悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百六十話 モフ恋とこの世界1

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 まるで、私は、この女神の都合で転生させられたかのような発言に、何も言えない私。そんな私に気づいているのかいないのか、ムムは、話を続ける。


「愛し子ちゃん……本来の、ユミリア・リ・アルテナの魂はー、何度も何度も、悲惨な運命を迎えて、死んじゃったんですよねー? でもぉ、彼女がちゃんと寿命で死ななければ、世界が滅びちゃうってことでー、何度も何度も同じ時間軸を繰り返してたらー、魂の方に限界が訪れてー、その消滅しかけの魂を保護してー、ちょうど良いタイミングで彼女を救えそうな魂が来たから、急いで転生させたんですよねー?」

「そう、ね……でも、それは、女神として必要なことだわ」

「だとしてもー、それで謝罪しないのは、違いますよー? ほらっ、土下座ーっ。……私も、一緒謝りますから、ね?」


 本来のユミリアの魂のことだとか、ユミリアが寿命をまっとうしなければ世界が滅びるとは何だとか、聞きたいことは山ほどある。しかし、思いがけず、真剣な表情でこちらへ向き直ったムムの姿に、私は言葉を呑み込む。


「田中雪様。この度は、こちらの都合で、あなた様に多大なる負担を強いてしまったこと、深くお詫びいたします」

「え……あ……」

「そう、ね。私も、まずは謝るべきでした。雪さん、勝手に巻き込んでしまって、本当に、申し訳ありませんでした。お詫びに、私が叶えられる範囲の願いを三つ、叶えます」


 何が何だか分からないままに謝罪を受けて、私は、混乱することしかできない。


「ねぇ、まずは、説明して? ユミリアが内容を理解しないままの謝罪に、意味なんてない」


 そんな私の隣で、二人に敵意を剥き出しにしたイルト様が睨みながら告げる。


「あぁ、すみませんー。気が逸ってしまいましたねー。それじゃあ、女神様ー、ここは、しっかり、がっつり、説明してくださいねー?」

「えぇ、そう、ね」


 そうして説明されたのは、私達が知る『モフ恋』は、この世界の方が元になって、私達の世界に渡ってきたものだということ。その中に描かれたバッドエンドもハッピーエンドも、全て、この世界で実際に起こったのだということ。また、その描かれた出来事は、ほんの一部だということ……。


「それは……僕達は、何度も、この時間を繰り返している、ということ?」

「はい、私達の目的はただ一つ。愛し子である、ユミリア・リ・アルテナを救って、世界の崩壊を防ぐことです。そのために必要ならば、私達は、何度でも繰り返そうと、時間を繰り返してきました。ですが……その行為は、愛し子の魂を傷つける結果にしかなりませんでした。どうあっても、彼女は、寿命を迎える遥か手前で亡くなってしまうのです」

「それは……つまり、元のユミリア・リ・アルテナは、ゲームで描かれたどのエンドでも、亡くなっている、ということですか? そして、そこから世界が崩壊している、と?」


 そんなミーシャの問いかけに、女神は『はい』と答える。


「アレの目的は、世界の破壊。ですから、愛し子である彼女は、集中的に狙われ、何度も力尽きたのです」


 あまりにも壮大な話に、私は頭が痛くなってくる。


「そして、今は……愛し子の器を得た雪さんが、狙われる対象です」


 そんな言葉に、私は、本格的に現実逃避をするべく、遠い目になった。
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