悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第二百話 クリスタルロード攻略11(メリー視点)

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「どうやら、完全にはぐれましたね」


 私、ことメリーは、ピシャンっと特殊な鞭で巨大蛙の魔物を切り裂くと、辺りを見渡す。
 そこは、クリスタルロードのダンジョン内部。全てがクリスタルで覆われていた空間とは一変して、今居る場所は、恐ろしくジメジメとした灰色の石が敷き詰められた空間であり、蛙やらナメクジやら蛭やらといったものの巨大バージョンが魔物として良く出てきていた。そういうものが苦手な人にとっては、鳥肌ものの現場だ。


「問題は、下りと上り、どちらが進む方角なのか、ということですね」


 ランダムに転移されたらしいこの状態で、どちらが進むべき方角なのかが分からないというのは、ごくごく当たり前のこと。しかし、ここにミーシャ嬢さえ居れば、どちらが正しいのか分かったのではないかとも思えてしまう。


「悩んでも意味がありませんね。とりあえずは、下に向かうとしましょうか」


 ビシバシと襲い来る魔物達を撃退しながら、私は進む。全ては、ユミリアお嬢様に無事、帰ってきてもらうため。ユミリアお嬢様のためならば、どんなことだってしてみせるのが、私の使命なのだ。


「……これは……」


 探索を進めていると、私はふいに、とある壁へとぶつかる。


「迷いました、ね……」


 S級冒険者として名を馳せた『狂乱のメリー』。その強さは、確かにS級として申し分ないものであり、現在も衰えなど欠片も見当たらない。しかし、欠点が全くないわけでもなかった。


「……ダンジョンなんて、嫌いです」


 極度の方向音痴。それを遺憾なく発揮した私は、何となく見覚えがある気のする景色を前にしながら、鞭を振るい続ける。


「そもそも、壁を破壊してもすぐに元通り。魔物だって、時間が立てば同じものが発生するなんていう不可思議な空間で、迷うなという方が無理難題なのです」


 かれこれ二時間近くさ迷っていた私は、そんな結論を出して、蛭の魔物に、強烈な電気ショックを流してみる。ビクビクッと激しく痙攣をした後、動かなくなった蛭。しかし、そんな蛭も、ドロップアイテムのみを残して、消えてしまう運命。


「くっ、待ってください。ユミリアお嬢様っ。メリーは必ず、ユミリアお嬢様の元へと参りますからっ!!」


 そうして、戦い続けた結果……後からやってきたコウ様とローランと合流することで、私は、迷子を脱することに成功したのだった。
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