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第二章 少女期 瘴気編
第二百十四話 ユミリア嬢との出会い2(ハイル視点)
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そこから先は、圧巻の一言だった。取り囲んでいた男達を、フードの女性は……あろうことか、男の急所を的確に蹴り上げていき、悶絶させた。かくいう俺も、あまりのえげつなさに、その場所を押さえたのは言うまでもない。
周囲を見れば、俺と同じ動作をしている男の数は多い。女性を取り囲んでいた男達は完全に伸びて、身動きが取れずに倒れている。本来ならば、男達とフードの女性、それぞれに事情を聞くべき騎士も、あの光景を目撃してしまったがために、真っ青になって、股を押さえている。
(と、いうか、来てたんだな。騎士)
恐らくは、誰かが通報したのだろう。しかし、その騎士達は、互いに視線を送り合いながら、最初に声をかける栄誉を譲り合っている。
(まぁ……気持ちは、分かる)
さすがに、この場に呼ばれた騎士が気の毒に思えてきたところで……。
「すみません、少し、良いですか?」
「え?」
あの女性の声が間近に聞こえ、騎士達へ向けていた視線を戻そうとしたところで……。
「ぐえっ」
お腹に何かが食い込んで、俺の体は宙に浮く。
(な、何がっ)
「すこーしだけ、顔を貸してくださいね?」
お腹に手を当てることで、どうやらロープらしきものが腹に巻かれて、それを引っ張られたのだということを理解した直後……俺は…………星になった(訳、わけも分からず、誘拐された)。
そうして、連れてこられた場所は、どことも知れぬ真っ暗な一室。そこで俺は、彼女が本当にユミリア嬢だったことを知る。
「どこかでお会いしましたか?」
「あ、あぁ、ほら、ユミリア嬢の五歳の誕生パーティー、で……」
言ってから気づく。もしかしたら、ユミリア嬢はあの時のことを根に持っているかもしれないと。
「五歳、誕生パーティー……あぁっ、もしかして、あれですか? 私に絡んだは良いものの、拳が効かなくて、むしろ、逆に痛めつけられて、男の子なのに、泣いて、お母様のことを呼んでいた子!!」
「ぐぉおっ、やめろっ! やめてくれぇっ!!」
「いやぁ、情けなかったですよねぇ? 自分より小さな女の子に、色々と取り巻きまで引き連れていたのに、全然歯が立たなくて!」
「謝る! 謝るからっ! それ以上はどうか!!」
「えっ? いやですよ? だって、イルト様との初エンカウントの直後に絡まれたなんて、嫌な記憶ランキングの五十位以内には入りそうだしっ!」
「俺が言うまで、忘れてただろ!」
「それはそれ、これはこれ、です」
にっこりニコニコと毒を吐くユミリア嬢。その様子に、戦慄を覚えつつ、俺は何とかこの場から脱出しようとするのだが、その行動は、ことごとくユミリア嬢に妨害され、俺は何度も投げ飛ばされる。そうして、一通りの黒歴史を……なぜか、ユミリア嬢が知るはずのないものまで延々と語られて、抵抗する気力すら失ったところで、これまたなぜか、決闘をすることになっていた。
周囲を見れば、俺と同じ動作をしている男の数は多い。女性を取り囲んでいた男達は完全に伸びて、身動きが取れずに倒れている。本来ならば、男達とフードの女性、それぞれに事情を聞くべき騎士も、あの光景を目撃してしまったがために、真っ青になって、股を押さえている。
(と、いうか、来てたんだな。騎士)
恐らくは、誰かが通報したのだろう。しかし、その騎士達は、互いに視線を送り合いながら、最初に声をかける栄誉を譲り合っている。
(まぁ……気持ちは、分かる)
さすがに、この場に呼ばれた騎士が気の毒に思えてきたところで……。
「すみません、少し、良いですか?」
「え?」
あの女性の声が間近に聞こえ、騎士達へ向けていた視線を戻そうとしたところで……。
「ぐえっ」
お腹に何かが食い込んで、俺の体は宙に浮く。
(な、何がっ)
「すこーしだけ、顔を貸してくださいね?」
お腹に手を当てることで、どうやらロープらしきものが腹に巻かれて、それを引っ張られたのだということを理解した直後……俺は…………星になった(訳、わけも分からず、誘拐された)。
そうして、連れてこられた場所は、どことも知れぬ真っ暗な一室。そこで俺は、彼女が本当にユミリア嬢だったことを知る。
「どこかでお会いしましたか?」
「あ、あぁ、ほら、ユミリア嬢の五歳の誕生パーティー、で……」
言ってから気づく。もしかしたら、ユミリア嬢はあの時のことを根に持っているかもしれないと。
「五歳、誕生パーティー……あぁっ、もしかして、あれですか? 私に絡んだは良いものの、拳が効かなくて、むしろ、逆に痛めつけられて、男の子なのに、泣いて、お母様のことを呼んでいた子!!」
「ぐぉおっ、やめろっ! やめてくれぇっ!!」
「いやぁ、情けなかったですよねぇ? 自分より小さな女の子に、色々と取り巻きまで引き連れていたのに、全然歯が立たなくて!」
「謝る! 謝るからっ! それ以上はどうか!!」
「えっ? いやですよ? だって、イルト様との初エンカウントの直後に絡まれたなんて、嫌な記憶ランキングの五十位以内には入りそうだしっ!」
「俺が言うまで、忘れてただろ!」
「それはそれ、これはこれ、です」
にっこりニコニコと毒を吐くユミリア嬢。その様子に、戦慄を覚えつつ、俺は何とかこの場から脱出しようとするのだが、その行動は、ことごとくユミリア嬢に妨害され、俺は何度も投げ飛ばされる。そうして、一通りの黒歴史を……なぜか、ユミリア嬢が知るはずのないものまで延々と語られて、抵抗する気力すら失ったところで、これまたなぜか、決闘をすることになっていた。
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