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第二章 少女期 瘴気編
第二百九話 クリスタルロード攻略20(ミーシャ視点)
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「…………ふぇ?」
赤と白と黒。それは、正確には、マグマと氷塊と闇の消滅魔法。その三つは、上手くこの地面を焦がすことも、凍らせることもなく、闇の消滅魔法によって跡形もなく消え去った……のだが……。
(……欺王と偽牙が……死んだ?)
その魔法が降ってきたのは、ちょうど二人の鬼の上。そして、十メートル以上の身長を誇っていた欺王と偽牙は、何が起こったのかを認識する間もなく、マグマに溶かされ、氷塊に押し潰され、体の大半を消滅させられていた。
(な、何事!? えっ? 欺王と偽牙以上にヤバい魔物が居るってこと!?)
地響きは、治まった。立って逃げようと思えば、普通なら逃げられる状態だが、現在、あまりの事態に腰が抜けて、立てそうにない。
(に、逃げなきゃっ)
上に居るものがナニかは分からない。しかし、あれだけの攻撃を、恐らくは何度も繰り出していたモノを相手に、私が立ち向かえる可能性など皆無。震える体を叱咤して、懸命に、手に、足に、力を入れて、その場から離れようとした時だった。
「ミーシャ、大丈夫ー?」
随分と、聞き覚えのある妖精の声が聞こえて……。
「……ここが、最深部?」
見覚えのある黒い王子が降ってきて……。
「おー、上手く消滅したなぁ」
「そうですね。ですが、ユミリアお嬢様に仕えるのであれば、このくらいはできていただかねば」
「ぼくも、頑張った!」
ドスンと大きなフェンリルがメイドと竜人を乗せて落ちてきて……。
「…………ふぇ?」
普段、よく見知った面々を前に、私は思考を停止させる。
「大丈夫? 立てる?」
妖精な青年、セイがいつの間にか目の前に来ていて、手を差し伸べてくれていたので、私はその手を取って……立てそうにないことに気づいて固まる。
「ミーシャ?」
「……兄さんに連絡して、ミーシャ嬢を抱き上げてもらうべきか……?」
私が立てないらしいと気づいたセイが、どこか怪我をしているのではないかと慌てる中、イルト殿下が何かを呟いていたが、何を言っているのかまでは聞き取れなかった。それよりも、セイに怪我の有無を確認されて答えるのに必死になるはめになった。
「大丈夫、ただ、腰が抜けただけだからっ」
「本当に? 無理してない? 僕なら、ちゃんと治療できるよ?」
「大丈夫っ」
お姉様に鍛練してもらう過程で知り合ったセイは、お姉様に何を言われたのか、私に対してかなり過保護な傾向にある。だから、大丈夫だと告げていても、セイは私に診察の許可を取って、無事を確認してくる。
「って、手を擦りむいてる!? あぁっ、でも、このくらいだったら、自然治癒に任せた方が良いんだったっけ? えーっと、消毒液はっと……」
恐らくは、地面が揺れて跳ねた時に擦りむいていたのだろうが、痛みも感じない程度のそれでも、セイはかなり心配して消毒液と包帯を取り出して……。
「ストップ、包帯はいらないからっ!」
手が動かせなくなるくらいにグルグル巻きにされる未来を予測してしまった私は、懸命にセイを止めるのだった。
赤と白と黒。それは、正確には、マグマと氷塊と闇の消滅魔法。その三つは、上手くこの地面を焦がすことも、凍らせることもなく、闇の消滅魔法によって跡形もなく消え去った……のだが……。
(……欺王と偽牙が……死んだ?)
その魔法が降ってきたのは、ちょうど二人の鬼の上。そして、十メートル以上の身長を誇っていた欺王と偽牙は、何が起こったのかを認識する間もなく、マグマに溶かされ、氷塊に押し潰され、体の大半を消滅させられていた。
(な、何事!? えっ? 欺王と偽牙以上にヤバい魔物が居るってこと!?)
地響きは、治まった。立って逃げようと思えば、普通なら逃げられる状態だが、現在、あまりの事態に腰が抜けて、立てそうにない。
(に、逃げなきゃっ)
上に居るものがナニかは分からない。しかし、あれだけの攻撃を、恐らくは何度も繰り出していたモノを相手に、私が立ち向かえる可能性など皆無。震える体を叱咤して、懸命に、手に、足に、力を入れて、その場から離れようとした時だった。
「ミーシャ、大丈夫ー?」
随分と、聞き覚えのある妖精の声が聞こえて……。
「……ここが、最深部?」
見覚えのある黒い王子が降ってきて……。
「おー、上手く消滅したなぁ」
「そうですね。ですが、ユミリアお嬢様に仕えるのであれば、このくらいはできていただかねば」
「ぼくも、頑張った!」
ドスンと大きなフェンリルがメイドと竜人を乗せて落ちてきて……。
「…………ふぇ?」
普段、よく見知った面々を前に、私は思考を停止させる。
「大丈夫? 立てる?」
妖精な青年、セイがいつの間にか目の前に来ていて、手を差し伸べてくれていたので、私はその手を取って……立てそうにないことに気づいて固まる。
「ミーシャ?」
「……兄さんに連絡して、ミーシャ嬢を抱き上げてもらうべきか……?」
私が立てないらしいと気づいたセイが、どこか怪我をしているのではないかと慌てる中、イルト殿下が何かを呟いていたが、何を言っているのかまでは聞き取れなかった。それよりも、セイに怪我の有無を確認されて答えるのに必死になるはめになった。
「大丈夫、ただ、腰が抜けただけだからっ」
「本当に? 無理してない? 僕なら、ちゃんと治療できるよ?」
「大丈夫っ」
お姉様に鍛練してもらう過程で知り合ったセイは、お姉様に何を言われたのか、私に対してかなり過保護な傾向にある。だから、大丈夫だと告げていても、セイは私に診察の許可を取って、無事を確認してくる。
「って、手を擦りむいてる!? あぁっ、でも、このくらいだったら、自然治癒に任せた方が良いんだったっけ? えーっと、消毒液はっと……」
恐らくは、地面が揺れて跳ねた時に擦りむいていたのだろうが、痛みも感じない程度のそれでも、セイはかなり心配して消毒液と包帯を取り出して……。
「ストップ、包帯はいらないからっ!」
手が動かせなくなるくらいにグルグル巻きにされる未来を予測してしまった私は、懸命にセイを止めるのだった。
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