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第二章 少女期 瘴気編
第百八十八話 魔王という存在(アルト視点)
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「ダメだよイルト。落ち着いて。その魔力を抑えて」
私がきつく告げれば、イルトはハッとしたように魔力を抑え込む。
イルトが魔力を溢れさせた瞬間、隣に居たミーシャ嬢が震え上がっていたが、魔力さえ鎮まればミーシャ嬢の怯えもなくなる。
「ごめん、兄さん、ミーシャ嬢」
しゅんとしながらも、きちんと謝れる弟を持って、私は誇らしい気持ちでいっぱいになったが、隣からのじとっとした視線を感じて、慌てて咳払いをする。
「あー、イルト。気持ちは分かるけど、今はどうしようもないことは理解しているだろう? だから、今は焦らず、ユミリア嬢の状況理解に努めるべきじゃないかな?」
「ユミリアの状況……確かに、それが分からないことには、またユミリアに逃げられかねない」
そうして、イルトも私も、一人へと視線を集中させる。
「えっ? あ、あの、お二人とも?」
「ミーシャ嬢、魔王に関して、知っていることを話してはくれないか?」
私達の視線に戸惑った様子だったミーシャ嬢は、私の要望に対して、深くうなずいてくれる。
「そう、ですね。ただ、私は『モフ恋』とその原作である小説の記憶がごちゃ混ぜになっています。それを前提として、聞いていただけますか?」
ミーシャ嬢は、ユミリア嬢と違って、『モフ恋』なるゲームと、その元となる本を読んでいたのだそうだ。ただ、ミーシャ嬢はその知識を混同しており、全てをゲーム知識だと思い込んでいたらしいが、ユミリア嬢と知識のすり合わせを行うことによって、どの知識がゲームのものなのかということを明らかにしていた。そのユミリア嬢が不在の今、私達が聞く内容は、どちらの知識なのか分からない上、下手をすれば、混同していることによって、とんでもない話になる可能性もあった。しかし、それでも、私達には知識が必要だ。
「頼む。ミーシャ嬢」
そう告げれば、ミーシャ嬢は少しの間目を閉じて、ゆっくりとその知識を話し始める。
「魔王は、かつて存在したどこかの王族で、ある日突然、瘴気の力を手にして、自らの国を滅ぼしてしまいます。そして、それを危険視した周囲の国々が、力を合わせて魔王を討伐した……はずだったんです」
魔王に関する資料は、ついに見つからなかった。そして、ユミリア嬢と違って、ミーシャ嬢は最初から全ての知識があったわけではなく、時折、何かの拍子に新たなことを思い出していたため、この魔王に関する知識もその一つだと思われた。
「魔王は、死んだわけではなく、ただ、封印されただけでした。そして、封印された魔王は、長い年月の中、自身の体を失い、魂だけの状態でさまよい、人に乗り移っては国を滅ぼします。それで……それ、で……あぁっ、思い出した! お姉様は、魔王の器に選ばれたんです!!」
そして、そんな爆弾発言に、私はまたしても、イルトをなだめる羽目になるのだった。
私がきつく告げれば、イルトはハッとしたように魔力を抑え込む。
イルトが魔力を溢れさせた瞬間、隣に居たミーシャ嬢が震え上がっていたが、魔力さえ鎮まればミーシャ嬢の怯えもなくなる。
「ごめん、兄さん、ミーシャ嬢」
しゅんとしながらも、きちんと謝れる弟を持って、私は誇らしい気持ちでいっぱいになったが、隣からのじとっとした視線を感じて、慌てて咳払いをする。
「あー、イルト。気持ちは分かるけど、今はどうしようもないことは理解しているだろう? だから、今は焦らず、ユミリア嬢の状況理解に努めるべきじゃないかな?」
「ユミリアの状況……確かに、それが分からないことには、またユミリアに逃げられかねない」
そうして、イルトも私も、一人へと視線を集中させる。
「えっ? あ、あの、お二人とも?」
「ミーシャ嬢、魔王に関して、知っていることを話してはくれないか?」
私達の視線に戸惑った様子だったミーシャ嬢は、私の要望に対して、深くうなずいてくれる。
「そう、ですね。ただ、私は『モフ恋』とその原作である小説の記憶がごちゃ混ぜになっています。それを前提として、聞いていただけますか?」
ミーシャ嬢は、ユミリア嬢と違って、『モフ恋』なるゲームと、その元となる本を読んでいたのだそうだ。ただ、ミーシャ嬢はその知識を混同しており、全てをゲーム知識だと思い込んでいたらしいが、ユミリア嬢と知識のすり合わせを行うことによって、どの知識がゲームのものなのかということを明らかにしていた。そのユミリア嬢が不在の今、私達が聞く内容は、どちらの知識なのか分からない上、下手をすれば、混同していることによって、とんでもない話になる可能性もあった。しかし、それでも、私達には知識が必要だ。
「頼む。ミーシャ嬢」
そう告げれば、ミーシャ嬢は少しの間目を閉じて、ゆっくりとその知識を話し始める。
「魔王は、かつて存在したどこかの王族で、ある日突然、瘴気の力を手にして、自らの国を滅ぼしてしまいます。そして、それを危険視した周囲の国々が、力を合わせて魔王を討伐した……はずだったんです」
魔王に関する資料は、ついに見つからなかった。そして、ユミリア嬢と違って、ミーシャ嬢は最初から全ての知識があったわけではなく、時折、何かの拍子に新たなことを思い出していたため、この魔王に関する知識もその一つだと思われた。
「魔王は、死んだわけではなく、ただ、封印されただけでした。そして、封印された魔王は、長い年月の中、自身の体を失い、魂だけの状態でさまよい、人に乗り移っては国を滅ぼします。それで……それ、で……あぁっ、思い出した! お姉様は、魔王の器に選ばれたんです!!」
そして、そんな爆弾発言に、私はまたしても、イルトをなだめる羽目になるのだった。
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