悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百十話 クリスタルロード攻略21(ミーシャ視点)

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 クリスタルロード最深部。そこは本来、欺王と偽牙という強力な魔物が守る魔王の封印地。その場所に、現在、私達は足を踏み入れ、最後の扉を開こうとしている……。


「って、待って! マルディックを探さなきゃっ」


 お姉様を助ける手段が目の前にっと思ったものの、その前に、マルディックの存在を思い出す。口だけだったし、欺王と偽牙が動き出す原因を作った存在ではあったものの、守ってくれようとして、実際、そのおかげで時間が稼げたという実績もある。それを考えると、見捨てるという考えは浮かばなかった。


「え? あの竜もここに来てるの?」

「はい、あの揺れでどこかに飛ばされてはぐれてしまって……」

「飛ばされた……? 首だけとはいっても、結構デカかったぞ?」

「あ、いえ、なぜか、小さなトカゲみたいになってて……マルディックが時間を稼いでくれたおかげで、助かったから……」


 セイとローランの問いかけにそれぞれ答え、どこかにマルディックの姿がないかと捜すものの、見当たらない。


「ミーシャ嬢。僕は、早くユミリアを助けたいんだが?」

「あ、えっとですね。そのためにも、マルディックは居なきゃいけないんです」


 さっさと扉を開けようとするイルト殿下に、私はそう告げる。なぜなら……。


「私の記憶が確かなら、その扉は、欺王と偽牙を倒して、このフロアに来た全てのメンバーが揃わないと開きません」


 ここ、クリスタルロードは、この世界で最大規模を誇るダンジョン。実に千階層もの層を持つダンジョンであり、話を聞けば、セイ達は二百階層付近からずっと、地面に穴を空けながら進んで来たらしい。


(いや、そもそもそんなことができるなんて設定はなかったんだけど……)


 私の言葉で、メンバーが揃っていない状態で開けようとすれば何か起こるのかを確認してきたイルト殿下に、私は記憶を掘り起こして、それを告げる。


「確か、いくつかのトラップが発動するようになっていて、部屋が水没したり、炎に包まれたり、一階層に戻された……り?」

「分かった。絶対に触らない」


 ゲームならば、セーブという手段があった。こんなところで一階に戻されるなんて知らなかった人達は、もう一度千階層を攻略しなければならないという事実に絶望して、電源を落としたらしい。しかし、これは現実。本当に一階層に戻されてしまえば、その絶望感はゲームの比ではないだろう。
 真顔で宣言して、一気に扉から距離を取るイルト殿下、及び他の面々に苦笑した私は、改めて、マルディックの捜索に乗り出すのだった。
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