悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

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第二章 少女期 瘴気編

第百八十二話 サバイバル3

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「とりあえず、冥夜のドラゴンの鱗も血も、それなりに手に入ったわけだから……後の材料は、何が必要かなぁ?」


 トロトロにとろけるテール煮込みを食べて、少し元気になった私は、今から作ろうとするものを思い浮かべて、頭を悩ませる。
 私が作りたいもの。それは、私が瘴気の発生源となってしまった原因を取り除ける道具だ。しかし、当然のことながら、そんな特殊な道具は『コツ生』に存在しない。完全に、一から考えるしかないのだ。


「冥夜のドラゴンの素材は、精神に強く作用するものを作るのに向いてるから、多分必要だとは思ったけど……この瘴気の発生源、何か、意思を持ってるっぽいから、そいつの精神に入り込めるような何かにしなきゃいけないんだよね」


 精神世界といえば、空間魔法も必要だろうかとか、瘴気に対抗するためには、浄化魔法も必須だろうとか、そもそも、意識だけを飛ばすのであれば、夢魔なんかの魔力を採取すべきだろうかとか、思い付く限りの方法、材料を適当な枝で地面に書いていく。


「材料として有効そうなのは、夢魔から取れる素材と、カーネリアンと、スギライト、脳波測定の機器の方は、そのまま使うかな? 音響効果も試してみて、いくらかの薬草も必要だよね?」


 一通り、試したい素材を書き出した私は、そこからさらに、手持ちにあるものと無いものを分けていく。


「うん、夢魔の森に突撃するのは決定だね!」


 結果、宝石類は揃っており、薬草類は数が心許ないものもあるものの、だいたい揃っているということが確認できて、夢魔の素材以外は案外何とかなると確信する。


「夢魔の森……その名の通り、夢魔が多く生息する場所であり、その中心地には夢魔の女王が君臨しているっと……よしっ」


 ちなみに、『コツ生』では、夢魔の女王を倒すことはできず、ただ、取引をする相手としてしか登場しなかった。つまりは、夢魔の女王が持つ素材は未知数。


「ふふっ、ふふふふふっ、イルト様と私の未来のために、犠牲になってもらうよ?」


 正直、夢魔の女王はあまり好きではない。理由はいくつかあるが、特に嫌な理由は二つほどある。


「あんな、あんなっ、大きな胸をした夢魔なんてっ、滅べばいい!!」


 ユミリア・リ・アルテナ、十二歳。現在、成長期だというのに、胸の方には栄養が流れてはくれないらしく、ささやかな膨らみすら存在しない。


「ふふっ、態度も上から目線が常で、ずっと、ずっと、討伐したいなぁって思ってたんだぁ」


 しかも、その女王の性格はあまりよろしくないとなれば、討伐を躊躇う理由は完璧に消える。
 瞳のハイライトが消えていることに気づかず、私は、『ふふふっ、ふふふふふっ』と笑みをこぼす。そんな私の姿に、襲撃しようとした魔物が立ち止まって、一目散に逃げたなどということにも気づかず、目標を定めた私は、ユラァリと立ち上がる。


「ふふふふ、フフフフフ……転移」


 転移の石をストレージから取り出して握った私は、闘志をたぎらせながら、夢魔の森へと向かった。
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