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第二章 少女期 瘴気編
第二百六十三話 取り戻すもの
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その介入した神について尋ねてみれば、ムムから、申し訳なさそうな表情で、『現在、捜索中』との答えが返ってくる。神様の世界は、一枚岩ではないらしい。
「介入した神の目的が分からない以上、不用意にミーシャさんへ接触するのは避けたかったところではあるけど……今は、そうも言っていられない状況よ。敵は、本格的に動き出しており、ミーシャさんの存在はユミリアさんの助けとなるだろうと思っているの」
「お姉様の助けになれるなら喜んで力を尽くしますっ」
ふんすと、鼻息荒く宣言するミーシャは、今の不安定な私にとって、頼もしい限りだった。
「えぇ、何かあれば、お願いすることもあるかもしれないから、よろしくね」
「はいっ」
と、そんな話をしていると、ふいに、ムムが庭園の奥へ視線を巡らせて、女神に告げる。
「準備が整ったみたいですよー?」
「そう……では、ユミリアさん。記憶を取り戻すための準備は整いました。今からすぐに、向かいますか?」
「っ……」
そういえば、私は記憶を取り戻すためにここに来たのだと思うと同時に、記憶が戻るはずなのに、不安を抱いてしまう。
「お姉様?」
「どうなさいましたか?」
そんな私に、ミーシャとメリーは不思議そうな視線を向けてくる。しかし、私は自分でも、何を不安に思っているのか分からないため、説明のしようもなく、大丈夫だと告げようとしたところ……。
「無理する必要はない」
イルト様の言葉に、私は、告げようとした言葉を忘れて、止まる。
「自分の記憶を、知らないやつに弄られるなんて、怖がるなという方が無理だ」
(あ……)
自分でも分からなかった不安の正体。それを、イルト様は的確に言い当ててくれる。
女神に会ったのは、今日で二回目。ムムに至っては、初対面だ。信頼関係を築けたわけでもない彼女達から、記憶を戻してあげると言われても、警戒や恐怖が先立つのは当たり前のことだったのだ。
「ユミリアさんが嫌なのであれば、また後日に回すことも可能よ。どうします?」
女神は、イルト様の言葉に気分を害した様子もなく、私を気遣う言葉をかけてくれる。始めに、向かうかどうかを尋ねた段階で、この状況は予測していたのだろう。だから、私は……。
「行きます。……どこか、間違っているかもしれないけど、それでも、ちゃんと記憶を取り戻して、皆と向き合いたいから。ただ……ちょっと怖いから、イルト様に側に居てもらいたいです」
イルト様へと、自分の希望を告げれば、イルト様は『もちろん』と応えてくれる。
「分かりました。では、お二人を案内しましょう」
そして、次の瞬間、私とイルト様は、真っ白な空間に転移させられた。
「介入した神の目的が分からない以上、不用意にミーシャさんへ接触するのは避けたかったところではあるけど……今は、そうも言っていられない状況よ。敵は、本格的に動き出しており、ミーシャさんの存在はユミリアさんの助けとなるだろうと思っているの」
「お姉様の助けになれるなら喜んで力を尽くしますっ」
ふんすと、鼻息荒く宣言するミーシャは、今の不安定な私にとって、頼もしい限りだった。
「えぇ、何かあれば、お願いすることもあるかもしれないから、よろしくね」
「はいっ」
と、そんな話をしていると、ふいに、ムムが庭園の奥へ視線を巡らせて、女神に告げる。
「準備が整ったみたいですよー?」
「そう……では、ユミリアさん。記憶を取り戻すための準備は整いました。今からすぐに、向かいますか?」
「っ……」
そういえば、私は記憶を取り戻すためにここに来たのだと思うと同時に、記憶が戻るはずなのに、不安を抱いてしまう。
「お姉様?」
「どうなさいましたか?」
そんな私に、ミーシャとメリーは不思議そうな視線を向けてくる。しかし、私は自分でも、何を不安に思っているのか分からないため、説明のしようもなく、大丈夫だと告げようとしたところ……。
「無理する必要はない」
イルト様の言葉に、私は、告げようとした言葉を忘れて、止まる。
「自分の記憶を、知らないやつに弄られるなんて、怖がるなという方が無理だ」
(あ……)
自分でも分からなかった不安の正体。それを、イルト様は的確に言い当ててくれる。
女神に会ったのは、今日で二回目。ムムに至っては、初対面だ。信頼関係を築けたわけでもない彼女達から、記憶を戻してあげると言われても、警戒や恐怖が先立つのは当たり前のことだったのだ。
「ユミリアさんが嫌なのであれば、また後日に回すことも可能よ。どうします?」
女神は、イルト様の言葉に気分を害した様子もなく、私を気遣う言葉をかけてくれる。始めに、向かうかどうかを尋ねた段階で、この状況は予測していたのだろう。だから、私は……。
「行きます。……どこか、間違っているかもしれないけど、それでも、ちゃんと記憶を取り戻して、皆と向き合いたいから。ただ……ちょっと怖いから、イルト様に側に居てもらいたいです」
イルト様へと、自分の希望を告げれば、イルト様は『もちろん』と応えてくれる。
「分かりました。では、お二人を案内しましょう」
そして、次の瞬間、私とイルト様は、真っ白な空間に転移させられた。
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