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第二章 少女期 瘴気編
第二百六十九話 帰還
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スペースドラゴンだから、『スーちゃん』だと言って先ほど怯えていたそいつを紹介してきたミーシャ。ちなみに、クリスタルロードで仲間にしたマルなんとかというドラゴンは、マーちゃんと呼ばれており、それだけで、ミーシャの(残念な)ネーミングセンスが分かってしまう。
(って、そうじゃなくて……あぁ、確かに、これじゃあ、素材の採取は無理、か……)
さすがに、仲間から素材を採取するのは、それも、嫌がっているのに採取するのはダメだと思っているため、スペースドラゴンを守るために、ミーシャは最適な選択をしたのだと理解する。
「そう。なら、よろしくね。スーちゃん?」
『ひっ』
「あっ、スーちゃんは、ちゃんと私と契約したので、お姉様達にも言葉が分かるはずですよ?」
「ユミリアが必要としないなら、どうでも良い」
「そうですね。お嬢様が仲良くする道を選ぶというのなら、問題点を矯正する以外は自由にさせましょう」
「うん、そこら辺は、メリーに任せるね」
「はいっ」
何を矯正するつもりかは分からないものの、メリーならば大丈夫だろう。
何やらブルブルと振動する小さな黒いドラゴンを放置して、私は、さっさと宇宙船へと乗り込む。
『い、嫌だぁっ! ミ、ミーシャ! アレも怖いっ! た、頼むから、守ってくれぇぇえっ』
「女性に向かって『アレ』と呼ぶのもそうですが、殿方が女性に守ってくれだなんて……どうやら、躾のしがいがありそうですね」
「ごめん。無理。多分、殺されることはないだろうから、頑張って! スーちゃん!」
背後で、そんなやり取りはあったものの、どうにか全員乗り込んだことを確認した私は、元の星に向けて行路を設定する。
「しばらくすれば着くから、それまでは、行きと同じように、自由時間にするね」
ここに来る前には不安定だった心も、今は、とても安定している。イルト様が側に居るのはもちろんのこと、ちゃんと帰ったら、アノ人だって居る。そうなれば、不安定になるはずもなかった。ただ……。
「イルト様、一緒に、艦内を散策しませんか?」
そう尋ねた時、一瞬、イルト様が迷いを見せたような気がした。
「……分かった。一緒に、歩こう」
気のせい、と言われれば、そうかもしれないと思えるだけの変化。だから、私は、何かやりたいことがあったのだろうかと疑問に思いながらも、イルト様のその優しさに甘える。
後にして思えば、この時、その反応を見過ごすのではなく、追及していれば、少しは何か、変わっていたのかもしれない。その時の私は、ただただ、幸せを享受するばかりで……その裏にあるものに、気づいてなどいなかったのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただき、ありがとうございます。
すみません、昨日は、寝落ちして、全く更新ができませんでした(20時以降の記憶がない)
本当は、二話更新できたら良かったんですが、そこまでの余力はないので、一話のみで。
それでは、また!
(って、そうじゃなくて……あぁ、確かに、これじゃあ、素材の採取は無理、か……)
さすがに、仲間から素材を採取するのは、それも、嫌がっているのに採取するのはダメだと思っているため、スペースドラゴンを守るために、ミーシャは最適な選択をしたのだと理解する。
「そう。なら、よろしくね。スーちゃん?」
『ひっ』
「あっ、スーちゃんは、ちゃんと私と契約したので、お姉様達にも言葉が分かるはずですよ?」
「ユミリアが必要としないなら、どうでも良い」
「そうですね。お嬢様が仲良くする道を選ぶというのなら、問題点を矯正する以外は自由にさせましょう」
「うん、そこら辺は、メリーに任せるね」
「はいっ」
何を矯正するつもりかは分からないものの、メリーならば大丈夫だろう。
何やらブルブルと振動する小さな黒いドラゴンを放置して、私は、さっさと宇宙船へと乗り込む。
『い、嫌だぁっ! ミ、ミーシャ! アレも怖いっ! た、頼むから、守ってくれぇぇえっ』
「女性に向かって『アレ』と呼ぶのもそうですが、殿方が女性に守ってくれだなんて……どうやら、躾のしがいがありそうですね」
「ごめん。無理。多分、殺されることはないだろうから、頑張って! スーちゃん!」
背後で、そんなやり取りはあったものの、どうにか全員乗り込んだことを確認した私は、元の星に向けて行路を設定する。
「しばらくすれば着くから、それまでは、行きと同じように、自由時間にするね」
ここに来る前には不安定だった心も、今は、とても安定している。イルト様が側に居るのはもちろんのこと、ちゃんと帰ったら、アノ人だって居る。そうなれば、不安定になるはずもなかった。ただ……。
「イルト様、一緒に、艦内を散策しませんか?」
そう尋ねた時、一瞬、イルト様が迷いを見せたような気がした。
「……分かった。一緒に、歩こう」
気のせい、と言われれば、そうかもしれないと思えるだけの変化。だから、私は、何かやりたいことがあったのだろうかと疑問に思いながらも、イルト様のその優しさに甘える。
後にして思えば、この時、その反応を見過ごすのではなく、追及していれば、少しは何か、変わっていたのかもしれない。その時の私は、ただただ、幸せを享受するばかりで……その裏にあるものに、気づいてなどいなかったのだ。
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お読みいただき、ありがとうございます。
すみません、昨日は、寝落ちして、全く更新ができませんでした(20時以降の記憶がない)
本当は、二話更新できたら良かったんですが、そこまでの余力はないので、一話のみで。
それでは、また!
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