悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百五十一話 不安定な心

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 ソーリア星に行けば、このスペースドラゴンに再生の能力を与えた者に会える。魔女と呼ばれるその人物には全く心当たりはなかったが、ミーシャは懸命に、スペースドラゴンを守るべく、ソーリア星へ行こうと提案していた。しかし……。


(そこに行っても、帰れない……)


 ミーシャは、良い子だ。イルト王子や、メリーさん、その他の人達も、とても優しくしてくれる。それでも、私の心にできた大きな穴は埋まらない。周りが良い人達ばかりだからこそ、我が儘で泣き叫ぶわけにもいかない。


(まずは、ギリア君を助けなきゃ。それには、スペースドラゴンをたくさん倒して、薬を作れば良いはず。そんな寄り道なんて、必要ない)


 スペースドラゴンが泣き叫び、恐怖に怯えても、そこにはどこか、現実感がなかった。
 ユミリアとして目覚めて、私を助けるために危険を冒した人が居ることを知って、よく知りもしないその人のために、薬を作ろうと奔走する日々。忙しくしている間は良かった。周りに、この優しい人達が居る間も我慢できた。しかし、夜、一人になれば、途端に家族が恋しくて、この状況がいつまで続くか分からない恐怖に、心が押し潰されそうだった。
 スペースドラゴンを前にして、手にした力で討伐できた時は、とても爽快だった。だから、何度も何度も殺して、殺して……それでも、ミーシャが可哀想だと言うから、スペースドラゴンの言葉が分かるイヤリングを渡してあげた。


(八つ当たり、なんだろうね……)


 心は荒んでいたものの、自分の行動を多少分析するくらいのことはできた。ただ、それが分かったからといって、その行動を止めることはできなかった。
 心を占めるのは、スペースドラゴンを殺さなきゃという思念のみ。ミーシャの提案を受け入れるつもりは、全くない。


「ユミリア、討伐を続けるにしても、ソーリア星に行くにしても、少し休もう」

「そうですね。お嬢様、お疲れでしょう? 美味しいハーブティーをご用意いたしますね?」

「えっ、あー……そうですよね。お姉様だって、疲れてますもんねっ。ほらっ、外に行きましょう!」


 話しかけられている内容は理解できる。このイヤリングがあれば、イルト王子やメリーさんの言葉は分かる。しかし、私は疲れてなどいない。


「私は問題ないよ。まだまだたくさん、素材は必要なんだから、しっかり集めなきゃ」


 そう笑顔で言うも、ミーシャは顔を曇らせる。


「お姉様。休息は必要です。ほ、ほら、お姉様だけじゃなくて、他の方の休息も必要でしょう?」

「なら、皆は休んでも良いよ。私は、素材集めをしておくから」

「いえ、あの……」


 言葉に詰まるミーシャを前に、私は再びスペースドラゴンへと向き直ろうとして……誰かに、腕を取られた。
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