守り、その他は、無闇に人の魔力を見てしまわないように、少しだけ抑制してくれる伊達眼鏡くらいだ。そして、その中で……使い道が全く分からないのは、お守りのみ。
ザラリとした布の袋に、紙を入れ、柔らかい紐で結ばれたそれは、ユミリア様の世界では当たり前の形状のお守りなのだそうだ。そして、ユミリア様が言うには、中身の紙は取り出してはならないとのこと。だから、僕はずっと、肌身離さず、ポケットに入れて持ち歩いていた。
(お守り……守って、もらえるだろうか……?)
また、あの時のように、ユミリア様がやってきて、助けてくれるのかもしれない。はたまた、イルト殿下のために作った魔導具のように、強力な結界が張られるのかもしれない。
(いずれにせよ、今、使えるのはこれだけっ)
魔導具であれば、魔力さえ込めれば、大抵発動するものだ。だから、僕は思いっきり、お守りに魔力を流し込んで……。
「のわっ!」
「っ、う……?」
なぜか、人の気配が全くなかったその場に、誰かの声が響く。
「って、お前、ユミリア様の友人じゃなかったか?」
聞き覚えのある声。その声に、僕は答えようとするものの、頭がくらくらして、まともに声も出せない。
「ねぇ、その子、弱ってるよ? ちょっと、どこかで休ませないと不味いんじゃない?」
「これ、ディランって名前だったと思うっ」
目を開けることさえままならない状態でも、彼らの声は、とても馴染み深いもので、すぐに、誰なのかが分かった。
(ローラン先生と、ユミリア様の、護衛の方々……)
彼らは、ユミリア様の次に強い存在だ。だから、僕はその事実に安心して、お守りを発動した瞬間にあの攻撃は消え失せていたにもかかわらず、意識を手放すのだった。
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