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第二章 少女期 瘴気編
第二百二十六話 今日は何の日?
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久々に、グッスリと眠って、頭の中がすっきりとした私は……自分が、どこで、どんな風に眠ったのかを思い出して、ついでに、目の前にイルト様が居るという状況に直面して、目覚めて早々、思考停止に陥る。
「ユミリア、もう、大丈夫?」
「ひゃいっ!」
ほんのりと頬を赤くしたイルト様に、優しく問われて、必死に返事をした私は、眠る前の自分を殴りたくなる。
(こ、婚約者とはいえ、イルト様のベッドに、イルト様と一緒に入ってしまった……)
確かに、イルト様に包まれて安心したのは本当だ。ずっと張り詰めていた意識を、イルト様が側に居てくれたことで緩めていたのもある。しかし、だからといって、この年で婚約者に添い寝をしてもらうということは、令嬢としてあり得ないことだ。
(下手したら、私だけでなく、イルト様の醜聞にもなってしまうっ)
「ユミリア、本当に大丈夫? 無理なら、その……もう少し、眠る?」
「いいえっ、起きます! 元気ですっ。大丈夫ですっ」
心の底から心配してくれるイルト様の発言にギョッとしながら、私は心に決める。
(もし、これで醜聞になったら……その噂がなくなるまで、実力行使をすれば良いんだよね?)
そう思いながら、身支度を整えるためにメイドが呼ばれ、イルト様と別れてから、ふと思い出す。
(そういえば、魔王とミルを置いてきちゃったな)
まだ、二人については何も説明していなかったが、恐らく、ミル辺りがちゃんと説明をしてくれているだろう。
お城のメイド達は優秀で、あっという間に身支度を整えてくれて、王妃様からの贈り物だと言って、深紅を基調としたドレスを着せてもらう。腰には、黒いリボンがあり、襟もリボンと同じ黒い生地だ。胸元には、周りを真珠で固めたオニキスのブローチが飾られる。
全体的に大人っぽい雰囲気の素敵なドレス。それを身に纏い、髪もハーフアップにしてもらったところでイルト様がもう一度顔を出す。
「綺麗だ。ユミリア」
ボーッと見惚れたように呟くイルト様に、私は頬に熱が集まるのを感じながらも、お礼を言う。
「それじゃあ、行こうか、ユミリア」
「はい」
恐らくは、疲れていた私のために、陛下への謁見を後回しにしてくれたのだろうと考えて、イルト様の手を取る。
「誕生日、おめでとう。ユミリア」
しかし、蕩けるような笑みで告げられたその一言で、私は硬直する。
(誕生、日……? えっ? 今日? 私の誕生日? ってことは……)
「あ、あの、イルト様。私っ」
「大丈夫。とにかく、行こう。皆待っているから」
いつも、イルト様に出会った記念日だからと、イルト様にプレゼントを用意していたのに、今回はそれがすっかり抜けていた。しかし、私が謝罪するより先に、動くことを促される。
(ん? ちょっと待って? もしかして、国王陛下への挨拶では、ない?)
そうして、辿り着いた先で、私は熱烈な歓迎を受けるのだった。
「ユミリア、もう、大丈夫?」
「ひゃいっ!」
ほんのりと頬を赤くしたイルト様に、優しく問われて、必死に返事をした私は、眠る前の自分を殴りたくなる。
(こ、婚約者とはいえ、イルト様のベッドに、イルト様と一緒に入ってしまった……)
確かに、イルト様に包まれて安心したのは本当だ。ずっと張り詰めていた意識を、イルト様が側に居てくれたことで緩めていたのもある。しかし、だからといって、この年で婚約者に添い寝をしてもらうということは、令嬢としてあり得ないことだ。
(下手したら、私だけでなく、イルト様の醜聞にもなってしまうっ)
「ユミリア、本当に大丈夫? 無理なら、その……もう少し、眠る?」
「いいえっ、起きます! 元気ですっ。大丈夫ですっ」
心の底から心配してくれるイルト様の発言にギョッとしながら、私は心に決める。
(もし、これで醜聞になったら……その噂がなくなるまで、実力行使をすれば良いんだよね?)
そう思いながら、身支度を整えるためにメイドが呼ばれ、イルト様と別れてから、ふと思い出す。
(そういえば、魔王とミルを置いてきちゃったな)
まだ、二人については何も説明していなかったが、恐らく、ミル辺りがちゃんと説明をしてくれているだろう。
お城のメイド達は優秀で、あっという間に身支度を整えてくれて、王妃様からの贈り物だと言って、深紅を基調としたドレスを着せてもらう。腰には、黒いリボンがあり、襟もリボンと同じ黒い生地だ。胸元には、周りを真珠で固めたオニキスのブローチが飾られる。
全体的に大人っぽい雰囲気の素敵なドレス。それを身に纏い、髪もハーフアップにしてもらったところでイルト様がもう一度顔を出す。
「綺麗だ。ユミリア」
ボーッと見惚れたように呟くイルト様に、私は頬に熱が集まるのを感じながらも、お礼を言う。
「それじゃあ、行こうか、ユミリア」
「はい」
恐らくは、疲れていた私のために、陛下への謁見を後回しにしてくれたのだろうと考えて、イルト様の手を取る。
「誕生日、おめでとう。ユミリア」
しかし、蕩けるような笑みで告げられたその一言で、私は硬直する。
(誕生、日……? えっ? 今日? 私の誕生日? ってことは……)
「あ、あの、イルト様。私っ」
「大丈夫。とにかく、行こう。皆待っているから」
いつも、イルト様に出会った記念日だからと、イルト様にプレゼントを用意していたのに、今回はそれがすっかり抜けていた。しかし、私が謝罪するより先に、動くことを促される。
(ん? ちょっと待って? もしかして、国王陛下への挨拶では、ない?)
そうして、辿り着いた先で、私は熱烈な歓迎を受けるのだった。
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