悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百四十八話 スペースドラゴン討伐

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 私達が目指したのは、惑星ラパパラ。真っ黒な大地に、深紅の川、紫の木々が疎らに生えるような星だ。この星には、たった一つの生命体しか存在しない。そして、それは、永遠の命を持ち、何度でも再生する。


「お姉様、何をなさっているのですか?」

「うん……ちょっと待ってね。もうちょっとで完成するから」


 ラパパラへと宇宙船が降り立つ頃、私は懸命に小さなイヤリングを作っていた。そして……。


「できた! これで、イルト王子達の言葉が翻訳されるはずっ」


 青い小鳥型のイヤリング。それをすぐさま耳たぶにつければ、効果はすぐに発揮される。


「ユミリアお嬢様は、何を作ったのでしょうか?」


 私の完成の叫びに対して、メリーさんが不思議そうにミーシャへと尋ねている。


「ミーシャ、これは、この世界の言葉を翻訳して、私に伝えてくれるものだって伝えてみて?」

「っ、はい!」


 そうして伝えてもらえば、当然、イルト王子達も私の言葉が分かるようになる道具を欲しがったものの、さすがに、それを作る余裕はないので諦めてもらう。


「とりあえず、討伐に行って、たくさん素材を集めないとね」


 それぞれに紫の腕輪を渡してつけてもらうと、私は一直線に、この星で唯一の生命体が活動する領域へと向かう。


「その腕輪は、この星の毒素を無効化して、重力を私達に合ったものへと操作してるの。もちろん、酸素の供給だってしてくれてるから、これがライフラインってことになる。この星で活動する間は、外さないようにね?」


 そう告げて、ミーシャに私の言葉を伝えてもらった後、巨大な門のみがそびえる場所へとやってくる。


「門だけ……?」

「うん、門だけ。でも、ここをくぐれば、スペースドラゴンが敵対してくるから……準備は良いかな?」


 門の後ろには、代わり映えのない黒い大地が続くのみ。しかし、この門を開けることで、スペースドラゴンの領域に足を踏み入れることとなる。
 一様に真剣な表情を浮かべるメンバーを確認した私は、巨大な門へ両手を置き……一気に力を込めて、破壊した。


「ふぇえっ!? お姉様!?」

「見通しが良くなったよ?」

「あぁ、確かに、この方法の方が良いな」

「さすがはお嬢様です」


 と、そんな雑談をしている私達の元に、低い低い、唸り声が響く。


「グルルルルァァァァアッ!!!」


 怒り心頭。そうとしか見えない、闇色のドラゴンの姿が、そこにあらわになり、私達は各々の武器を手に、討伐を開始するのだった。









「よしっ、二十回目!」

「これで、素材は二十個か……あと、八十回だったか?」

「お嬢様、次は、私にお任せください。綺麗に倒してみせましょう」


 私の言葉は、イルト王子やメリーさんには伝わらないはずなのに、なぜか、普通に会話できている気分になる。


「え、えっと、お姉様……? さすがに、あれは、可哀想なのでは……?」


 ミーシャが示す『あれ』とは、討伐対象のスペースドラゴンのことだ。スペースドラゴンは不老不死のドラゴンだ。いや、正確には、死んでも数分後には蘇るドラゴンだ。だから、二十回心臓を抉り取られても、スペースドラゴンはまた心臓を再生させて、蘇ってくれる。つまりは……。


「素材、取り放題」

「キュルルルルゥゥウッ!!?」


 二十一回目の討伐。門の外に出なければスペースドラゴンは再生しないので、いちいち門の外へ出て、再生させてから入っていたのだが、三回目くらいまでは、まだ威勢が良かったのだ。四回目になると、少し怯えが混ざり、六回目になると、媚びたような鳴き声を発し始める。それでも討伐されると分かると、七回目から十回目辺りはヤケクソの攻撃を仕掛けてきて、十一回目となると逃げ回り、ブルブル震えて涙を流すようになる。十五回目からは、抵抗らしい抵抗もできない様子で、必死に媚びた鳴き声を出し続ける。十八回目からは、目が完全に死んでおり、今、二十一回目では、どうにも、私達の言葉を理解したらしく、必死になって大粒の涙を流して何かを訴えかけている。


「キュウッ、キュルルゥッ」

「……お、お姉様? これをまだ、討伐するんですか?」

「うん? だって、最低でも百個は必要だって最初に話したでしょう?」

「……それは、そう、なんですけど……」

「ふふっ、お嬢様のために、まだまだたくさん死んでくださいね?」

「ヒキュッ、キュウゥッ!!」


 そうこう話している間に、メリーさんがザシュッと殺してしまっていた。


「あっ、多分、これ着けたら、あのドラゴンの言葉が分かるよ?」


 メリーさんから素材(心臓)を受け取った私は、今思い出したとばかりに、赤い雫のイヤリングをミーシャに手渡す。


「お、お姉様……?」

「せめて、楽に死ねるように、ミーシャが交渉してみる?」


 そう告げれば、ミーシャは、絶望した表情を浮かべて、恐怖一色に染まったまま絶命したドラゴンへと視線を移し……。


「や、やってみます」


 顔を青くしながらも、応えてくれるのだった。
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