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第二章 少女期 瘴気編
第二百七十話 休まらない時(ミーシャ視点)
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お姉様とともに、元の星へと戻ってきた私は……少しばかり、勉強漬けの日々を送っていた。何せ、私の夢は、お姉様を支えるメイドになることだ。お姉様と同等、というわけにはいかずとも、頭が良いに越したことはない。幼い頃、スラムで明日生きられるかも分からないというような生活を送っていた私は、勉強くらい何ともないとばかりに、必死に机にかじりついていた。
「ミーシャ嬢、少し、休憩しないか?」
幼い頃にお姉様に出会えたおかげで、マナーに関してはほとんど問題はない。ダンスもちゃんと踊れる。苦手なのは、外国の言葉ではあるものの、それも、今は少しずつ、理解が深まっているのを実感する日々だ。
「ミーシャ嬢? おーい、ミーシャ嬢ー?」
(できれば、卒業までには、三か国語をマスターしたいところ……)
「……ミーシャ嬢」
「ひゃっ!?」
しっかりと勉強している中、ふいに、耳元で吐息混じりに囁かれ、ビクッと肩を震わせる。
「ア、アルト様? どうしてここに? ノックは……?」
「お茶に誘おうと思って……。ただ、何度もノックをして、返事がないから入ったんだ」
「す、すみませんっ」
ニコニコと微笑むアルト様の姿に、私は、ここがお城である事実を改めて実感しながら、急いで謝る。
お姉様のおかげで友人関係になっているとはいえ、相手は王太子だ。ある程度は許してくれると知っていても、無礼な振る舞いをして謝らないなんてことはできない。
「構わない。私も、邪魔をしてしまったしな。だが、そろそろ休憩を入れた方が良いと思うぞ?」
「はい」
アルト様は、私が何かに集中して、体が凝り固まったくらいのタイミングで声をかけてくれることが多い。実は過去に、集中し過ぎたせいか、風邪を引いて寝込んだことがあったので、もしかしたら、その時のことを引きずっているのかもしれなかった。
「それと、あの人物に関しての話もしたいと思う」
「……そう、ですね。お姉様達は、どんな様子ですか?」
「普段と変わらず。だが、ミーシャ嬢のおかげで、その歪さは際立って見える」
「……では、早く、お茶にしましょう」
「あぁ」
帰ってきて早々、私達……いや、私は、一つの大きな問題にぶち当たっていた。しかし、ソレに気づいたのは私だけ。その存在さえなければ、何の問題もない平穏な日常。ひとしきり悩み、私は、マーちゃんとスーちゃんに活躍してもらうことにした。すなわち、アルト様への連絡係を、担ってもらったのだ。
「ふんっ、我にかかれば、王子との連絡など、造作もないっ」
「あ、あの、イルトって人の家族……が、頑張る、けど、その……酷いこと、されない?」
それぞれ、白トカゲなマーちゃんと、黒いチビッ子ドラゴンなスーちゃんの言葉である。しかし、お姉様の諜報能力を掻い潜って、アルト様と話すには、魔力に敏感なこの二体に頼るほかなく、今だって、机にちょこんと乗っていたスーちゃんと、アルト様の肩に乗っているマーちゃんが大丈夫だと伝えてくれていたからこそ、話ができている。
アルト様に最初、話した時は、疑うわけではないけど、信じがたいという反応をされたものの、かの人物を監視した結果を見れば、その歪さに、アルト様も気づいてくれた。
(今の味方は、アルト様とマーちゃん、スーちゃんのみ。でも、早く、原因を突き止めないと)
アルト様に連れられて、私は、休憩を兼ねた情報交換会を行うことにした。
「ミーシャ嬢、少し、休憩しないか?」
幼い頃にお姉様に出会えたおかげで、マナーに関してはほとんど問題はない。ダンスもちゃんと踊れる。苦手なのは、外国の言葉ではあるものの、それも、今は少しずつ、理解が深まっているのを実感する日々だ。
「ミーシャ嬢? おーい、ミーシャ嬢ー?」
(できれば、卒業までには、三か国語をマスターしたいところ……)
「……ミーシャ嬢」
「ひゃっ!?」
しっかりと勉強している中、ふいに、耳元で吐息混じりに囁かれ、ビクッと肩を震わせる。
「ア、アルト様? どうしてここに? ノックは……?」
「お茶に誘おうと思って……。ただ、何度もノックをして、返事がないから入ったんだ」
「す、すみませんっ」
ニコニコと微笑むアルト様の姿に、私は、ここがお城である事実を改めて実感しながら、急いで謝る。
お姉様のおかげで友人関係になっているとはいえ、相手は王太子だ。ある程度は許してくれると知っていても、無礼な振る舞いをして謝らないなんてことはできない。
「構わない。私も、邪魔をしてしまったしな。だが、そろそろ休憩を入れた方が良いと思うぞ?」
「はい」
アルト様は、私が何かに集中して、体が凝り固まったくらいのタイミングで声をかけてくれることが多い。実は過去に、集中し過ぎたせいか、風邪を引いて寝込んだことがあったので、もしかしたら、その時のことを引きずっているのかもしれなかった。
「それと、あの人物に関しての話もしたいと思う」
「……そう、ですね。お姉様達は、どんな様子ですか?」
「普段と変わらず。だが、ミーシャ嬢のおかげで、その歪さは際立って見える」
「……では、早く、お茶にしましょう」
「あぁ」
帰ってきて早々、私達……いや、私は、一つの大きな問題にぶち当たっていた。しかし、ソレに気づいたのは私だけ。その存在さえなければ、何の問題もない平穏な日常。ひとしきり悩み、私は、マーちゃんとスーちゃんに活躍してもらうことにした。すなわち、アルト様への連絡係を、担ってもらったのだ。
「ふんっ、我にかかれば、王子との連絡など、造作もないっ」
「あ、あの、イルトって人の家族……が、頑張る、けど、その……酷いこと、されない?」
それぞれ、白トカゲなマーちゃんと、黒いチビッ子ドラゴンなスーちゃんの言葉である。しかし、お姉様の諜報能力を掻い潜って、アルト様と話すには、魔力に敏感なこの二体に頼るほかなく、今だって、机にちょこんと乗っていたスーちゃんと、アルト様の肩に乗っているマーちゃんが大丈夫だと伝えてくれていたからこそ、話ができている。
アルト様に最初、話した時は、疑うわけではないけど、信じがたいという反応をされたものの、かの人物を監視した結果を見れば、その歪さに、アルト様も気づいてくれた。
(今の味方は、アルト様とマーちゃん、スーちゃんのみ。でも、早く、原因を突き止めないと)
アルト様に連れられて、私は、休憩を兼ねた情報交換会を行うことにした。
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