悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百三十一話 取り戻した平穏は……

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 あれから、私はイルト様と一緒にお城で暮らして、思う存分イチャイチャしたり、勉強したり、色々作ったりしてきた。私のおまけとしてお城にやってきたミーシャは、いつの間にかアルト様に口説き落とされ、男爵令嬢という身分にも関わらず、アルト様の婚約者となり、私達の結婚式の一週間前に式を挙げることに決まった。


(まぁ、ミーシャはヒロインだから、アルト様の相手になる可能性はあったけど……悪役令嬢不在でも、何とかなるものなんだね)


 アルト様に別の婚約者が居れば、色々と問題があったのだろうが、昔、私の前世の話を聞いた国王陛下が、アルト様の婚約者は、そのゲーム内容の結末に左右されかねないということですぐには決めずにいてくれたおかげで、どうにかなった。もちろん、これからアルト様の婚約者の座を狙っていたご令嬢方や男爵令嬢という身分が気にくわない者からの妨害やら何やらがあるだろうとは思われるが、そこは、私も全力で守ってみせるし、マルディックという小さな護衛も居るから大丈夫だろう。

 ちなみに、ミルラスは、公爵家の使用人として受け入れられ、魔王は、イルト様達がクリスタルロードを攻略してくれたおかげで、少しずつ記憶を取り戻してきている。当初、あのネズミが魔王だと知ったイルト様が、うっかりピチュンと潰しかけて、慌てて取り上げるというハプニングはあったものの、今は、とりあえずペット枠として許容してもらっている。

 そんなこんなで、平穏を取り戻した私は、学園にも狂信者達がはびこる状況に恐怖しながら、黒への差別がなくなったことに喜んでいた。


「ユミリア、何か嬉しいことでもあった?」

「ふふっ、いや、差別がなくなって、イルト様が蔑まれなくなって、嬉しいなぁって」

「そう。僕も、ユミリアを悪く言う蛆虫が居なくなったのは嬉しいよ。排除の手間が省けるからね」


 学園の中庭で、イルト様とのんびりしていた私は、イルト様の過激な発言に苦笑しながら、そっと、隣に座るイルト様の髪に触れる。


「ユミリア?」

「んっ、何でもない」


 私の愛しい愛しい黒髪の王子様。彼が、隣に居てくれることが何よりも幸せで、自然と笑みがこぼれてしまう。


(この幸せが、ずっと、ずっと、続いてくれますように)


 暖かな日差しの中、私がそんな祈りを捧げた直後だった。


「っ、ユミリア!!」


 イルト様の焦ったような声が聞こえたかと思えば、何かが割れる音とともに、私の意識は暗転するのだった。
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