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第二章 少女期 瘴気編
第百七十九話 闇の世界(???視点)
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(なぜだ。なぜ、絶望しない?)
見渡す限り、何も見えない闇に覆われたその場所で、我は、私は、僕は、妾は、見えるはずのない光に目を細める。
計画通りならば、今頃、それはずっとずっと濁って、ドロドロになって、自身の場所へと堕ちてくるはずだった。しかし、なぜか、コレは絶望しない。普通ならば、何度も絶望し、嘆き、慟哭しても良さそうな経験をしてきているはずなのに、それをものともしない。
(良いだろう。もっともっと、絶望するような経験を積ませてやろう)
多分、今回はわりと良い線をいっているような気がする。少なくとも、コレの支えとなっていた者どもから引き離すことには成功した。後は、いかにして、コレを絶望させるかだが……それも、算段がついている。
(支えを失えば、お前は絶望するか?)
この手の人間は、仲間を失うことを何よりも嫌う。自分よりも大切な他人が居るという現象は理解できないが、その大切な他人を失うことが絶望への近道だとも知っている。
種は蒔いた。後は、それが芽吹くのを待つだけだ。
(さぁ、早く……早く、堕ちてこい)
そうすれば、我は、あの存在を永遠に愛でることができる。私は、ここから出ることができる。僕は、全てを破壊することができる。妾は…………自分が誰なのか、知ることができる、はずだ。
暗く、昏く、淀んだ世界。この世界から出られるのであれば、何だってしよう。この世界を生み出したモノを壊せるなら、何だってしよう。そうすればきっと、自分が何者なのか分かるはずだから……。
「えっ、無理でしょ」
「っ!!?!??!」
自分以外が存在しないはずの世界。外の声は、必死に聞き取ろうとしない限りは聞こえず、ただただ静かなだけの世界。そこに、この世界の闇と同じ黒を纏う者が、いつの間にか降り立っていた。
「うーん、やっぱり、動きづらい。今回は無理かぁ……」
侵入者であり、自分が絶望を願った存在は、闇の中で、その存在感を薄れさせる。いや、恐らくは、元々薄かったものが、さらに薄くなっていた。
「真っ暗で、空気重いなぁ……しかも、じめじめしてるし。この世界の主の心を的確に表してるっぽいね」
わけの分からないことを言いながらも、そいつの存在はさらに薄れる。きっと、外の世界に帰る時が来たのだろう。
「まぁ、でも、敵に会えたのは、収穫だったかな?」
「てき……」
「そう、敵。ねぇ、魔王さん? 私、あなたの思い通りになるつもりは欠片もないからね?」
その言葉が終わるや否や、彼女は、この場から姿を消した。
「ま、おう……」
それが、自分なのだろうかと自問しながら、答えのない闇をじっと見つめ続けるのだった。
見渡す限り、何も見えない闇に覆われたその場所で、我は、私は、僕は、妾は、見えるはずのない光に目を細める。
計画通りならば、今頃、それはずっとずっと濁って、ドロドロになって、自身の場所へと堕ちてくるはずだった。しかし、なぜか、コレは絶望しない。普通ならば、何度も絶望し、嘆き、慟哭しても良さそうな経験をしてきているはずなのに、それをものともしない。
(良いだろう。もっともっと、絶望するような経験を積ませてやろう)
多分、今回はわりと良い線をいっているような気がする。少なくとも、コレの支えとなっていた者どもから引き離すことには成功した。後は、いかにして、コレを絶望させるかだが……それも、算段がついている。
(支えを失えば、お前は絶望するか?)
この手の人間は、仲間を失うことを何よりも嫌う。自分よりも大切な他人が居るという現象は理解できないが、その大切な他人を失うことが絶望への近道だとも知っている。
種は蒔いた。後は、それが芽吹くのを待つだけだ。
(さぁ、早く……早く、堕ちてこい)
そうすれば、我は、あの存在を永遠に愛でることができる。私は、ここから出ることができる。僕は、全てを破壊することができる。妾は…………自分が誰なのか、知ることができる、はずだ。
暗く、昏く、淀んだ世界。この世界から出られるのであれば、何だってしよう。この世界を生み出したモノを壊せるなら、何だってしよう。そうすればきっと、自分が何者なのか分かるはずだから……。
「えっ、無理でしょ」
「っ!!?!??!」
自分以外が存在しないはずの世界。外の声は、必死に聞き取ろうとしない限りは聞こえず、ただただ静かなだけの世界。そこに、この世界の闇と同じ黒を纏う者が、いつの間にか降り立っていた。
「うーん、やっぱり、動きづらい。今回は無理かぁ……」
侵入者であり、自分が絶望を願った存在は、闇の中で、その存在感を薄れさせる。いや、恐らくは、元々薄かったものが、さらに薄くなっていた。
「真っ暗で、空気重いなぁ……しかも、じめじめしてるし。この世界の主の心を的確に表してるっぽいね」
わけの分からないことを言いながらも、そいつの存在はさらに薄れる。きっと、外の世界に帰る時が来たのだろう。
「まぁ、でも、敵に会えたのは、収穫だったかな?」
「てき……」
「そう、敵。ねぇ、魔王さん? 私、あなたの思い通りになるつもりは欠片もないからね?」
その言葉が終わるや否や、彼女は、この場から姿を消した。
「ま、おう……」
それが、自分なのだろうかと自問しながら、答えのない闇をじっと見つめ続けるのだった。
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