悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百四話 クリスタルロード攻略15(セイ視点)

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 結果から言うと、イルト殿下の魔法は、完全に相殺された。いかに正気を失っていようとも、元勇者な竜人と元S級冒険者な人間は、自分への攻撃に対して敏感だった。素早く剣で魔法を弾いたローランと、一瞬にして重々しい魔力を溢れさせ、闇魔法の雨を打ち消したメリーさん。どちらもすごいと言えばすごいが、メリーさんのやり方は、ちょっと意味が分からないすごさがあった。


「正気に戻った?」

「ん? あれ? 殿下とセイ?」

「あら、私としたことが、お出迎えもせず、申し訳ありません」


 一人、密かに混乱していると、ローランとメリーさんは何事もなかったかのように普通の対応をしてくる。


「も、戻ったぁぁぁあっ!!」


 エグエグと泣きながら、ローラン達が正気に戻ったことを喜ぶコウは、ローランに襲いか……飛びついてペロペロと顔面を舐める。


「うぶっ、おいっ、やめっ、ぶふっ、たすけっ」

(……うん、ローランは放置しても良いよね?)


 かなりの巨体を誇るコウにペロペロと顔を舐められれば、唾液で溺れかけるはめになるのだが、今回は、コウの好きにさせようと判断して、僕はメリーさんの方へと視線を向ける。


「メリーさん達は、ミーシャがどこに居るか知ってる?」

「いえ、ミーシャ様の姿は見ておりません。……まさか、この下、でしょうか?」

「うーん、そうだったら不味いなとは思うんだけど、正直、僕の力でも、この場所の全体像は分からないんだ。何というか……魔力が阻まれる感じがして、ね?」

「あぁ、それはここがダンジョンだからでしょう。基本的に、ダンジョンは壁を崩して通り抜けなどができないよう、魔力を弾くようにできております。例え、力任せに破壊を行ったとしても、その場所はすぐに再生するようにできておりますので、それらの魔法が干渉しあって、魔法での把握を困難なものにしているのでしょう」


 ダンジョンというものの存在は知っていても、その内部構造に関しては一切知らなかった僕は、そんなメリーさんの説明に、改めて探索魔法をじっくり確認してみる。


「ふぅん、確かに、そんな感じの魔法がかかってるね……あれ? でも、これなら、少しの間無効化することもできるかも?」


 星妖精となったことで、魔法に関することは、何となくでも理解できてしまう。そして、先ほどメリーさんから教わったダンジョン内の破壊を防止する二つの魔法に関しても理解して、その上で、それを一時的に停止させることができると判断する。


「っ、それはっ。ローラン! いつまでも遊んでいないで、こちらに来てくださいっ! ショートカットして、下に下りる方法がありますから!」

「ちょっ、状況っ、ぶっ、見ろってっ!」

「コウ、嬉しいのは分かったから、ちょっとローランを解放してね? 帰ったら、いくらでも舐め回して良いから」

「うんっ! 分かった!」

「おいっ!?」


 そして、そんなメリーさんの言葉に疑問符を浮かべながらもコウに声をかけてローランを解放した僕は、次の瞬間、聞かされた作戦を前に、頬を引きつらせるはめになるのだった。
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