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第二章 少女期 瘴気編
第二百二十一話 わちゃわちゃ
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いつも通りのイルト様に戻ったことを確認した私は、しばらくの間、それを見なかったことにして、ひたすら甘え続けた。
(イルト様の匂い。イルト様の感触。イルト様の声……ふぁぁあっ、幸せ~)
「あ、主様が、ここまで喜ぶとは……」
「ちゅう……それより、あの男、何者?」
「いや、待つのじゃ。あの男、主様に抱きつかれて意識を飛ばしておるぞ?」
「……先ほどは、あれだけの威圧感があったのに、か?」
ギュムギュムスリスリとイルト様を堪能している中、二人の会話が聞こえてきて……聞き捨てならない言葉が、そこに含まれていることに気づく。
「きゃあぁぁぁあっ!! イルト様!?」
つい先ほどまで、危険な魔物がはびこる孤島に居たため、私はフル装備であり、イルト様を支えるくらい、簡単だった。だからこそ、ギュムギュムスリスリして、イルト様の体から力が抜けていることに気づかず、イルト様の体を支え続けていたらしい。
「っ、お嬢様!?」
私の悲鳴を聞きつけて、まずは、メリーが扉をぶち破って現れる。
「み、みゅ?」
「お嬢様……本当に、お嬢様、なのですね?」
ボロボロと涙を流すメリーを前に、私はひとまず、混乱に陥る。
(イルト様が意識を失って、メリーが扉を破って、メリーが泣いていて……えっと?)
しかし、この混乱はまだまだ序の口だった。
「ユミリア!」
「ユミリアちゃん!?」
「姉上ーっ!」
メリーが破った扉をさらに大きく破壊するお父様と、それに眉一つ動かさず、一目散に私の元へとやってきて、お父様を押し退けるお継母様。それから少し遅れて走ってきた弟のギリア。
「え、えっと」
「お嬢様。そちらは預かりましょう」
「みゅ?」
特に荷物など持っていないはずなのに、メリーからそんな声をかけられて首をかしげれば、ひょいっとイルト様がメリーに拐われる。
「メ、メリー?」
「大丈夫です。イルト殿下はお疲れのご様子なので、部屋にお運びするだけです」
十二歳でまだまだ子供とはいえ、それなりに身長も体重もあるイルト様を、メリーはいとも容易く肩に担いで、笑顔を浮かべて退散する。
「ユミリアちゃん。大丈夫? どこも怪我してない?」
「ユミリア、よく帰ってきてくれたっ! 本当にっ、本当にっ、良かった!」
「姉上! 心配しました!」
イルト様をメリーに任せて良かったのだろうかと思ったのもつかの間。お父様達は、全員、目に涙を浮かべて、私の無事を喜んでくれる。
「うむ、主様は、愛されておるなぁ」
「愛……あれが、愛……?」
ミルラスはうんうんとうなずくばかりで助けてくれそうにないし、魔王は、初めて見る愛情というものに興味津々で観察中といった様子だった。つまりは、私はここで、孤立無援になったということで……。
「ユミリア!」
「ユミリア様!」
「やっぱり、帰ってきてた! ユミリアーっ」
ついでにセイ達も集ってきては、もう、収拾がつかない。
一通り、されるがままでいるしかないのだと、私はこの瞬間、覚悟を決めたのだった。
(イルト様の匂い。イルト様の感触。イルト様の声……ふぁぁあっ、幸せ~)
「あ、主様が、ここまで喜ぶとは……」
「ちゅう……それより、あの男、何者?」
「いや、待つのじゃ。あの男、主様に抱きつかれて意識を飛ばしておるぞ?」
「……先ほどは、あれだけの威圧感があったのに、か?」
ギュムギュムスリスリとイルト様を堪能している中、二人の会話が聞こえてきて……聞き捨てならない言葉が、そこに含まれていることに気づく。
「きゃあぁぁぁあっ!! イルト様!?」
つい先ほどまで、危険な魔物がはびこる孤島に居たため、私はフル装備であり、イルト様を支えるくらい、簡単だった。だからこそ、ギュムギュムスリスリして、イルト様の体から力が抜けていることに気づかず、イルト様の体を支え続けていたらしい。
「っ、お嬢様!?」
私の悲鳴を聞きつけて、まずは、メリーが扉をぶち破って現れる。
「み、みゅ?」
「お嬢様……本当に、お嬢様、なのですね?」
ボロボロと涙を流すメリーを前に、私はひとまず、混乱に陥る。
(イルト様が意識を失って、メリーが扉を破って、メリーが泣いていて……えっと?)
しかし、この混乱はまだまだ序の口だった。
「ユミリア!」
「ユミリアちゃん!?」
「姉上ーっ!」
メリーが破った扉をさらに大きく破壊するお父様と、それに眉一つ動かさず、一目散に私の元へとやってきて、お父様を押し退けるお継母様。それから少し遅れて走ってきた弟のギリア。
「え、えっと」
「お嬢様。そちらは預かりましょう」
「みゅ?」
特に荷物など持っていないはずなのに、メリーからそんな声をかけられて首をかしげれば、ひょいっとイルト様がメリーに拐われる。
「メ、メリー?」
「大丈夫です。イルト殿下はお疲れのご様子なので、部屋にお運びするだけです」
十二歳でまだまだ子供とはいえ、それなりに身長も体重もあるイルト様を、メリーはいとも容易く肩に担いで、笑顔を浮かべて退散する。
「ユミリアちゃん。大丈夫? どこも怪我してない?」
「ユミリア、よく帰ってきてくれたっ! 本当にっ、本当にっ、良かった!」
「姉上! 心配しました!」
イルト様をメリーに任せて良かったのだろうかと思ったのもつかの間。お父様達は、全員、目に涙を浮かべて、私の無事を喜んでくれる。
「うむ、主様は、愛されておるなぁ」
「愛……あれが、愛……?」
ミルラスはうんうんとうなずくばかりで助けてくれそうにないし、魔王は、初めて見る愛情というものに興味津々で観察中といった様子だった。つまりは、私はここで、孤立無援になったということで……。
「ユミリア!」
「ユミリア様!」
「やっぱり、帰ってきてた! ユミリアーっ」
ついでにセイ達も集ってきては、もう、収拾がつかない。
一通り、されるがままでいるしかないのだと、私はこの瞬間、覚悟を決めたのだった。
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